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Skream!×MUSE音楽院公開講座

2017年05月号掲載

Skream!×MUSE音楽院公開講座

メンバー:奥脇 達也(Gt) 理姫(Vo) バンビ(Ba) 山田 康二郎(Dr)
インタビュアー:渡邉 徹也

-なるほど。では次の質問、"友達にアカシックをおすすめしたいときには、個人的に好きな曲を数曲ピックアップして聴いてもらっています。知識ゼロの人にアカシックをおすすめしたいとき、みなさんはどの曲をピックアップしますか?"。

理姫:私は、「8ミリフィルム」と「プリチー」(2014年リリースの2ndミニ・アルバム表題曲)かな。

奥脇:俺も「8ミリフィルム」かな。一致しましたね(笑)。まぁ、聴きやすいところからってなると、やっぱり「8ミリフィルム」になるんじゃないかな。

-ありがとうございます。次は曲に関する質問、"ドラマ主題歌にもなった「愛×Happy×クレイジー」に対してどのような思いを持っているのかお聞きしたいです"。

理姫:この曲は、ドラマの主題歌として書き下ろしたものではなくて、もう先に曲を作っていたんですよ。ご縁で"ドラマの主題歌になりますよ"ってことになって。だから、いつも曲を作っているときと一緒だったんですよね。

奥脇:それで、せっかくのタイアップだから、"じゃあここは豪華にしてみようか"とアレンジして。最初はもっとロケンローな感じの曲だったんですけど、ちょっと華やかな感じにしてみたりしたんです。でも、この曲ができる前までのちょっとの間は、別に曲はできるし、いい曲ではあるけど、なんかビビッとくる曲がなくて。なんか、カップリングっぽいような、アルバムの1曲っぽいような、ちょっとマニアックな曲しかできてなかったんです。そんなときに、これがバーンって浮かんで。"これ、アルバム出すときのリードとか、シングル出せるんだったらこれがいいかな"って、ドラマとか決まる前に思えた曲なので、作ってるときからテンション高かったですね(笑)。

-自信作だったんですね。それでは、次の質問です。"曲作りとかでも言えると思うのですが、ただただ自分の個性を貫くことと、万人受けのいい自分を作るのはどちらがいいと思いますか?"。

理姫:私が思うのは、今どき個性も万人受けも、どっちとも言えないことって多くないですか? 例えば、今テレビによく出てるタレントのりゅうちぇるさんとかも、ああいう個性が今まで万人受けしてきたかっていうと、そんなことなかったと思うんですよ。だから、今って"個性"っていうほど個性じゃなくなっているし、"万人受け"っていうのも何だかわからなくなってきてる。

奥脇:だから、逆にちょっとバンドやってたりすると、区別したがるんだよね。こないだも、飲みに行ったときに後輩のバンドマンにCDを聴いてくれって言って渡されて、"これ、酔っ払ってるとどっか落として聴けなくなりそうだな"と思って、その場所が音を出せるところだったから、"じゃあここで流そう"って言って店の中で爆音で流したの。で、3曲くらい聴かされて、"1曲目がリードっぽい感じなの?"って言ったら、"はい、そうです"って言って、"本当は3曲目が一番やりたい感じなんです"って言ってきて。俺にはその1曲目と3曲目の違いがよくわからなかったの。でも、自分が作ってるものって、意外と狭く見ちゃってることがあって、そうなっちゃうんだよね。俺も今でもあるし。"これとこれは似てるから"と思っても、理姫から見たら"え? 全然違うじゃん"とかいう、逆もまた然りで。だから、自分で見方を狭めてるんだなって思って。

理姫:受けるか受けないかっていうのは、自分では決められないんで。それを考える作業って、リスナー側がやることなんですよ。私は、その質問を聞いて思ったんです。私もよく事務所のスタッフに言われるんですけど、"自分がブレないことが一番大事"なんですね。やりたいと思ってること、今こうやって考えていることっていうのを発信したい人なんだったら、それを1回ひと言でも言っちゃったら、もうブレちゃいけない。ただ、"私はこれがやりたい! 絶対ブレない!"ってやったのが、周りの人10人みんなに"いや、全然意味わかんない"って言われたら、ちょっと考え直した方がいいかもしれないけど(笑)。

奥脇:結構大事なことだよね。でも、ずっと音楽をやってて思うのは、いろんな人からアドバイスをもらったりすることもあったし、いろんな人と作業することもあったけど、ミックスとかいくら実力がある、キャリアがある人とやったとしても、自分がちょっとでも良くないと感じるものは、やらない方がいい。自分の才能は絶対に信じてやった方がいいと思う。100人くらいに"才能ない"って言われたら、たぶん本当に才能ないんだろうけど(笑)、ここまで自分が何年も音楽やれてるってことは、"絶対に才能ある"って思ってるし。アカシックにも反映できてると思うから、俺は毎回ミックスとかも自分の観点でしか見てないんだよね。だから、この質問に関しても、もうそこに悩むんじゃなくて、だったら融合させちゃえばいいんじゃないかっていうくらいのポジティヴな気持ちでやったらいいんじゃないかな。

-深い話でしたね。では、ここからは会場にいる方からの質問に答えていただく、質疑応答の時間に入らせていただきます。まず最初の方。

質問者:達也さんに質問なんですけど、作曲に関して、月にどのくらいのペースでストックしてますか?

