Japanese
KANA-BOON
Skream! マガジン 2017年01月号掲載
2016.11.24 @Zepp Tokyo
Reported by 石角 友香
今、実現して心から良かったと思えるライヴだった。
キャリア史上初のリクエスト・ライヴ。リクエスト曲の条件は2013年リリース以降の全楽曲、つまり初の全国流通盤『僕がCDを出したら』から最新シングル『Wake up』まで、シングルのカップリングも含めてすべてということ。メンバーにとってもファンにとっても特別な1曲があり、そしてそれらが選ばれた理由を会場全体で頷け
る、KANA-BOONへの思い入れの濃さをお互いに確認できるZepp Tokyoという規模感も功を奏した。
11月の降雪が54年ぶりとなったこの日の東京。にもかかわらず、開演前からフロアはギッチギチのファンで埋め尽くされ、暗転とともに耳をつんざく歓声と悲鳴が巻き起こる。繋いだ手を高く掲げながら一緒に登場した4人、そのシチュエーションが歓声をさらに大きくし、定位置につくと間髪いれずにちょっと懐かしい「1.2. step to you」からスタート。ステージとフロアの"会いたかった"熱量が冒頭からピークを迎える盛り上がりぶりだが、そこから「LOL」、「盛者必衰の理、お断り」まで、キラー・チューン連投ながら音作りの変化を感じる。特に小泉貴裕(Dr)のスネアが抑えめな印象。なにがなんでもラウドに元気いっぱいというより、初期のTHE STROKESやARCTIC MONKEYSのようなシンプルでモダンな鳴りだ。一方、飯田祐馬(Ba/Cho)のフレージングは多彩になっている。リズム隊の成長をいきなり感じた場面だった。
"みんながリクエストした曲と僕らがやりたいと思った曲が入ってるセットリストにワクワクしてる"という谷口 鮪(Vo/Gt)のMCはこの場にいる全員の総意だろう。中盤までで特にレアだったのは「見たくないもの」、「白夜」、「街色」だろうか。谷口の"だいたいこれは黒い魔法"という歌始まりが、「白夜」という歌そのものが持つ閉塞感を一瞬にしてこんなに思い出させてくれるとは想像していなかった。いわゆる"ポップな四つ打ち"で身体を揺らしながら心では血を流している、デビューしたてのKANA-BOONの曲はそんな心情になる曲がなんと多いことか。そして「街色」。今回のツアーの特設サイトでメンバー各々演奏したい曲を挙げていたが、この曲は谷口の推し曲だ。この曲が収録されているシングル『ダイバー』は、2ndアルバム『TIME』をリリースしたあとのリスタートであり、中でもこの「街色」は特にメッセージ性はなく、未だ自分が何者でもない10代の持て余し気味の時間や空間を俯瞰で捉えた曲だと谷口は語っていた。彼らのレパートリーの中でも曖昧でもどかしい年齢の気分をふわっとさせたままの曲であり、20代になったからこそ、若い世代に向けて書けた曲なのだと思う。そして歌はファルセットと地声の流れが難しいし、演奏も勢いだけでは成立しない。さらにライヴで演奏されていないうえにツアー初日。完璧とは言えないが、谷口の書く曲の幅が窺え、リクエスト・ワンマン・ライヴという機会が設けられて心底良かったと思えた選曲だった。
そして"僕らの今、一番新しい曲です"と紹介された「Wake up」も、演奏力が必要なナンバーだ。10月のリリース前からイベントやフェスで演奏していたというものの、大きなグルーヴを淡々と積み上げながら構築していくことで成立するこの曲は、まだまだ育て甲斐があると見た。そのぶん、曲の軸を大きく駆動させるための飯田の"歌う"ベースや、大空を思わせるような古賀隼斗(Gt/Cho)のフレージング、小泉の展開や変化していくリズムから目が離せないのも事実だった。そしておそらくファンの多くがKANA-BOONの歌の世界観として、自分を投影し続けてきたであろう「結晶星」が、目下の新曲「Wake up」に続いて演奏されたことに深い感慨を覚えた。「結晶星」はメジャー2ndシングルではあるけれど、バンド結成当時からあった曲で、夢を諦めた友人への曲でもあるし、夢を叶えられない自分に、"やりたくないならやめればいい"と焚きつけている部分もある。そして、ある種の曲作りの型から抜け出したという「Wake up」は、バンド活動が楽しみより仕事になってしまった時期を乗り越えて、自分で自分を鼓舞するような嬉しさに溢れた曲。そういう意識でライヴを観ているわけではないのだが、選曲の流れにバンドが歩んできた道が自然と見えてくるのも、今回のような企画でしか味わえない醍醐味だったのは事実だ。そして同じブロックで披露した「スノーグローブ」もAメロの展開が変則的で、ライヴでの表現力が問われる。何度も聴いたわけではないが、繊細な名曲としてツボを心得た4人を見た。ちなみにこの曲は飯田のリクエストでもある。
