ライター沖さやこの『アブストラクトマイライフ』

WRITERS' COLUMN

2018年05月号掲載

2018年4月22日。Brian the Sunのフル・アルバム『the Sun』リリース・ツアーのマイナビBLITZ赤坂公演に行ってきました。『the Sun』リリース時にSkream!さんでインタビューをしたときに"今まではライヴを観た人が家に帰ってから自問自答をしてほしいと思っていたけど、今回はもうちょっと懐の深いライヴをしたいと思っている"という旨の発言がありました。たしかにエンターテイメントに富んだライヴや、ファミリーでも楽しめる和やかなライヴはハッピーで素晴らしい。でもそれを彼らがやる必要があるのだろうか？少々首を傾げていました。

そんななか迎えた赤坂公演。彼らはクラップを煽ったりコーレスを入れたりソロ・セクションを作ったり、MCも今までにはやっていなかった"お客さんウェルカム！"的なテンションでありつつも、最初から最後まで彼らの根っこでもある生意気っぷりは何ひとつ変わっていなかったのです。

Brian the Sunはポップな曲が多いソフトな歌モノ・ロック・バンドという印象を持たれがちですが、実際はひねくれ偏差値＆生意気偏差値75はカタいです（※あくまで個人の感想です）。1曲目から演奏も荒々しいわテンポもかなり早いわで、これまで観てきた中でも1、2を争うくらい尖ってる。ライヴの終盤は感情任せに演奏し続けたと思ったら、ギター・ヴォーカルの森良太は本編ラストに予定されていた曲をやらずにステージ袖にハケました。その様子を見たほかのメンバーは特段驚きもせず"あ、そういう感じね。わかったわかった"といった様子でにこやかにステージ袖にハケて本編が終了。ああいうライヴをしてくれたことは嬉しかったし、何よりほっとしたのでした。

アンコールはBrian the Sun名物、その場の空気感とテンションで演奏曲目決定方式。メンバーは高揚しながら間合を読んで演奏を繋いでいきました。あの予定調和とは掛け離れた自然発生感は悪ガキそのもの。鋭くてひりついていて繊細で猛烈で艶があって、まだまだ全然牙は消えてないなと実感しました。

Brian the Sunは内省的な楽曲を演奏すると、ソーダ水の泡のように爽快できれいで瞬発力があるエネルギーを放出します。それを浴びる瞬間は心底気持ちがいい。やっぱりこっちのBrian the Sunの方が生き生きしてる気がするなぁ、と思いつつ、それは私の単なるいち意見なので、彼らが自分たちの心に嘘をつかず、心が生を実感できる方角へと進んでくれればと思います。ツアーは残すところ5月の福岡公演と大阪公演。彼らはどんなライヴを観せてくれるのでしょうか。