ライター沖さやこの『アブストラクトマイライフ』

WRITERS' COLUMN

2014年07月号掲載

今月も全力でぶっ殺していくんでよろしく！！！......あ、失礼しました。自分内"ついつい使いたくなる定番ライヴMCランキング"第1位、People In The Boxのダイゴマンこと山口大吾さんの"全力でぶっ殺していくんでよろしく"。ついつい使いたくなるとか言いつつも、普段の生活で使える機会がほとんどないのでコラムで使ってみました。

ひと月以上前の話になりますが、People In The Boxの全国ツアー"空から降ってくる Vol.7 〜空想する春のマシン〜"のファイナル、中野サンプラザ公演に行ってまいりました。わたしは1階の前寄りの列だったのにもかかわらず、事故で両足と右腕を負傷していたためずっと座席に座っていたのでステージを見ることはできませんでしたが、そのぶん視覚以外でリアルタイムの演奏をじっくり堪能。いろんなイマジネーションや疑問が湧き起こりました。あの入り組んだ変拍子が用いられた楽曲たちをこんなに大勢の人の前でさらりと演奏しているけれど、どれだけの集中力を使っているのだろう？このギター・フレーズを弾きながら歌詞を間違えることなく早口でポエトリー・リーディングをしてしまう波多野裕文さんのリズム能力はどこにあるの？もしかして波多野さんふたりいるの？相変わらず3人とは思えない音数と音の層だわ。なぜこんなに入り組んでいて難解なアンサンブルなのに心地よいの？なぜこんなに悲しいのに優しくて狂気があって美しい音なの？......と、改めてとんでもないバンドだと感動し、恐怖すら感じました。深い祈り、痛み、赦し、憂い――あれこそ讃美歌と言うべきなのでは。バンドというよりは楽団という言葉のほうがしっくりくる、孤高の存在の3ピースです。

このツアーでは波多野さんが鍵盤を弾く場面が多々ありました。そして8月にリリースされる『Wall, Window』も（今月号のレビューにも書きましたが）鍵盤が多用されています。鍵盤が弦を叩く音や、ペダルの音までもが鮮明な「月」という楽曲は、これまでのピープルでは成し得ない音像でした。ピープルは作品を出すたびに新しい情景や意外な試みで驚かせてくれるのに、俗にいう"変わっちゃった"的な違和感を一切感じさせません。月日を重ねるごとに熟成され、解放されていく空気感。目から涙の粒が零れ落ちそうな、そういう瞬間的な美や不安定さがあるなあ、といつも思っています。それは波多野さんの描く日本語も同様です。

そしてピープルは初のタイアップ曲「聖者たち」をアルバムと同日にシングル・リリース！タイアップ作品であるTVアニメ"東京喰種"の原作は、とっっっても面白いダーク・ファンタジー漫画なのでどちらもチェック必須です。

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