Japanese
"KNOCKOUT FES 2018 autumn" 座談会
2018年10月号掲載
下北沢のライヴハウス MOSAiCが定期的に主催していたブッキング・イベント"KNOCKOUT"を拡張したサーキット・フェス"KNOCKOUT FES 2018 autumn"が今年も11月3日に開催される。昨年から春と秋の年2回開催となった"KNOCKOUT FES"は、今回からCLUB Que、ろくでもない夜、LOFTの3会場が追加になり、合計10会場で行う。"ダイヤモンドの原石と出会える場所"をモットーに年々進化をし続ける"KNOCKOUT FES"は今回で7回目。その出演者の中から、今若手シーンで注目を集める、Absolute area、マッシュとアネモネ、長靴をはいた猫の3バンドのメンバーに集まってもらい、MOSAiCの森本真一郎店長を交えて、その魅力や楽しみ方を語り合ってもらった。
Absolute area:山口 諒也(Vo/Gt)
マッシュとアネモネ:もちこ(Gt/Vo)
長靴をはいた猫:イノウエケンイチ(Dr)
下北沢MOSAiC店長:森本 真一郎
インタビュアー:秦 理絵 Photo by 上溝恭香
-春に続き、"KNOCKOUT FES"恒例の開催直前の座談会企画になります。森本さん、数多くのアーティストが出演する中で、この3バンドに集まってもらったのは?
森本:特に今年多くの人が注目しているバンドに集まってもらいました。
-マッシュとアネモネ、長靴をはいた猫は、今年の"RO JACK"の優勝バンド、Absolute areaは去年の"未確認フェスティバル"のファイナリストで、Eggsの年間ランキング上位をキープして話題になってますね。
森本:話題性は十分だと思います(笑)。
-メンバーはお互いに面識はありますか?
山口:マッシュとアネモネは高校のときにイベントで観たのが最初なんですよ。結構付き合いとしては古いですね。
もちこ:私が高1のときに(山口は)高3だったので、先輩なんです。
イノウエ:Absolute areaとは初対面ですね。マッシュとアネモネは"RO JACK"の優勝発表イベント(2018年7月7日に渋谷duo MUSIC EXCHANGEで開催された"RO JACK SUMMER FINAL 2018")のときに会いました。
-イノウエさん、優勝が発表されて号泣してましたね。
イノウエ:呼ばれたのが最後だったから、ずっと緊張してたんです(笑)。
-まず、対談を始めるにあたって、森本さんから"KNOCKOUT FES"について簡単にコンセプトを説明していただければと。
森本:"KNOCKOUT"というのは、10代とか20代前半の若いバンドを集めて、"ダイヤモンドの原石を見つけてください"というようなコンセプトで始めた、マンスリーのブッキング・イベントだったんですけど、盛り上がってきたので、若手が一同に集まるフェス形式になったんですね。その当時はミセス(Mrs. GREEN APPLE)とか、シャウト(Shout it Out)とか、the equal lightsとかが出てくれて。2015年に初めてサーキットになって、去年から年2回になったので......今回で7回目ですね。
-今回集まってもらった3バンドについて、森本さんの視点でどんなバンドかを紹介してもらえればと思うのですが。まずは、長靴をはいた猫から。
森本:長靴をはいた猫は、とにかくヴォーカルに魅力があるんですよね。
-わかります。紅一点ヴォーカルの鶴さん、強さの中に独特の色気もあって。
森本:でも、最初にライヴを観たときはMCでは全然喋ってなかったよね?
イノウエ:そうなんですよ。でも、森本さんに"もうちょっと喋った方がいいんじゃないか"って言われて、MCで話すようにしたら、すごくウケたんですよ。さすがだなと思いました。僕は、ヴォーカルの声質とか表現に魅力を感じてて、歌詞も任せてるので、その世界観を生かすことが自分の仕事かなと考えてますね。
-文学の匂いのする、日本語を大事にした歌詞の世界観が印象的なのかなと思いますけど、目指しているアーティスト像はありますか?
