ライター沖さやこの『アブストラクトマイライフ』

WRITERS' COLUMN

2018年01月号掲載

新年あけましておめでとうございます。このコラムで年明けのご挨拶をするのは何度目になるでしょうか。そしていつまでこの連載は続くのでしょうか。貴重なスペースをいただき恐縮です。終わりを宣告されるときまでありがたく書かせていただこうと思います。今年もよろしくお願いいたします。

2018年1発目のコラムは新年の幕開けにぴったりなフレッシュな話題を。今年2月にメジャー・デビューをするThe Floorのみなさんに、昨年末にインタビューしました。彼らとはTOWER RECORDS限定リリースのシングル『リップサービス』リリース前からのお付き合い。アーティストさんが昔を振り返るときによく"ガラガラのライヴハウス"と言ったりしますが、その言葉のとおりガラガラのライヴハウスでライヴする彼らを観たのが初対面でした。去年の夏にパンパンになった下北沢SHELTERワンマンを観たときも"彼らの音楽を愛している人が東京にこんなにいるなんて"とこみ上げてくるものがあったのですが、ビクター本社で彼らと対面できること、"メジャー・デビューおめでとうございます"と言えることがとても感慨深く、インタビュー中も必死に隠しましたがちょこちょこ涙腺が緩んでおりました（もはや孫を見守る気持ち）。

The Floorのメジャー・デビュー・アルバム『ターミナル』、とてもいいです。彼らの日本の音楽と海外の音楽の要素を高純度でブレンドするというセンスや、音楽の許容の広さも素晴らしいのですが、それが煌めくのはメンバー全員が音楽に対してピュアな気持ちを大事にしているからこそだと思います。彼らは本当にミュージック・ラヴァーで、キッズのときに音楽にときめいた感覚を現在も持ち続けています。そういうピュアな気持ちを絶えず持っている人たちはやはり感性が繊細で、喜怒哀楽を感じやすい。だからこそThe Floorの曲は必ず泣ける要素があるんですよね。物理的な刺激以外で涙が溢れるのは感情が昂ったときだから、The Floorの曲はどれも気持ちが通っている。だから切なくて温かい。それはひとりぼっちで暗闇のなかで膝を抱えている人にも届くものだと思います。

フェス産業発展の影響かもしれないけれど、2010年代半ばあたりから徐々に孤独な人が拠りどころにできるロックが減っていった印象があったので、The Floorの新作を聴いてほっとした気持ちもありました。とはいえこれからも彼らには自分たちの気持ちに正直に、自由に音楽をやってもらえれば、それで満足です。私の『ターミナル』推し曲は5曲目と8曲目！みなさまもリリースの際はぜひチェックしてみてください。

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