じんわりあたたかなものが心に広がったあと、いきなり鋭いリフとポスト・パンク的ですらあるビートで叩き出された「フルドライブ」のスピード感は単にBPMの速さのせいではなかった。テクニックを得たうえで削ぎ落とせるものは落とす、そんな輪郭のくっきりした今の「フルドライブ」が鳴っていたのだ。
また、インディーズ時代の「さくらのうた」とパラレル・ワールドを描く「桜の詩」を続けて演奏したこともレアな展開。またしても甘酸っぱい気持ちになっていると、それをさらに加速させる「羽虫と自販機」という谷口の個人的な心象が多くの共感を集めることになった初期の名曲を披露。歌とギターがユニゾンするAメロが愛らしく、それが助走になって、君を忘れたら楽になれるかもという気持ちと、忘れてしまったらもう歌えないかもしれないというアンビバレントなサビをより切ないものにする。デビュー時のライヴで本当に泣きそうな感情を溢れさせて歌っていた谷口 鮪はもういなかったけれど、作ってきた曲のすべてが言葉以上にバンドにとって財産であり、彼らが共に過ごしてきた時間でしか作れない絆を感じた。でもまぁ、ときどき振り返る自分もいるよね? 音楽はいつでもそのころの気持ちを思い出させてくれる。そしてファンもそこに思いを乗せていくのがよくわかった。
本編ラストは、バンドがドラスティックにいい曲を作った! という思いを抱き、四つ打ちの踊れるロックから、そうした形容を超えてただただいいメロディと、折に触れて何かに感謝したくなるときに思い出す大切な曲になった「シルエット」。この日はセットリストの中でこの楽曲がニュートラルに存在していた。とはいえ、古賀のギター・アレンジや音色には進化が聴き取れたし、それは他のメンバーも同様で、バンドにとってポピュラリティのある曲だからこそ、まだまだ進化していくことが実感できた。そして、ラストは超初期曲「A.oh!!」。物語性の高い曲が続いたあとだからか、フロアは余力を残すまいとしてジャンプし、シンガロング。ちょっと懐かしい......といってもまだ『DOPPEL』から、3年しか経っていない。いや、もう3年という気もする。いずれにしても3公演のためだけのレアなセットリストは相当、練られた内容だった。
アンコールで登場した4人はいつもどおりのグダグダなやりとりでグッズを紹介し、古賀が自分モデルのオール・ブラックのギターを自慢し、"あとはもう顔とか手しか黒くないとこ残ってないのんちゃう?"と谷口や飯田にいじられるという毎度のパターン。
"昔の曲をやらない人たちなんで、こういう機会によって「あー、純やったな」って思うんですけど、最近、それが返ってきたタイミングで、今、バンドが楽しくてしょうがないし、アルバムを作りたくてしょうがない"と、谷口が今のバンドの状態を話すと、フロアからはちょっと安堵も含まれた期待の声と拍手が起こる。リクエストの順位で構成したライヴではないと、途中のMCで話していたが、ラストだけはリクエスト1位の曲をやって終わりにします、と「眠れぬ森の君のため」のタイトルコールをすると、再び悲鳴に近い歓声が上がった。"僕がCDを出したら"というフレーズが登場するこの曲は、夢物語じゃなくてひとつひとつが決意の塊であり、同時にひとつは諦めなければならなかった青春のほろ苦さもたしかにある。曲調は多くの人が彼らに抱くイメージとは違って、ミディアムの心揺さぶるバラードだ。この曲がリクエストの1位だったことは、KANA-BOONの描く真実がいかに愛されているかを象徴していたと思う。ステージから去る4人に向けて、フロアからステージに投げ入れられたタオルには"いつも、ありがとう"というアップリケが。ファンはバンドを映す鏡なのだった。
[Setlist]