奥脇:俺ね、ストックってないんだよね。アルバムのためだけに書くというか。何十曲もある中から収録曲をピックアップしてアルバムを作るってバンドももちろんいるし、いい作り方だとは思うんだけど......俺はもう"必ず入れる"っていう覚悟で作る。作っておこう、とは思わないんだよね。だから、月で言うと――

理姫:ゼロのときもあるんじゃない?

奥脇:やめてよ、俺がサボってるみたいな(笑)。まぁ、平均3曲くらいになるのかな。

山田:でも、送ってきてないけど作ってるものもあるんでしょ?

奥脇:それで言ったらめっちゃある。サビメロだけ録音しとく、みたいなのはめっちゃあるね。みんなに送るものは、わりとちゃんと打ち込んで、どんな雰囲気かわかるくらいまではデモで作るから。それが結構めんどくさいのよ。メロとコードだけでいいんだったら、月に......20とかかな? それでも俺は少ない方だとは思うけど。

-じゃあ、続きまして次の方。

質問者:メンバーのみなさんが、それぞれ一番好きなアカシックの曲と、あとは一番苦労したなっていう曲を知りたいです。

山田:『コンサバティブ』(2014年リリースの1stミニ・アルバム)の曲なんですけど、「秘密のデート」。これは、達也に散々言ってきてるんだけど、非常にいいです。今でもたまにライヴでやるときとか、実はテンション上がってます。で、一番苦労した曲は、「CGギャル」(2015年リリースのメジャー・デビュー・ミニ・アルバム『DANGEROUS くノ一』収録曲)なんだけど、最初ほとんど叩けなかった印象が。今までの中で一番キツかったかもしれない。手と足が足りないようなフレーズとかが、平気で入ってて。それを自分の中でどう解釈して表現するかっていうのに苦労しました。

バンビ:一番って難しいなぁ......3つくらい挙げていい? 好きなのは「サイノロジック」(『DANGEROUS くノ一』収録曲)と「Galaxy Bang」(『プリチー』収録曲)と、あとは「ツイニーヨコハマ」(『コンサバティブ』収録曲)かな。で、苦労した曲はやっぱり「CGギャル」と、「愛×Happy×クレイジー」と......あとは「Galaxy Bang」かな? 「CGギャル」は最初のとこが難しいし、「愛×Happy×クレイジー」は全体的なノリというか、メンバーの微妙な誤差とかは苦労したかな。「Galaxy Bang」は、ほんとレコーディング寸前でできた曲だったから。

奥脇:「Galaxy Bang」を弾いたときに、たしか"今までで一番難しい"って言ってたよ。

山田:そんなこと言うなら、僕も「Galaxy Bang」を挙げていいかな? この曲って、僕が加入して1週間後くらいに"この日レコーディングする"って言われて送られてきた曲で。それを自分で解釈して"こういうふうに叩こう"と思ってスタジオに行ったんですよ。で、達也と僕とミックス・エンジニアとマネージャーくらいしかいなくて。それでレコーディングしたんですけど、1曲叩くのに8時間とか結局かかって。達也はずっと、その場で"今、これ思いついちゃったんだけど、これやってもらっていい?"とかいうのを無限に繰り返して(笑)。もう、ほんとに鬱になる可能性あるくらいのレベルで苦労した曲ですね。

理姫:私は、「8ミリフィルム」が一番好きで。苦労した曲は......なんかわかんないね(笑)。

奥脇:俺はね、好きなのは「プラチナ文明共創」(『コンサバティブ』収録曲)。それと「オールドミス」(『DANGEROUS くノ一』収録曲)。プラチナはね、単純に作曲的な解釈で。いい曲だと思うんだけど、曲がどうとかっていうよりは、サビに入る前まではキーが"E"なんだけど、サビに入った瞬間に実は半音上がってるんだよね。よくカラオケとかでもあるじゃん。ラストのサビで半音上がる、みたいな。あれが一番きれいなんだよ。で、実は「サイノロジック」もサビが"E♭"なんだけど、AメロBメロまではずっと"C"で、Bメロの途中ですでに"E♭"なってる。っていうのをやるときに、ちょっとドヤ顔(笑)。

理姫:そういう、さり気ない転調大好きバンドだよね。

奥脇:そうそう。で、「オールドミス」は転調とか変わったことはしてないんだけど、単純に"いい曲できたな"って思ったかな。すごく考えたわけでもなく、普通に内から出てきたものがそう思えた流れが美しかった。あとは、歌詞もなんかいいじゃん。あれはほんと、すべてがカチッとハマッた曲だなって。そして、苦労した曲は「プリチー」。『コンサバティブ』は「終電」とか「ツイニーヨコハマ」とか推しだったじゃん。それで、わりとすぐに制作入りましょうってなって、「サイノロジック」とかはそのときあったんだけど、なんか必殺技がないっていうことになって。自分たちが、前の作品に縛られてるようじゃ、次回作なんて出す意味ないじゃん。だから毎回、何か自分たちの中で納得したものを出したいって思ってるんです。でも、そのときは"パンチ祭り"みたいな感じだったんだよね(笑)。"パンチあるもの作ろうぜ!"みたいな。だから、とりあえずパンチある言葉から探してたんです。俺が作ってきた曲に何か乗せるっていうよりは、まずみんなで話し合ってて。それで"プリチー"っていう言葉がどっかから出てきて、"いい語感だね"ってなったんです。あとは、パンチがあるかないかだけで作って。「CGギャル」とかもそうなんだけど、俺は意外と、バラードとか作る方が得意だから。パンチある曲ってほんとに難しい。なので、パンチある曲全般、苦労しました(笑)。