Japanese
空想委員会
2018年07月号掲載
Member:三浦 隆一(Vo/Gt) 佐々木 直也(Gt) 岡田 典之(Ba)
Interviewer:沖 さやこ
空想委員会が渾身のフル・アルバム『デフォルメの青写真』をリリースしてから1年3ヶ月。この期間、彼らは3本の全国ワンマン・ツアーと、クラウドファンディングによる自主アニメ"何色の何"制作と、そのアニメ作品と連動したEP『何色の何』を制作していた。この期間はバンドにとってもメンバーにとっても初めての経験ばかりで、特にフロントマンの三浦隆一には多大なる変化や気づきがあったそうだ。"届けたい"というシンプルな気持ちが生み出した壮大なプロジェクトの背景を探る。
-前作『デフォルメの青写真』(2017年4月リリースのメジャー3rdフル・アルバム)から1年3ヶ月ぶりのリリースとはいえ、この期間はツアーも3本(2017年6月~7月開催"空想委員会 デフォルメの青写真 リリースワンマンツアー『青写真の現像室』"、9月~10月開催"空想委員会ワンマンツアー『持ち寄った青写真を重ね合わせて描いた未来は歌だった』"、2018年3月~6月開催"空想委員会インディーズ回顧ツアー「僕はまだ懺悔する恋愛下手が作る罠を知らない見聞録」")回り、『何色の何』にまつわる制作やクラウドファンディングのリターンなどもあり、お忙しかったでしょう。
三浦:1年かけて『デフォルメの青写真』を"このアルバムどう?"と言いながら届けたと感覚があって。それが自分的にはすごく良かったですね。
佐々木:『デフォルメの青写真』が本当にいいアルバムになったので、大事に聴いてほしいという想いからリリース・ツアーを2本打ちました。1枚のCDを長期間かけて届けたという経験は初めてで......このアルバムにはこんなところもあるんだよ、こんな面もあるんだよと全国を回って伝えられたのは本当に良かった。音楽活動はこうであるべきだなとも思いましたね。
-『何色の何』はメンバーから強く明確に届けたいテーマがあり始動したプロジェクトだそうですが、こちらについて詳しく教えていただけますか?
佐々木:メンバー内で"フランクに飲んでいろいろ話そうか"ということになって、珍しく3人で飲んだときがあったんです。いろんな話をしていて、その流れで"次の表題曲はミドル・テンポがいいよね"という話が出たんですよね。三浦君の声や、歌詞のノリ、メロディのラインが一番気持ち良く響くのはミドル・テンポの曲なんじゃないか......という気が俺はしていて。
岡田:空想委員会はガンガンいくアッパーな曲もじっくり聴かせる曲もどっちもいけるし、どっちも大切にしているから"ミドルでもいけるでしょう!"という自信はありましたね。
三浦:語り継がれている"名曲"と呼ばれるものは、ミドル・テンポの曲が多い気がしていて。なおかつ映画やドラマのような映像作品との相乗効果で広まってヒットするイメージがあるんです。だから自分たちで映像作品を作ろうと思ったんですよね。実写よりアニメの方が観てもらえるんじゃないか? という意見をいただいて、メンバーで相談した結果、アニメを作ることにしました。
-アニメ"何色の何"は、三浦さんが原作をお書きになっていますね。
三浦:映像と曲がばっちり合ったものにしたかったので、物語を自分で作ることにしました。だいぶ前に"見ているものがみんな同じ色とは限らないよね。僕が見ている赤と、みんなが見ている赤は違う色かもしれない"と考えたことがあったんですよ。"何色の何"というワードをきっかけにそれを思い出して、"見ているものは違うかもしれないけれど、同じだったらいいね"という話を作ろうと。それはワンマン・ツアーのなかで「エール」という曲を作ったことも大きいと思うんです。
-というと?
