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INTERVIEW

Japanese

夏の魔物2019

2019年07月号掲載

夏の魔物2019

毎年恒例のロック・フェス、"夏の魔物"。2006年の初開催から今年で14年目となる、今や古参フェスのひとつに数えられる同フェスだが、今年はなんと9月1日‬‬‬大阪 味園ユニバース及び9月28日‬‬、29日に埼玉 東武動物公園で2デイズと、計3日間開催されることとなった。レジェンドから若手バンドまで、1日で日本のロックの歴史を体感できるフェスなんて、日本中どこを探してもここだけだろう。それぞれのヘッドライナーを務めるのが、THA BLUE HERB、Age Factory、ワッツーシゾンビというのもらしさ全開だ。そんな"夏の魔物2019"開催を記念して、主催者の成田大致と、0.8秒と衝撃。の活動を経て立ち上げた新たなプロジェクト"////虹////"として大阪、埼玉共に出演が決定している塔山忠臣による対談を行った。今年はどんな光景が繰り広げられるのか? 大いに想像しながら読んでほしい。

"夏の魔物"主催者:成田 大致
////虹////(ex-0.8秒と衝撃。):塔山 忠臣
インタビュアー:岡本 貴之 Photo by Jumpei Yamada

-まず、"夏の魔物2019"開催にあたって、塔山さんを対談相手に選んだのはどうしてなんですか。

成田:塔山さんには今年、////虹////で大阪と埼玉の両方に出ていただくので、お話させてもらいたいなと。

塔山:ありがとうございます。

成田:それと、今年の"夏の魔物2019"で事前に煽りVTRを作るんですけど、その映像の中で使う煽りVTR用の曲も、塔山さんにお願いしているんです。

-その曲は、////虹////として、フェス本番で披露するんですか。

塔山:いや、その曲は成田君に書いた曲なので、////虹////のライヴとはまた別ですね。

-これまでの"夏の魔物"では、煽りVTRというのはなかったですよね。

成田:以前から作りたいという夢はあったんです。僕は格闘技の"PRIDE"が好きだったんですけど、去年、"PRIDE"で煽りV(VTR)を作っていた映像作家の佐藤大輔さんがフェスに遊びに来てくれたんですよ。そのおかげで今年、煽りVをお願いすることになって。

塔山:へぇ~! いいですね。その始まりはいいなぁ。

-そうなると、塔山さんには格闘技っぽさみたいなイメージも曲のリクエストとしてあったわけですか。

塔山:最初は要望を聞いて、場面場面の映像に合うインストっぽい感じにしたんですけど、それのおまけに、ちょっと自分っぽいことを入れておこうと思った箇所が8小節ぐらいあったんです。そうしたら、"そこだけが欲しいぐらい良かった"って言われたんです。好き勝手にめちゃくちゃやったところをいいって言われたから、"あぁ、やっぱりイカレてんな、いいな"って思ったんですよ。それで、そこを引き延ばして曲にしたんです。

成田:塔山さんから曲が届いた瞬間、"これだ!"と思って。佐藤大輔さんの映像って、DJ的というか、音楽の匂いを感じるんです。既存の曲をマッシュアップする方がいいのかどうか、実は塔山さんにお願いしたときにめちゃくちゃ悩んだんですけど。

塔山:最初はそういう流れだったんです。映像に合わせるものだから、サンプリングの方向っぽい感じで。でも、もともとあるものに似せてもあんまり良くならないなと思って。だから、僕が自由にできるところを、絶対ボツになるだろうなっていうぐらいにむちゃくちゃやったんですけど、そこを気に入ってくれて。さすが、いいセンスしているなって思いました。

-そのセンスで言うと、塔山さんは以前から成田さんがやっていたことをどう見ていたんですか。

塔山:詳しくはわからないですけど、めちゃくちゃやってる感は伝わってきてました。自分にとって、めちゃくちゃっていうのは誉め言葉なので。ロックをやっている人はあんまりちゃんとしていない方がいいと思っているから(笑)。声が掛かったときは、すごくワクワクしましたし、ぜひやりたいなと思いました。それこそ、僕が昔Skream!で連載していたコラム(0.8秒と衝撃。塔山忠臣の"アホボケカスは俺か?")も読んでいて声を掛けてくれたみたいで、嬉しかったです。

成田:愛読してました!

