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INTERVIEW

Japanese

SHE'S

2022年03月号掲載

SHE'S

Member:井上 竜馬(Vo/Key) 服部 栞汰(Gt) 広瀬 臣吾(Ba) 木村 雅人(Dr)

Interviewer:秦 理絵

このタイミングでバンドの姿勢を表せる曲ができたのは、すごく意味があると思うんです


-ちなみに「Blue Thermal」を作ったのはいつ頃だったんですか?

広瀬:半年前です。

-と言うと、『Amulet』(2021年10月リリースの5thアルバム)を作り上げた頃?

井上:『Amulet』はほぼ手は離れてましたね。「Beautiful Bird」のほうが先だったんですけど。『Amulet』を終わらせて、そのままの勢いで録っちゃおうって。

広瀬:だから最初はアルバムに入れたかったんですよ。早くライヴでやりたいし。

井上:あ、そうだ。それ話しとった。"これってアルバムに入れられるんですか?"って聞いたら、アニメの公開が2022年3月だからって外したんです。

-サウンドのムードも『Amulet』とは少し違いそうですしね。

井上:うん、たしかに。『Amulet』に入れるとしたら、「Blue Thermal」はこのかたちになってないかもしれないですね。

-で、今の話だと、挿入歌の「Beautiful Bird」のほうを先に着手して?

井上:去年の4~5月ぐらいにラフは出してました。

木村:そっか、そんな前やったか。

井上:映画で使われるのは1分ちょっとぐらいだから、そこだけ作って、フルを作るのはしばらく放置してたんです。アルバムが落ち着いてから完成させました。

-とても静謐なバラードですね。

井上:これは音数の少ない美しいバラードにしてほしいって言われたんですよ。

広瀬:アコースティックな雰囲気とか。

井上:それでピアノとアコギを選んだんです。映画の挿入歌として流れるわけだから、音数を少なくしたほうがセリフも映えるし、歌も映える。ってところで、歌詞の言葉数も多くならないようにというのは意識して作ってます。

服部:この曲はずっとシンプルな感じですよね。サビでハーモニーもあるので、そこでギターが動いても邪魔でしかないので。

広瀬:ベースは弾いてないんですよ。この曲はないほうが軽やかだなと思ったんです。

服部:アコギがミュートしながらストロークして、低音がぐっと出てるから。低いところはちゃんと鳴ってるようにも聴こえますしね。

井上:ドラムはミニ・ドラム・セットやったっけ?

木村:いや、そんなに小さいやつじゃなくて。音作りでいなたくしてるというか。コンパクトでミニマムな感じですね。スネアだけで進行していくから、ずっと一緒やったら面白くないと思って、アクセントを変えてっていうのを考えてやりました。

-栞汰さんも言ってましたけど、この曲はサビのハーモニーが本当に美しいです。

井上:これは三声ですね。より広がるように全部ダブルで歌ってて。開けた空気感が見えるシーンだったから、音の面積を広げるというか、透き通った感じが出したかったんです。「So Bad」とか「Imperfect」(共に『Amulet』収録曲)でやったゴスペルにも近いけど、ビブラートの聴かせ方が全然違うんですよ。どっちかというと、神聖な感じにしたくてまっすぐ歌ってます。

-"君"がいるから、"僕"が前に進めるという歌詞は、これまでもSHE'Sの楽曲では歌われることの多いテーマですね。

井上:そうですね。映画の中のキャラクターの気持ちで書いてほしいっていうところではあったんですけど。つるたまに恋をしてる男の気持ちも書いてて。最初は寄せすぎてしまって、"どうしようかな?"って悩んだんですけど、最終的に「Blue Thermal」と同じように、バンドのことを歌ったようなものにもなっていったんです。

-"朝焼けが眩しくても"という歌詞には、メジャー・デビュー曲の「Morning Glow」(2016年リリースのシングル表題曲)のことを指しているのかなと思ったりしました。後ろを振り返れば、眩しいあの頃の初期衝動があって、それを抱えて進んでいくんだというような。

井上:あぁ、それは思ってなかった(笑)。

広瀬:でも深いなぁ、それ。そういうことにしとこう。

-深読みしすぎました(笑)。とはいえ、今作はタイアップの影響もありつつ、11周年に突入するSHE'Sが改めてバンドの在り方を提示する作品になってると思います。

広瀬:11周年の幕開け感はありますよね。バンドのメッセージも詰まった曲やし。

木村:このタイミングでバンドの姿勢を表せる曲ができたのは、すごく意味があると思うんです。自分的には、「Blue Thermal」の"あなたを連れて行くよ"っていうのがすごく響いたんですよ。そういう姿勢がこれから大事になってくるんだろうなと思いますね。

-竜馬さんは、今作はバンドにとってどんな1枚になったと思いますか?

井上:自由にやらせてもらえて良かったなと思います。「Blue Thermal」にはクラシカルな楽器を入れて、「Beautiful Bird」は臣吾(ベース)いらんわとか、でも木村(ドラム)は入れとくかみたいな。そういう選択ができたので。『Amulet』では、バンドやけど、作品優先でフレキシブルに作れたんです。自分の中では、ロック・バンドへのこだわりがどんどんなくなっていってる10年間があっての現在やから。そのテンションのままこの2曲も作れて。それを周りがいいって言ってくれて助かりました。"もっとバンド感が欲しいです"みたいなことを言われてたら、「Beautiful Bird」は全然違ったと思います。今回のタイアップで僕らのスタイルをわかってくれる人らと出会えたのは、本当に運が良かったですね。