三浦:「エール」はツアー中にお客さんからメッセージを貰って曲を作るという企画がきっかけでできた曲で。お客さんの背中を押したいと思って作ったんですけど、果たしてこの歌詞をどう受け取られているんだろう......と思ったんです。「エール」で歌っていることがちゃんと届いているといいな、という想いが"何色の何"のお話に繋がったんじゃないかなと思います。
-三浦さんが"歌詞に綴った自分の気持ちが聴いてくれる人にちゃんと届いてほしい"と思ったことは、これまでにあまりないような気がしていたんですけど、いかがでしょう?
三浦:なかったですね。自分の歌いたいことを勝手に歌って、わかる人がわかってくれればいいなと思っていた。でも「エール」はみなさんから言葉をいただいて作った曲だったので、受け取り手にちゃんと届くものでないと"みなさんに聴いてほしいんです"とは言えなかったんですよね。『デフォルメの青写真』を作って2本目のツアー("空想委員会ワンマンツアー『持ち寄った青写真を重ね合わせて描いた未来は歌だった』")を回っていなかったら「エール」はできていなくて。......もしかしたら「エール」がなかったら、"何色の何"にまつわるあれこれはやっていなかったかもしれない。
-1年かけてリスナーさんにCDを届けて、そのなかでリスナーさんにメッセージを貰って「エール」を作って、"純度100パーセントで届けたい"という想いが生まれたんですね。
三浦:今まで頑張って音源を作って、いっぱいリリースしてきて、音楽を届けることは難しいんだなと思うことが多かったんですけど、『デフォルメの青写真』のときは特に"こんなにいいものを作ったのになんでだろう"という悔しさがあったんです。隅々までちゃんと"伝えること"を実行しないといけないんだなと思いました。
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2年間の活動休止を経て、21年4月、活動を再開した空想委員会が『恋愛下手の作り方』で全国デビューしてから10周年という節目にリリースした、全12曲書き下ろしのフル・アルバム。日々の暮らしで感じる生きづらさと、そこに潜む希望の欠片を探す3人組ギター・ロック・バンドと自ら掲げる彼らがここで歌うのは、自分たちも含む"世渡り下手"への愛......ではなく、叱咤激励だ。彼らには不似合いかもしれない叱咤激励という言葉を使いたくなるほど力強くなったメッセージと、ファンクを含めダンサブルなリズムを強化したアレンジに、バンドの成長を感じずにいられない。かつて身上としていた恋愛下手をテーマにした曲は、Track.10「ラブソングゾンビ」のみ。そんなところからも再出発にかけるバンドの思いが窺える。(山口 智男)
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空想委員会が活動休止をして2年、三浦隆一(Vo/Gt)のソロ・デビュー・アルバムが完成。もともとは昨年春の発売を予定していたが、コロナ禍や三浦の体調不良もあり、1年の時を経ての発売となる。Kenji Smith(Gt/ex-ウソツキ)、出口博之(Ba/モノブライト)、渡辺拓郎(Dr/藍坊主)といった盟友と作り上げたのは、三浦の心の内に触れる作品だ。ソロという新たな道を歩んでいく、そこでふと襲われる不安や正解を求める焦燥感は、自分の足元が不安になる出来事が多かった昨今の日常にも重なりそう。その音楽は、どうにもならない悩ましさを抱えながらも、一歩を踏み出す確かで軽やかな躍動がある。彼が自身に問い掛け、自分の声に耳を傾け続け聞こえてきたこの音楽は、誰かにとっての道しるべになりそうだ。(吉羽 さおり)
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1年3ヶ月ぶりの新作は、クラウドファンディングにより制作された、フロントマン 三浦隆一(Vo/Gt)が原作を手掛ける同名アニメと連動したEP。これまで三浦の実体験や心情に焦点を当てた楽曲制作を行ってきた彼らだが、今作では登場人物ふたりのそれぞれからの視点で綴られたもの、三浦から主人公に向けて宛てられたものと、歌詞表現の幅が広がった。リスナーからメッセージを募って制作されたという「エール」、アニメの主題歌であり歌を最大限に生かしたサウンドスケープの「マイヒーロー」など、着火性は高くないかもしれないが一過性ではない、バンドの核心となるエモーショナルな温度感をじっくりと伝える楽曲がひと際存在感を放つ。楽器隊のシンプルでありながら細やかな音使いも聴きどころだ。(沖 さやこ)