塔山:このインタビューもそうですけど、繋がっていていいなと思いました。コラムから始まって、またSkream!で対談をさせてもらっているというのがいいですよね。

-"夏の魔物"にも、2012年に0.8秒と衝撃。(以下:ハチゲキ)として出演されています。2012年といえば、いろんなカルチャーをごちゃまぜにしたフェスを打ち出した最初の年でしたよね。

成田:そうですね。ハチゲキは、ライヴを観ても、体感したことのない音だったんですよ。それで、"普通のバンドをやっていても意味ないな"と思ったんです。バンドをやるとなると、ハチゲキとかのレベルと戦わなきゃいけない。これはちょっと無理だなって。それで、僕はバンドじゃなくユニット活動の方向に行って。

-塔山さんは、"夏の魔物"のことは、出演する前からご存じでしたか?

塔山:知っていました。感覚としては、"少年が立ち上げてやってるフェス"ぐらいの感じで聞いてたので、面白いなって思っていました。2012年に出演したときには、車が並んでいたんですよ。そのときに、うちの女性メンバー(J.M.)が金髪のヅラを被っていたので、間違えて車を開けたんです。そうしたら、内田裕也さんだったんですよ。

成田:マジすか(笑)。

塔山:"ヤバッ!"と思って謝って慌てて逃げましたけど。それをすごく覚えてますね。あと、THE★米騒動というバンドが演出で投げたケーキが僕の顔面に当たったんですよ。それでガッツポーズしたら、メンバーはテンション上がってましたけど(笑)。そういうことがいっぱいあって、普通のフェスより全然楽しいと思いました。カッコいいです。

-今年のフェスは、どんな運営方法をしているんですか。

成田:近年は規模が大きくなりすぎたのと、自分がわからないことが増えすぎたので、今年はようやく主催に戻れたというか、しっかりハンドリングして、今年こそ、自分のフェスだって言えるものを目指しています。去年のお台場(2018年9月2日に開催された"UDO ARTISTS 50th Anniversary 夏の魔物2018 in TOKYO")で、入場したお客さんのドリンクが足りなくなるっていうことがあったんですけど、普通そんなことありえないですし......音が被ってひどかったりとか。

塔山:うん。なんか噂には聞きました。

成田:レイアウトも何もリクエストが反映されていなくて、ステージが全部横に並んでいて。みんな同時に音が出ているんですよ。

塔山:う~ん、ちょっと聴いてみたい気はするけど(笑)。

成田:お客さんにも出演者のみなさんにもとても悪いことをしてしまったと思いました。なので、今回は絶対にそういうことは起きないよう、全責任をとれるように、目の届かないところをなくしたいっていうのが一番にあります。ラインナップもしがらみとかいろんな事情をなしにして、全部自分でブッキングしています。フェスを始めた頃に戻したんです。

-というと、今回は原点回帰的なところもあるということ?

成田:そうですね。それと、今回は自分のバンドが出ないんですよ。

塔山:ええっ!? マジっすか?(※ラインナップを見て)あ、本当だ。それはなんでですか? 主催者に徹するということ?

成田:はい。とにかくいいフェスを作ることに集中したいなと。去年のトラブルとかが、いまだにトラウマレベルで思い出せるぐらいで、12月末ぐらいに何もかも全部やめようと思ったんです。ここまで、本当にやめたいと思ったことはなかったぐらい、いろんなことに疲れちゃっていて。

-塔山さんからすると、"夏の魔物"のイメージってどんな感じですか。

塔山:自由な感じですよね。あれぐらい自由で、ある種無茶苦茶な、飛んでるところがあれば、もうちょっとマイナーなフェスでもいいのになって思うんですけど、"夏の魔物"という名は通っていて、ブランド力はあると思うんです。そこが不思議ですよね。もうちょっとマイナーで、呼ばれても嬉しくないようなフェスになっていてもおかしくないのに、やっぱり呼ばれたら嬉しいですし、そこがいいフェスなんだろうなって思います。

-やっぱり、呼ばれたら嬉しいですか。

塔山:それは、嬉しいですよ。そうじゃなきゃ、みんな出ないですし。僕が周りのスタッフに"「夏の魔物」に出るんです"って言うと、やっぱりみんな知ってますからね。"あぁ~、いいフェスじゃん!"って言ってる人もいますし。名前が通ってるんですよ。そういうところが魅力ですね。