1. 1.2. step to you
2. LOL
3. 盛者必衰の理、お断り
4. 見たくないもの
5. レピドシレン
6. 白夜
7. talking
8. MUSiC
9. 街色
10. Wake up
11. 結晶星
12. スノーグローブ
13. フルドライブ
14. さくらのうた
15. 桜の詩
16. 羽虫と自販機
17. シルエット
18. A.oh!!
en1. ないものねだり
en2. 眠れぬ森の君のため
- 1
LIVE INFO
- 2021.04.23
-
Novelbright
TK from 凛として時雨
ReoNa
Tempalay
リーガルリリー
それでも尚、未来に媚びる ※振替公演
SHE'S / Saucy Dog ほか
ビレッジマンズストア / ザ・モアイズユー ほか
THE BAWDIES
KAQRIYOTERROR
EMPiRE
the telephones
海北大輔(LOST IN TIME)
GO TO THE BEDS
ircle
THE BOYS&GIRLS
ドラマストア
Ivy to Fraudulent Game
フラワーカンパニーズ
HERE ※振替公演
- 2021.04.24
-
打首獄門同好会
Novelbright
wacci
リーガルリリー
Bye-Bye-Handの方程式
それでも尚、未来に媚びる ※振替公演
コレサワ
HY ※延期
FIVE NEW OLD
KALMA
Tempalay
四星球
東京スカパラダイスオーケストラ
go!go!vanillas
大原櫻子 ※公演中止
flumpool
向井秀徳×崎山蒼志
大阪☆春夏秋冬
KANA-BOON / THE ORAL CIGARETTES / SUPER BEAVER ほか
fox capture plan ※開催中止
THE BOYS&GIRLS
BiS
the quiet room
KAQRIYOTERROR
フィルフリーク / 育 ほか
海北大輔(LOST IN TIME)
ガガガSP
いきものがかり
Ivy to Fraudulent Game
Dear Chambers
マカロニえんぴつ
秋山黄色
さかいゆう
THE BAWDIES
Halo at 四畳半
Creepy Nuts / RHYMESTER ほか
優利香
NEE
harue
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
- 2021.04.25
-
KALMA
wacci
Maki ※振替公演
コレサワ
HY ※延期
FIVE NEW OLD
東京スカパラダイスオーケストラ ※振替公演
go!go!vanillas
さなり
竹内アンナ
セックスマシーン‼×WOMCADOLE
海北大輔(LOST IN TIME)
ASIAN KUNG-FU GENERATION / [Alexandros] / sumika ほか
the engy
いきものがかり
fox capture plan
BiS
moon drop
EMPiRE
AliA
ReoNa
マカロニえんぴつ
秋山黄色
フィルフリーク / fleufleu ほか
ガガガSP
GRAPEVINE
THE BOYS&GIRLS
PELICAN FANCLUB
Panorama Panama Town
Ryu Matsuyama
the shes gone
Organic Call
- 2021.04.26
-
渋谷すばる ※公演中止
KAKASHI×The Cheserasera×POETASTER
ガガガSP
- 2021.04.27
-
渋谷すばる ※公演中止
大阪☆春夏秋冬
KAKASHI×The Cheserasera×POETASTER
爽
斉藤和義
キュウソネコカミ
岩崎優也(SUNNY CAR WASH)
- 2021.04.28
-
角舘健悟(Yogee New Waves)
TK from 凛として時雨
アメノイロ。
空想と妄想とキミの恋した世界
ミオヤマザキ
斉藤和義
SUPER BEAVER
FINLANDS
WANIMA
- 2021.04.29
-
wacci
Maison book girl
MOROHA
愛はズボーン
アルカラ
海北大輔(LOST IN TIME)
Half time Old
"FREEDOM NAGOYA2021-EXPO-オーディションライブ"
go!go!vanillas
アメノイロ。
the quiet room
アーバンギャルド
マカロニえんぴつ
バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI
Rhythmic Toy World
PARADISES
Maki ※振替公演
SUPER BEAVER
ReoNa
HY ※延期
- 2021.04.30
-
"ARABAKI ROCK FEST.20th×21"
AliA
角舘健悟(Yogee New Waves)
海北大輔(LOST IN TIME)
Ivy to Fraudulent Game
アーバンギャルド
I Don't Like Mondays. ※振替公演
Bye-Bye-Handの方程式
それでも尚、未来に媚びる ※振替公演
大原櫻子
Maki ※振替公演
私立恵比寿中学 ※振替公演
EMPiRE
FROM ME.