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"作った人間によってデフォルメされた音楽を、聴き手にも好きなようにデフォルメしてほしい"という意味のアルバム・タイトルを冠した約1年2ヶ月ぶりのフル・アルバム。これまでの人生経験を綴った三浦隆一(Vo/Gt)の歌詞も題材が多岐に渡り、岡田典之(Ba)も自らが作曲した楽曲はアレンジのイニシアチブを取るようになるなど、これまでで最もそれぞれのメンバーのカラーが出た作品になった。その結果3人の化学反応の生みだす調和によって、バンドとしての鋭さや楽曲のバリエーションが生まれている。佐々木直也(Gt)による全収録楽曲のフレーズを織り交ぜたインスト・ナンバーももちろん収録。3rdフル・アルバムが原点も成長も存分に含んだ作品になったことは、バンドにとっても大きな自信になったのでは。(沖 さやこ)
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TVアニメEDテーマや映画の主題歌などを収録した両A面シングルから約8ヶ月ぶりのリリースとなるEPは、初期空想委員会の代名詞ともいえる恋愛ソングを主軸にした作品。とはいえリスナーに懐古の念を起こさせないのは、アレンジや歌詞に新しいアプローチがあるからだ。特にアレンジは目覚ましく、通常盤に収録されている「波動砲ガールフレンド」のアコースティック・バージョンは、アップ・テンポの原曲を落ち着いたタッチでリアレンジ。テンポ・チェンジを用いたTrack.1、曲名のとおりトランス要素を取り込んだTrack.2を筆頭に、らしさを残しつつ斬新な印象を与える。非常に理想的なアップデートでは。ラストに"その先"を匂わせる歌詞も、タイトでクールな音のなかで力強く響く。(沖 さやこ)
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世の中には嘘が多く存在する。それは自分自身を優位に立たせるものであったり、自己防衛のものであることも多く、穿った見方をしてしまうこともある。だが音楽を含めた芸術に関して嘘は天敵である。空想委員会は、そういった狡猾なことは一切せず、努力を欠かさず生身の自分自身で音楽を作り鳴らすバンドだ。フロントマンの三浦隆一の人間性はメジャー・デビュー以降さらに楽曲に明け透けになり、心境の変化が新たな色彩をもたらす。楽器隊もそこに突き動かされるように、楽曲の奥行きを作るため以前以上に細部まで音色を追求。これまでの持ち味をブラッシュアップさせながら、新たなチャレンジを要所要所で取り込んだ精度の高い楽曲が揃っている。彼らの音楽愛と好奇心はこれからも我々の心を刺激し続けるだろう。(沖 さやこ)
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男性目線と女性目線の2曲で、ひとつの冬の恋の終わりを描くことをコンセプトに制作された完全限定生産の両A面シングル。Track.1はシンプルで疾走感のあるギター・ロック。冬の冷たい空気の中を疾走していくような力強さもあれば、触れたらすぐに溶けてしまう雪のような繊細さや感傷性も持ち合わせた空想委員会らしい楽曲だ。Track.2は舞い落ちる可憐な雪を彷彿とさせる、ストリングスを用いた軽やかなナンバー。"終わった恋の続きを始められたら"と願う女性の切なくささやかな希望が綴られた歌詞とサウンドの親和性が、冬が終わると春が来ることを伝えてくれるようだ。2015年は制作面でも活動面でも彼らにとって大きな過渡期と言っていい。来年の活躍に期待を寄せざるを得ない完成度である。(沖 さやこ)
