ライター沖さやこの『アブストラクトマイライフ』

WRITERS' COLUMN

2020年06月号掲載

このコラムを書いているのは2020年5月25日の夜。緊急事態宣言が5月25日に全面的に解除になり、ライヴハウスの営業に関しても、業界団体と専門家が協議する場を設置する方針を明らかにしたという報道が出ました。3月中のようにまた刻一刻と状況が変わっていくのでしょうか。気を抜かず、いろいろと情報を摂取していかねばなと思っている所存です。

緊急事態宣言が出ている間、取材はすべてメール・インタビュー、打ち合わせはリモートで、仕事で外出することは一切ありませんでした。だいぶ時間があり、毎日のようにミュージック・ビデオを観ていました。それも最新のものや自分の好きなものをチェックするのではなく、SNSを使って読者さんからおすすめのMVを教えていただき、それに対して感想を文章にしたためるなどしていました。

"自分の好きなアーティストがこの前MVアップしたから感想を教えて"的な意味でのおすすめもありましたが、その人の心にしっかりと残っている作品を年代問わずおすすめしていただくことが多く、宝物を見せていただいたような感覚がとても嬉しかったです。やはりその人の"とっておき"のMVは、楽曲の世界観をしっかりと汲んでいることは大前提として、ちょっと斬新さやひねりのある個性的なものや、"どうしたらこんな発想が生まれるんだろう？"と驚くようなアイディアを含んでいるものがほとんど。クオリティのなんたるかを肌感覚で教えてもらったような気がしました。

普段映像について文章を書くことは少ないので、これまでにない観察眼を酷使した気がします。"この監督はなぜこういう演出をしたのだろう？"と掘り下げていったり、"このMVをおすすめしてくださった人はこのMVのどんなところに惹かれたのかな？"と思いを巡らせてみたりして、いつもと違う感覚で書けたのも面白かったです。

今の時代、MVというコンテンツはジャケ写と同じくらい作品の看板になるものなのかもしれないですね。あと静止画ではなく動画という情報量の多さは、より強くその楽曲を印象づけるんだろうなと。若いアーティストさんをSNSやYouTubeで探すときも、MVに力を入れている人を見かけると"おっ、もっと曲聴いてみようかな？"や"どんなアーティストなのかな？"と調べたりもするので、重要なフックになっていることを改めて痛感しました。

おすすめしていただかなければ出会えなかった作品もたくさんあったので、貴重な経験ができました。みなさんもお気に入りのMVをお友達同士でシェアしたり、感想を送り合ってみてはいかがでしょうか。