イノウエ:いや、特にないんですけど......。言ってもらったとおり、日本語の語感が好きで、大事にしてるっていうぐらいですね。それよりもヴォーカルを生かす方法をずっと考えてるんです。女性ヴォーカルにもアイドル・ポップだったり、いろいろありますけど、僕たちはロック・バンドなので。
-もちこさんと山口さんは、長靴をはいた猫についてはどう思いますか?
もちこ:名前とアートワークと曲調が全部統一されてるのがすごいですね。
山口:僕も同じです。バンドをやるうえで世界観を統一して出すことは大事だと思うんです。そこが曖昧だとお客さんに届かないというか。"自分たちはこういうバンドなんだぞ"っていう芯がしっかりしてるからこそ伝わる。長靴をはいた猫は、結成して1年ぐらいなのにちゃんとコンセプトを考えて具現化してるのがすごいです。
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コロナ禍やフェス出演など、この3年間の様々な初めての経験の中で見つけた自分たちに必要なものや、新たにやりたいこと。それらを惜しげもなく詰め込んだポジティヴな1枚だ。リード曲「僕が最後に選ぶ人」は、鍵盤の音色やドラムの変化で畳み掛けていくアップテンポなポップ・チューン。さらに電子音やストリングスのループを据えた「遠い春の夢」とサウンド面での挑戦を見せると、壁にぶつかった瞬間に得た気づきから生まれたメッセージ・ソング「マイナスの要素たち」や、年月を重ねてきたふたりの日常を絶妙な温度感で描く「いくつになっても」、「ANNIVERSARY」を経て、ノスタルジックな景色から壮大に夢を描く「橋を越えれば」で美しく締めくくる。経験を取りこぼしなく実力に変え、頼もしく未来へ向かうアブソに期待。(稲垣 遥)
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平均年齢19歳の3ピース、Absolute areaのニュー・シングル。2曲の中にバンドの魅力がぎゅっと詰まった、名刺代わりに相応しい1枚である。「あなたへ」は、複雑な気持ちをまっすぐに歌うメロディのピュアさと、ミドル・テンポながら頭から最後までエモーションを止めないアレンジのスキルが詰まった、バンドの可能性を感じる楽曲。幅広いリスナーに愛されそうなキャッチーさを誇っているが、熱く骨太な演奏には、ラウドロックという彼らのルーツが見える。「ミライゾウ」は、ライヴで映えそうな口ずさみたくなるノリの良さのなかに、しっかり意志が込められた楽曲。ライヴを大事にしていきたい、という彼らのスタンスが表れている。若さだけではないセンスを持った新星の登場だ。(高橋 美穂)
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10代アーティスト限定フェス"未確認フェスティバル2018"グランプリ獲得のマッシュとアネモネによる初全国流通ミニ・アルバム。リード曲「ユートピア」や「アフターオール」に代表される、もちこ(Vo/Gt)の朗々とした歌声が、キャッチーだが少し違和感のある切ないメロディに乗る、クセになるロック・サウンドが彼女たちの持ち味。そこに、初めてもちこが作詞作曲したという、トロピカルでかわいらしい一面を見せる「フィッシュレディ」や、弾き語りで女の子の不安な想いを素直に吐露した「マフラー」、哀感漂うローテンポな「シープマン」と、持ち曲の中から特に強力なナンバーを選出した渾身作だ。もちこが独特なセンスで紡いだ歌詞中のフレーズを散りばめた、こだわりのジャケ写も楽しい。(稲垣 遥)
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女性ヴォーカルを擁する4ピース・バンド、長靴をはいた猫による2nd EP。インスト・トラック「澱」の温度感を引き継いで始まる「水槽」は、あえてジャンル分けするならばポスト・ロックだろうか。不穏な雰囲気を漂わせるイントロのベース・ラインの上に、歌声や楽器の音色が重なり、次第に大きな渦を生み出していく。大きな振れ幅で、しかし呼吸するように自然と静と動を行き来するサウンドは、狂おしくも美しいもの。共依存的な関係性を連想させる歌詞も独特の香りを放つ。そして「暗夜光路」は疾走感のあるアッパー・チューンで、活動開始から1年強かけて鍛えたアンサンブルの熱量が反映されている。縁日の光景を描く歌詞や和情緒あるギターのフレーズはこれから訪れる季節にも似合う。(蜂須賀 ちなみ)
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