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INTERVIEW

Japanese

ヒトリエ

2016年03月号掲載

ヒトリエ

Member:wowaka(Vo/Gt) シノダ(Gt/Cho) イガラシ(Ba) ゆーまお(Dr)

Interviewer:沖 さやこ

2015年夏にリリースされた2ndミニ・アルバム『モノクロノ・エントランス』でひとつの転機を迎えたヒトリエ。その後、バンドにはさらに変化が訪れていた。同年11月と今年1月にそれぞれリリースされた『シャッタードール』と『ワンミーツハー』という2枚のシングルを経て彼らが作り上げた2ndフル・アルバム『DEEPER』は、フロントマンwowakaのソングライターとしての歴史、バンドが積み重ねてきた4年の歳月、そして4人の表現欲が迸る。話を訊くべく、半年振りに会った4人はこれまでで最も生き生きとしていてクリーンだった。2016年、ヒトリエはさらに強度を増すに違いない。

-2ndフル・アルバム『DEEPER』、ヒトリエの従来の要素と新しい要素のふたつがしっかりと同居した、バンドの4年間を象徴する作品だと思いました。作品の構想はいつぐらいから浮かんできたのでしょう?

wowaka:『モノクロノ・エントランス』というミニ・アルバムを出したあと、『シャッタードール』と『ワンミーツハー』というシングル2枚と同時進行でアルバムを作ることになって。『DEEPER』は、『モノクロノ・エントランス』から続いた3枚みたいにひとつ大きなモチーフがあって作るのではなく、ヒトリエの状態や音楽的アプローチ、歌っている内容の変化をすべて飲み込んで、今のヒトリエができることを全部やる、という構想でしたね。

-そうだったんですか。『モノクロノ・エントランス』、『シャッタードール』、『ワンミーツハー』とテーマがしっかりしていた作品が続いてたので、てっきりその勢いと流れでできたものだと思っていました。

wowaka:おっ、テーマがあるように感じました? 逆にどう感じました? 何が見えました?

一同:(笑)

wowaka:どう受け取ってもらったのかが気になるんですよ(笑)。具体的なテーマがなく作っていったから。

-私は"対比"を感じました。音楽的アプローチも従来のヒトリエらしいものから新しい要素もあり、ヒトリエの持ち味のひとつでもある"静"と"動"の対比も存在していて、Track.10「MIRROR」は曲中で場面転換があってふたつの顔を持っている。歌詞で言えばTrack.3「ワンミーツハー」は"表"と"裏"の自分の話、Track.1「GO BACK TO VENUSFORT」は多くの登場人物とその中にいる"わたし"の話......ほとんどが人と向き合うことで生まれるコントラストで描かれた世界だなと。

wowaka:なるほど。二面性、鏡の中の自分、自分の中の自分とか、コミュニケーションの渇望とか――僕はそういうことを言葉にして伝えるのが苦手な部分が絶対にあると思うんですよ。だからそれを全部歌詞や音楽にしてアウトプットしている。このバンドと僕のパーソナルな部分とでできることを突き詰めていった結果、このアルバムが生まれているので、コントラストを感じてもらえたのなら1番いいところに気づいてもらえてるのかな......と思いますね。無意識的にいいと思うことを詰め込んだというか。今のヒトリエにできる手段や持っている手札、アプローチで、作品として整合性が取れるものをちゃんと作ることができた実感はあります。

-そうですね。『モノクロノ・エントランス』でも歌詞の変化は如実でしたが、『DEEPER』はさらに深い部分に踏み込んでいるとも思いました。wowakaさんの心境はこの半年間でもだいぶ変わってきているんですね。

wowaka:特に歌詞について、今回ほとんどの曲のこのアルバムの歌詞は音ができ上がったあとに書いたので、今話している最新の自分に1番近い状態が出てるように感じています。その一方でヒトリエというバンドで出てくる音楽的なアプローチを僕が素直に受け入れられるようになった。もともとこのバンドの始まりは僕のやりたいことがあって、そこに対して――言い方は悪いかもしれないけど、演奏者としての彼らの力を借して欲しかった、そういうニュアンスも確実にあったと思うし、でき上がった作品が結果的にそういうニュアンスになっていることも多かったと思うんですよ。でもスタジオで合わせたり、僕の家に来て一緒に作業したり、ライヴをしたり飯食ったり......バンドで長い時間を過ごしていくうちに、演奏やアレンジ、発言ひとつ取っても、4人の空気が揃い始めたなと。「シャッタードール」ができたときにそう感じたんですよね。言わなくてもわかるような空気感とか、メンバーから出てきたアイディアを僕が肯定的に受け止められる状態であったり。そうやって作り上げたトラックに対して歌を乗せるプロセスとか......そういうものがきれいに噛み合い始めたのが去年の下半期。バンドにおいても、僕の心境においても如実な変化がありました。

