ライター沖さやこの『アブストラクトマイライフ』

WRITERS' COLUMN

2016年02月号掲載

METZの来日公演に行けなかったことが非常に悔やまれる沖さやこです。海外の音楽よりも日本の音楽が劣っているとは思わないけれど、日本より海外の方がナチュラル・クレイジーな変態バンドが多い印象があります。我が道を突っ走るというか、自分の美学を邁進するというか。過剰に流行を意識したロック・バンドはあまりいない気が。METZの音楽もちょっと不気味な空気があって、そのひりっとした空気感にぞくぞくします。その点日本は結構流行を重んじる人が多いような気も？状況が状況だからかもしれませんが、もう少し自分勝手に、自分の音楽のために音楽をやってみてもいいんじゃないかなと思います。
　
話はがらりと変わりますが、今月号では空想委員会のみなさんにインタビューいたしました。2014年の3月にメンバーさんと初対面し、かれこれ2年近いお付き合い。対談含め今回で7回目のインタビュー。5年半のライター人生で最も多くインタビューしているお相手だと思います。メンバー＆スタッフのみなさんいつもありがとうございます......！そして実はわたくし、新作『ダウトの行進』のリード曲「ミュージック」のレコーディング現場にお邪魔しておりました。（※『僕が雪を嫌うわけ/私が雪を待つ理由』のインタビューをしたのがその日だったのです）
　
人生初のレコーディング現場潜入。委員長の歌録りでした。レコーディング・エンジニアさんとともに委員長が意見交換をしながら少しずつ歌い進めて1曲の録音をしていきます。歌録りは1曲休みなしでやるものだそう。その理由は間を空けると声が変わってしまうからなのだとか。へぇ～！歌録りの最中はメンバーの佐々木さんと岡田さんもエンジニアさんの後ろで手元の歌詞を見ながらじっくり委員長の歌に耳を傾けていました。ピリッとした真剣な空気は肌を刺す冬の寒さとよく似ていて背筋が伸びる。あんな神聖な場に"よろしければぜひ見学なさってください"と快く案内してくださった空想委員会チームの懐の広さにも、レコーディング中という状況でもいつも通りにこやかにインタビューに答えてくださったメンバーお三方にも、心から感謝しております。
　
実際レコーディング現場にお邪魔して、こうやって音楽が作られていくんだなというのを五感すべてで知った経験は非常に大きい。『ダウトの行進』という作品に愛着が湧いただけでなく、すべての音楽家のCDへの向き合い方が変わりました。『ダウトの行進』は空想委員会がライヴやプロモーション稼働の合間合間で半年かけてこつこつ作り上げてきた渾身の作品。彼らの音楽には彼らの人となりが如実に表れています。わたしが空想委員会の音楽を好きなのは、それも理由のひとつ。嘘のない音楽は心を躍らせるなあ、と思う今日このごろです。