0.8秒と衝撃。 塔山忠臣 の 「アホボケカスは俺か？」【第34回】

0.8秒と衝撃。塔山忠臣の「アホボケカスは俺か？」【第34回】

2016年04月号掲載

0.8 秒と衝撃。塔山忠臣の「アホボケカスは俺か？」

人は死ぬ。いつか必ず。
　
カネを持っている、貧困に苦しんでる、関係無く。
　
こんなコトがあった。0.8秒と衝撃。にはマネージャーがいて、名前を『ボビーさん』と言った。彼との思い出はたくさんある。みんなも経験が有ると思うんだけど、大好きだった人との思い出は、意外によく分からぬ場面や、飛び飛びの記憶の羅列で出来ていたりする。その不思議な感覚の中でも、僕の印象に残っているのが、新宿の、とあるライブハウスで激宴を演じたあとに、その日、乗って来た僕のバイクが故障し、ボビーさんが一緒にバイク屋に押していってあげるよと言うので、女性メンバーのJ.M.さんと、3人で夜の新宿の片隅を仲良く話しながら僕のオートバイを押し押し、歩いた時の記憶である。結局そのバイクは廃車になり、僕はバイトの金で毎月コツコツ返す契約を結び、新しい黄色のスクーターを購入するコトになった。それから色んなトコロに、そのスクーターで向かった。ボビーさんとの打ち合わせは勿論、都内や近県のライブハウス、フェスならガンガン運転して行ったし、機材を山のように積み、ハチゲキのレコーディングにも、たくさん向かった。ボビーさんはその後、心労がたたり、急な卒倒で、そのまま息を引き取り、僕の目の前から居なくなってしまった。今もまだ現実味は無い。でもあの時、ボビーさんに色を選んでもらった黄色のスクーターは未だ、僕を色んな場所へと、運んでいってくれる。まだ生きているのだ。
　
こんなコトがあった。
僕ら0.8秒と衝撃。がその昔、大阪のロックフェスに出たコトがあって。その日は前日からの雨で、ぬかるんでいて、足場は泥だらけ。前述のボビーさんの提案で、東京を出る際にサンダルを買っておこうよってコトで、僕らはそれぞれ、よくエスカレーターに挟まるから気をつけろ的な、安物のサンダルを購入し、大阪のフェス会場へと、向かった。その時のLIVEは『泥のラッシュボー！！！』として印象に残ってますが、その楽しかったLIVEの興奮も冷めやらぬまま帰京した僕は、当時よくバイト帰りに見かけていた、年齢で言えば僕と対して変わらぬ、ある神社の門前で、いつも座っている、ホームレスの若者が気になっていました。僕はいつも裸足でいた彼に、少しでも何か良いコトがあればと、楽しかったラッシュボールで履いたそのサンダルを、「良かったら、どうぞ。」とだけ伝え渡し、怪しまれぬよう、その場を去りました。つい最近。しばらく見なかった彼を、朝バイトに向かう際に何年振りかに見かけ、ふと、足元を見た時に、片足だけになってはいたけれど、僕の、ラッシュボーサンダルを、大事に履いてくれてたコトに、その日一日、俺は、何だか、元気になって。サンダルは片方、消え去ってしまっていたけれど、彼はまだ生きていたんだ。
　
こんなコトがあった。
僕は安マンションの1Fに住んでいて、その値段や環境からか、その3階建ては単身者の男性ばかりが居住していて。ある日、天井から恐ろしいほどの爆音。しかも夜中に不規則なリズムで「ドン、ドドン、ドン。ドン、ドンドン、ドカドカドカ、ドーン！！！」など、まるで不機嫌な幼児が暴れ歩くほどの雑音が、毎晩、鳴り響いた。しばらく我慢していたが、僕はあまりのそのノイズに耐えきれず、やはり今後が心配だとの判断から、静かにお願いしたい的レベルで、苦情を申し立てに行った。最近、引っ越して来たばかりらしいその上階者は、ドアを開けるなり、ホンモノ臭が漂う「う～ん、どう説明しようかなぁ......」と思案が必要な、支離滅裂な男性であった。僕は責めても仕方ないのを察し、翌朝、不動産屋を通じ、情報を聞いた。どうも彼は精神をかなり病んでいるらしく、親も見放し、飼い殺しのように金と食ってゆける環境だけを与えられ、僕のマンションの上階にやって来たらしいと言うのだ。それを普通に伝えてくる不動産屋にドン引きもしたが、この国の生きる言い訳のクソ思考の最大公約数に、『お金をくれるヒトは皆、意味が有り、お客様♡』みたいな虚構があるので僕は特別、阿呆な商売人たちは相手にしなかった。上階者からの騒音はしばらくして、ウソのように、無くなった。後から聞いた話で、彼は近所のスーパーマーケットで金はあるのに万引きを繰り返し、ブラックリストに入れられ、毎晩マンションに帰って来ては、僕の上で、騒音を撒き散らしていたのである。その感情たるや、如何に？？？
彼は、しばらくして、孤独死の状態で、発見された。
病気で死ぬような年齢ではナイ。でも、彼は死んだ。警察に聞いたところによると、僕は上にいる彼のナキガラと数日、同じ夜を越えていたことになる。彼は、最後に何を思ったのだろうか。想っていたのか。
　

人は死ぬ。いつか必ずだ。
　
でも、だからこそ、
　
僕は無意味を恐れ、自分の人生に、
安い優しさの収まりをつけるのでは無く、

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