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初めて"自分"と"あなた"のことを歌いたくて曲を書いた――三浦隆一(Vo/Gt)に訪れた転機(※詳細はインタビュー記事にて)から生まれたこのミニ・アルバムは、間違いなくバンドの、そして三浦の新境地だ。元来、彼は自分の心情を嘘偽りなく歌詞にしているが、今作にはその心境の変化や新たな意志が克明に記されている。聴き手を誘うTrack.1、自分自身の変化とメッセージを投げかけるTrack.2、作曲者である岡田典之(Ba)を詞に投影したTrack.7など、これまでにはなかったカラフルな表現が揃った。歌の芯が強くなった分、佐々木直也(Gt)の作る遊び心のあるアレンジやギター・ソロもより際立ち、3人のプレイヤーとしての個性が見られるところも面白い。空想委員会、劇的革命の真っ最中だ。(沖 さやこ)
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精力的な活動を行い続ける空想委員会からわずか約3ヶ月で届けられた新作は、枕草子をモチーフに、四季折々の恋模様を描いた4曲入りEP。「春恋、覚醒」は5拍子の上に、6拍子のギター・リフが乗るイントロから、疾走感のあるセクションへと移る様が桜吹雪のように鮮やかで、バンドに新たなモードをもたらす攻勢的な楽曲。メジャー・デビュー以降、サウンドのギミックがさらに洗練されており、よりロック・バンドとしての腕を強化する意思表示と言ってもいい。男子からの共感性抜群であろう生々しい歌詞の描写とダンス・ビートのコントラストもクールな「作戦コード:夏祭り」、夕日に染まる教室が浮かぶ穏やかな「秋暮れタイムカプセル」、現在の空想委員会の原点である「マフラー少女」と、4曲それぞれ異なった趣を楽しめる。 (沖 さやこ)
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バンドの中心人物である三浦隆一は不思議な人だ。冷静で淡々としつつも人当たりは良いし、よく笑うしジョークも言う。だが心の奥底に何か大きなものを抱えているような、深い目をしている。そんな彼の内面が出た"THE三浦隆一"とも言えるのが今回のメジャー1stシングル。表題曲は自分を振った相手を恨む気持ちを歌ったもので、本人は"自分の鬱憤晴らしだ"と言っていた。だがその中でも自然とリスナーを導いたり夢やエンタテインメント性を与える楽曲に昇華されているところは、バンド・メンバーが元来持つ人間力が大きい。三浦が自分をさらけ出した楽曲に対して、ふたりは"歌を聴かせたい"と真摯に向き合い、楽曲制作を経て彼らはさらに絆を深めた。この先バンドの自由度がさらに広がることを予感させる。(沖 さやこ)
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淡々としているのか、それとも情熱的なのか。突き飛ばしても倒れない、そんな強さを持つ声が紡ぐのは、恋愛にまつわる不平不満と恐怖に、憧れ――。インディーズ時代から学校と紐付けされたユーモア溢れる活動と、完成度の高い楽曲で10代のリスナーを中心に話題を集めていた空想委員会がメジャー・デビューを果たす。正統派ギター・ロックとひねくれた恋愛観、遠くから憧れの人を見つめる切なくひとりぼっちの音楽。そこに美しく華やかなギターの音色と安定感のあるベースが加わることで、委員長・三浦隆一ひとりだけの世界だったものがドラマティックに変貌し、空想委員会の世界となる。ひとつひとつの音があたたかいのは、このCDの向こうにいるリスナーへ宛てる想いだろう。そう、彼らの音楽は優しいのだ。(沖 さやこ)
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皆様は雨というものにどのようなイメージをお持ちだろうか。濡れる、髪が広がる、傘が邪魔、頭痛に悩まされる......ネガティヴなことがたくさん思い浮かぶが、本当にそれだけ?少し見方を変えるといろんな世界が広がっているのでは? ――そんなことを教えてくれるのが、春にメジャー・デビューが決定している空想委員会の『空の罠』だ。2013年11月にライヴ会場限定でリリースした2nd EPの後編となる3rd EP。雨をコンセプトにした作品を作ることになった発端は、ライヴの日は大抵雨、ワンマン・ツアー初日に台風直撃等、雨バンドと称されることが多くなったからとのこと。そんな自虐を巧妙にエンタテインする手腕がニクい。ちょっぴり切ないムードの漂う音色と文学的な言葉遊びの罠にかかってみては。(沖 さやこ)
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