ライター沖さやこの『アブストラクトマイライフ』

WRITERS' COLUMN

2017年02月号掲載

2017年1月15日。LIQUIDROOMで開催された"MASHROOM 2017"に行ってきました。MASH A&Rに所属するバンドが一堂に会するイベントです。トリを飾ったのはMASH A&R初代グランプリのTHE ORAL CIGARETTES。ここ1、2年のオーラルはヒーローとして君臨するような、まさしく大魔王が参上するようなライヴをする印象があったのですが、この日の彼らはかなり自然体。いままで観てきたオーラルの中で最も肩の力が抜けていて、堂々と生き生きとしていたのです。ものすごくピュアにバンドを、ライヴを楽しんでいるように見えたし、普段彼らと喋っているときに感じる、情に厚くて人を慮る優しさを持つ彼らの人柄を感じられるライヴだったんですよね。
その旨を終演後にフロントマンの山中拓也氏に伝えたところ、彼は"そう言ってもらったからには早くニュー・アルバムを聴いてほしい。本当に好きなことばっかりやりました"と言って、私に2月1日にリリースされる3rdフル・アルバム『UNOFFICIAL』を渡してくれました。その拓也さんの言葉のとおり"俺たちが考えていることと好きなことだけをぎゅうぎゅう詰め込みました！どうぞお食べになって！"な内容のアルバム。はっ、だから脳みそや心臓をいただくようなジャケットなのかしらん......！？

というわけでものすごくピュアなアルバムです。初期の彼らによく見られた変拍子を取り入れた曲や、奇妙なところで転調する曲、中毒性のあるギター・リフがクセになる曲、昭和歌謡テイストのメロディや、拓也さんのヴォーカルによく合った耽美なメロディなど、面白い引っ掛かりをふんだんに盛り込んでいるところにも遊び心が見えます。あと、彼らのバックグラウンドがここまで素直に見える作品はいままでなかったかも？これは本当に感覚的な話なんですけど、どの音もすごく楽しそうなんですよね。キッズが4人集まってる雰囲気がある。それは自分たちの表現物を信じてくれる人たち、すなわちリスナーさんたちの存在も大きいのだろうと思います。
壮大なバラードに、バンドにとっては新機軸になるハッピーでダンサブルな楽曲など、大きな会場で映えること間違いなしの楽曲も。これまで築いてきた歴史でもって自分たちの核を確かめるようなアルバムになったんじゃないかなぁと思います。こういう作品を初の日本武道館ワンマン前に作れたことは、バンドにとっても大きな自信になったのでしょう。だからこそ、あれだけ自然体でライヴができるようになったのかもしれないな、と思いました。6月16日、彼らが日本武道館でどんな景色を作るのか。期待値上げまくっておきます。