ライター沖さやこの『アブストラクトマイライフ』

WRITERS' COLUMN

2018年02月号掲載

このコラムを書いているのは、東京23区に33年ぶりに低温注意報が発令された日です。そんな寒い日でも冷房ががんがん入るほど暑くて熱い場所がライヴハウスってもんです。今月のコラムは1月に観に行ったライヴの中で2本ほど感心した公演をピックアップします。
　　
まずひとつはHOWL BE QUIETの関東圏ツアー"Dousite? Tour 2017〜2018"、横浜BAYSIS公演。2月頭には東名阪QUATTROでの追加公演も決定しております。HOWL BE QUIETは音源とライヴでアレンジをがらりと変えることが多いバンドなのですが、なんとこのツアー、彼らがこれまで要所要所で使っていた同期音を一切使っていないのです。具体的な例を挙げればホーン音を使わないためにアレンジを組み替えていたり、シンセ・パートをギターが弾いていたりするんですよね。彼らとしてもかなり挑戦だったと思います。でも懸命に演奏する4人の姿は、思ったとおりにうまくいかないことも含めて、とても楽しんでいるようでした。その少年のような表情に、バンドを始めたばかりの高校時代の彼らはこんなふうに音を鳴らしていたのかなぁと思ったり。その都度その都度音楽性が変わるバンドではありますが、音楽に対してピュアであることは全然変わってないなと思います。
　
もうひとつはWOMCADOLEの"瀧昇三本目二〇一八同一平面爆発編"、高田馬場CLUB PHASE公演。バンド初の試みであるフロア・ライヴでした。WOMCADOLEのライヴはいつも4人が放出したエネルギーを観客が受け取って投げ返すような感覚があるのですが、今回は演者と観客が同じ目線、同じ場所のフロア・ライヴということもあり、一体になって楽しむような空気感がありました。普段のライヴで観客は観客の顔を見ることができないので、"お客さんはこんな表情でライヴを観ているんだ、みんなすごくいい表情だな"と、その事実を自分の目で確認できたことにもめちゃくちゃ感動しちゃいました。それでメンバーの顔を見てみたら、いつもより彼らにも笑顔が多かった。普段は1対1のコミュニケーションを人数分作っているバンドだけど、この日は会場みんなでWOMCADOLEというものを作っていくようでした。彼らは環境が異なると無意識のうちに見せ方を変えられるバンドだというのも発見だったし、それは音楽に対しても人間に対してもまっすぐなバンドだからできることなんだろうなと思う部分もありました。
　
趣向を凝らしたライヴは演者にとっても観客にとっても新鮮で、いろんな発見があるなと思った2公演でしたし、そういう環境下でもやっぱりメンバーの結束の強さはライヴの核になる部分だなと思いました。メンバーの心がひとつに固まった瞬間というのは、どんな演出よりも美しいものがありますね。