-『モノクロノ・エントランス』で手に入れたバンドとしての感覚が、さらに確かなものになったと。

wowaka:意識的な部分とそうでない部分とあると思うんですけど、自然にそれができるようになって、曲の作り方ひとつとっても僕の作ったデモからアレンジを全員で作っていくのも話が早いなと、『DEEPER』を作っているときにそれをものすごく感じて。"こういう曲だからこういうことがやりたいんだな"ということをメンバーが空気で察することができるようになっていて、だからこそ、各々が提案してくるものに対して、"じゃあそれをよりかっこいいものにしよう"という拾い方ができるというか。今回は僕がセクションとしてアレンジに関与してない部分もあるんですけど、3人が作ったものに対して僕が素直にすごくいいと思えるものもあったし、新鮮だと思う部分もありましたね。

-wowakaさんがアレンジを任せるなんて。以前では考えられないですね。

wowaka:うん。そう。『WONDER and WONDER』(2014年リリースの1stフル・アルバム)のころだったらそういうやり方は絶対できなかったと思うんですけど、『モノクロノ・エントランス』、『シャッタードール』を経て――『シャッタードール』の「Film/loop」はほとんどシノダさんが提案してくれたアレンジで完成してますし。「ワンミーツハー」のアコースティック・アレンジも彼に投げてるし、そういう流れもありつつ"大丈夫だな、できるな"というのをなんとなく感じて。だから自然と頼めたんですよね。とはいえ、上がってきたものに対する僕のジャッジのハードルが下がっているわけではまったくないですし。クオリティの高いものをみんなが提案できるようになった――って上から目線っぽいけど(笑)。僕もみんなも"ヒトリエ"というものに寄ってきてるんだと思います。

-wowakaさんが関与していないのは例えばどこですか?

wowaka:「MIRROR」の曲中で曲調が大きく展開する部分はそうですね。これは淡々としたミドル・テンポで終わるつもりだったんですけど、3人にアレンジを投げたらあのセクションが増えてた(笑)。

シノダ:そのときは、彼(wowaka)がひとりで家で曲作りをしていて、俺ら3人が上がってる曲のフル尺のアレンジを考えるという分担作業をしてる時期で。「MIRROR」はこのままじゃつまんねえからブッ込んでやろうと思って(笑)。ゆーまおが叩いたビートが良かったから"ガラッと曲を変えよう"というアイディアが浮かんでバーッと作って戻して。やったあとに"ちょっとこれブッ込みすぎたよね~......"って(笑)。

イガラシ:スタジオで作ってるときはすごく楽しかったんだけど、データを投げるという行為に及んだときには"さすがにね~。やりすぎたよね~......"って。

ゆーまお:そしたらwowakaから"めっちゃいいと思います"という返事が来て"あっ、大丈夫なんだ!! 大丈夫だー!!"って(笑)。"やってないことをやってみよう"という気持ちは話さずとも3人に共通してあったので、そこに全力で取り組みました。

wowaka:あと「後天症のバックビート」(Track.9)は、僕のギター・フレーズに対してシノダが"今やっているそれじゃなくて、こういうことをやってみてはどうだ"と言ってきて......"えっ、俺がやってるこれの方がいいじゃん"と思ってすげえムカついて(笑)。でもいざやってみて、そこにメロディを乗せたときに"あ、面白そうだな"とちょっとずつ思ってきて。新しい、楽しい、新鮮だって。

シノダ:だから......"あ、これ結構ブッ込めるな"って(笑)。提案するのが楽しくなっちゃって。スタジオで"こういうふうにしてみたらどうっすか?"とばんばん言ってたんで、すげえムカつかせてたんだろうな......(※横にいるwowakaをちらっと見る)。

wowaka:そうだね~。ムカついてたね(笑)!

一同:はははは!