- 2021.05.01
-
さなり
Dear Chambers
the quiet room
wacci
flumpool ※振替公演
角舘健悟(Yogee New Waves)
海北大輔(LOST IN TIME)
"ARABAKI ROCK FEST.20th×21"
"GIGANTIC TOWN MEETING 2021"
佐々木亮介(a flood of circle) / 柴田隆浩(忘れらんねえよ)ほか
BüG-TRIPPER
MOROHA
アルカラ
それでも尚、未来に媚びる ※振替公演
Rhythmic Toy World
ドミコ
"VIVA LA ROCK 2021"
LACCO TOWER
Maison book girl
南無阿部陀仏
SUPER BEAVER
- 2021.05.02
-
SIX LOUNGE
アメノイロ。
wacci
海北大輔(LOST IN TIME)
マカロニえんぴつ
"ARABAKI ROCK FEST.20th×21"
cinema staff
ラックライフ
PARADISES
Bye-Bye-Handの方程式
角舘健悟(Yogee New Waves)
NOT WONK
"JAPAN JAM 2021"
"VIVA LA ROCK 2021"
SPECIAL OTHERS ACOUSTIC
LACCO TOWER
CODE OF ZERO ※振替公演
マジカル・パンチライン
GO TO THE BEDS
- 2021.05.03
-
海北大輔(LOST IN TIME)
Dear Chambers
マカロニえんぴつ
アメノイロ。
BiS
MAN WITH A MISSION
Keishi Tanaka / bonobos / DENIMS
KALMA
PARADISES
GO TO THE BEDS
"JAPAN JAM 2021"
"VIVA LA ROCK 2021"
- 2021.05.04
-
FES☆TIVE
海北大輔(LOST IN TIME)
大原櫻子
BiS
FIVE NEW OLD
アメノイロ。
Rhythmic Toy World
Ivy to Fraudulent Game
wacci ※振替公演
FOUR GET ME A NOTS
ZAZEN BOYS × NUMBER GIRL
"JAPAN JAM 2021"
SPECIAL OTHERS ACOUSTIC
空想と妄想とキミの恋した世界
flumpool
"VIVA LA ROCK 2021"
- 2021.05.05
-
FES☆TIVE
海北大輔(LOST IN TIME)
KALMA
BiS
go!go!vanillas
MAN WITH A MISSION
Rhythmic Toy World
豆柴の大群
cinema staff
Maison book girl
wacci ※振替公演
ANABANTFULLS
GOOD BYE APRIL ※振替公演
Mega Shinnosuke
私立恵比寿中学
ぜんぶ君のせいだ。
"JAPAN JAM 2021"
"VIVA LA ROCK 2021"
あいみょん
AliA
flumpool
それでも世界が続くなら
- 2021.05.07
-
KALMA
Nothing's Carved In Stone
SUPER BEAVER
androp ※振替公演
海北大輔(LOST IN TIME)
TRI4TH
Ivy to Fraudulent Game
怒髪天
ドラマチックアラスカ / プッシュプルポット / bokula. ほか
Organic Call×Arakezuri
ミオヤマザキ
TK from 凛として時雨
BIGMAMA
cinema staff
感覚ピエロ
Chara
いきものがかり
Novelbright
Awesome City Club
KAKASHI×The Cheserasera×POETASTER
アーバンギャルド
w.o.d.
- 2021.05.08
-
FES☆TIVE
PARADISES
ガガガSP
北澤ゆうほ(the peggies)
須田景凪 ※振替公演
ドラマストア
キュウソネコカミ
ドラマチックアラスカ / プッシュプルポット / bokula. ほか
竹内アンナ
FOUR GET ME A NOTS
海北大輔(LOST IN TIME)
HY ※延期
怒髪天
TENDOUJI
SHE'S
コレサワ
K:ream
ぜんぶ君のせいだ。
"FREEDOM NAGOYA2021-EXPO-オーディションライブ"
優利香
wacci
尾崎世界観
リーガルリリー
Tempalay
tricot
感覚ピエロ
いきものがかり
sumika
Dear Chambers
アルカラ
それでも尚、未来に媚びる ※振替公演
RELEASE INFO
- 2021.04.23
- 2021.04.25
- 2021.04.26
- 2021.04.27
- 2021.04.28
- 2021.04.29
- 2021.04.30
- 2021.05.01
- 2021.05.02
- 2021.05.05
- 2021.05.07
- 2021.05.09
- 2021.05.12
- 2021.05.14
- 2021.05.19
- 2021.05.21