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INTERVIEW

Japanese

KANA-BOON

2019年06月号掲載

KANA-BOON

Member:谷口 鮪(Vo/Gt) 古賀 隼斗(Gt/Cho) 飯田 祐馬(Ba/Cho) 小泉 貴裕(Dr)

Interviewer:石角 友香

-KANA-BOONに限らずですけど、ライヴで大勢の前に立つ人がリスナーの人生を背負うみたいなところまで行っちゃうと、それはそれでどうなのか? とも思うし。

谷口:そう。47都道府県ツアーをやってみてそれは強くなりました。ライヴハウスでその人たちの街でやるから、その人たちの生活の地続きのライヴになるじゃないですか。大きな会場に遠征しに行って完全なる非日常を味わうのとはまた違う、日常生活の中に存在する、自分たちの街に存在するKANA-BOONのライヴってところがあったから。近さとか大きさとか、歌の内容もきっとこれから変わっていくのかなっていうのは、そこでも思いました。

-音楽はどこまでできるのか? 風呂敷を広げることも大事だけど、一生付き合えるものってどういうものなのか? ってことをバンドとして考えるタームに入ったのかもしれない?

谷口:うん。たぶんそうだと思います。その時々で納得できるスケール感であればいいんじゃないですかね。今は「まっさら」みたいな頼もしい存在を求めてるというか。やっぱり音楽に引っ張っていってもらってるから、すごく正しいことではあるけど、もしその立場が逆転して、楽曲を超える頼もしさが自分たちに備われば、また曲とのパワー・バランスが変わってくると思うので、そこはすごく楽しみですね。

-人として成長して、どういう音楽を作るかですね。でもやはりこの5周年のタームでは、「夜の窓辺から」(2018年9月リリースのB面集『KBB vol.2』収録曲)とか『ネリネ』(2018年12月リリースのミニ・アルバム)の収録曲などができたことで、核心を掴んだ感じがあるのでは?

谷口:そうですね。その時々で"これだ"って思うことがちゃんとできてたなっていうのは思いますね。「夜の窓辺から」で長いことずっと歌にしたかったことをようやく形にできたりとか、『アスター』(2018年5月リリースのミニ・アルバム)と『ネリネ』の2作品でチャレンジしたりしたことも、やっぱり経験としてはすごく大きかったし。"やっぱり最新作が一番好き"って言ってくれる人がいたんで、"あ、ちゃんと伝わってる"っていうのはありました。僕らもやっぱりね、「ネリネ」とかすごくいい曲やなと思うし。こないだイベントがあって僕らの曲がBGMで流れてたんですけど、「ネリネ」が流れて"うわ、すげぇいい曲"って感じて。

-そういう状態でいい曲と思えるのは事実いい曲だということだと思います。そして2曲目の「FLYERS」のポスト・パンク調は意外とこれまでなかったなと。この曲はどういうふうにできましたか?

谷口:これは、スタジオでセッションというか、若干遊びみたいな感じで、隙間で作った曲が原型としてあって。で、ゲーム(スマートフォン・ゲーム"Kick-Flight")のテーマ・ソングになるってことで、また曲を詰め直してっていう流れでしたね。

-ARCTIC MONKEYSとかの感じ。

谷口:うん。間奏とかモロですけどね(笑)。

-(笑)そして谷口さんはメロに対してラップ的な符割りは得意じゃないですか。

谷口:はい、多いですね。僕の場合はラップではないんですけど。やっぱラップって言っちゃうと本職の人に失礼ですし、自分の中では歌というものの中のひとつやから。ヒップホップ的なラップでもないけど、メロディというところには属してない、中途半端にやるわけじゃなくて、うまい自分なりのバランスっていうのが、「FLYERS」でひとつ掴めたと感じてますね。

-ただ早口とかリーディングみたいなことではないので、毎回そこに唸るんですよね。"よく乗っている!"と。

谷口:うん。言葉でリズムを作るっていうのはすごく楽しく取り組んでることなんで。僕は特にヒップホップ・ルーツが深くないぶん、どこにも属してないっていう感じが自分でも好きですけどね。

-誰かっぽかったら逆に興ざめするというか、谷口さんの発明だから面白いんだと思うんですよ。そしてこの「FLYERS」の歌詞は、谷口さんの歌詞としては王道というか、もうずっと歌ってきてることのように思えます。

谷口:そうですね。うまくいかないなってことがすごく多い。でもどんなときでも、そこから脱することとか、扉を開くこととか、外の世界に行くことを絶対に諦めないので、そういう歌は多くなりますね。サビでなんとか脱出しようとしてる歌。

-あと単純にデジタル・デバイスがなくてどうやって生きていけるか? みたいな。それを手放すことが現代で一番の挑戦なのかもしれないという。

谷口:うん。でもスマホ・ゲームのテーマ・ソング(笑)。

-(笑)まぁ、ゲームのテーマ・ソングというところとは切り離して。

谷口:あんまり関係ない話かもしれないですけど、"ひとりじゃない"って状態があんまり良くないというか。

-常にオンラインだということですね。

谷口:うん、そうそう。全部もうオフラインにして、そこでもまだ繋がってるものがあるのかどうか、もしくはそこで繋がりたいと思えるものが自分にあるのかどうか? っていうのは、僕も1回見定めた方がいいなとかは考えますけどね。

-面白いですね、人間ってそういうのをハイブリッドさせながら、便利さと人間本来の肉体や勘と繋げていってる部分もあるし。それにしても今回のシングルは明快ですね。

谷口:そうですね。両方とも自分たちに迷いがないというか、パキっとしてる、自信が感じられる曲になりました。


この1年を通してバンドを好きだと確認したし、見る人がまた新しい夢を乗せられたらいいなと思う


-このシングルが出たすぐあと6月15日に、5周年企画最後の"KANA-BOONのOSHI-MEEN!!"が開催されます。ズーカラデル、ヒグチアイさん、PELICAN FANCLUBという多様な3組ですが、彼らに出演してもらう経緯はどういうものだったんですか?

谷口:そもそもイベントの始まりっていうのが、自分たちがデビューしたタイミングとか、その後もいろいろサポートしてもらったり、直接出会ったり、ラジオでかけてもらったり、雑誌のインタビューで誰か友達のバンドがぽろっと口に出してくれたり、いろんな力を分け与えられて今があるからその恩を返したいっていう部分で。それをどういう形で返していきたいか? って考えるなかで、あのときの自分たちのようにじゃないですけど、ちゃんと光が当たるべき人たちに光が当たる......自分たちがちょっとでも力を貸せる部分があるならばやってみたいっていうところで、若手と呼ばれる人たちとか、自分たちがもっとたくさんの人たちに聴いてほしい、出会うべく人に出会ってほしいなって思ってる人たちをゲストに呼ぼうということになったんです。ずっと前から知っていた人や最近知っていいなと思った人たちを3組お誘いしました。

-始まったときは果てしなき旅のような感じでしたけど、いよいよシーズン5の完結が目前に迫りました。全部が濃かったのでは?

谷口:濃かったですけど、最後を一番濃いものにして終わらせたいですね。いろいろ頼もしい姿みたいなのもあったんじゃないかなと思うんですけど、自分たちがこの1年を通して、このバンドをすごく好きやし、ちゃんと長く続けさせたいなと思えたので、見る人がまた新しい夢を僕らに乗っけれるようにやっていけたらいいですね。