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INTERVIEW

Japanese

Mrs. GREEN APPLE

2022年07月号掲載

Mrs. GREEN APPLE

Member:大森 元貴(Vo/Gt) 若井 滉斗(Gt) 藤澤 涼架(Key)

Interviewer:石角 友香

-そして「ブルーアンビエンス(feat. asmi)」ですが、やっぱブルーなんだって思いましたね。

大森:ははは! 面白い、そういうブルー。なるほど。

-子供じゃないけど、新しい大人になるっていうか、そういう印象を持ちました。

大森:恋愛リアリティ・ショー(ABEMA"今日、好きになりました。")のタイアップなので、最初すごくメロウな楽曲というか、刺さるような感じでって打ち合わせをしたんですけど。BPM 213という曲を書きまして(笑)。なんとかこれで行きたいっていう話をしてですね。なぜかというと、みんな持ってる焦燥感とか、10代のときのヒリヒリとワクワクみたいなものってめちゃめちゃ情緒が不安定だし、でもそれを楽曲に落とし込むってなったら、どうしてもいい曲というよりもヤバい曲みたいなほうがきっといいんだろうなって思って。かなりこれは......意外とこだわって作ったかもしれない。勢い任せのように見えつつも緻密なことがたくさん入ってたりもするので。asmiちゃんっていうシンガーを迎えて、彼女の声がまたすごいいい意味で気だるそうなんですよね。抜け感がちゃんとあって、それが僕すごく好きで。一歩ずつ大人になってみるっていうのも気だるそうに歌ってくれるわけで、そのぐらいでいいかなと。すごくリアルだよなと思って。僕も刺激になったし。

-気だるそうなんだけど、昨今の譜割がややこしかったり、高速で歌ったりする曲のニュアンスもあり。

大森:なんか最近の曲っぽいよね......ははは! いやでもちょっと意識して作ったし、男女でこれ歌えたらきっとすごいんだろうなと思うし。餅つきソングじゃん? どっちかがリズムを崩したら終わりっていうか、相手を巻き込んでしまうような。BPM213でほぼほぼワン・フレーズごとで入れ替わってる曲なんで、レコーディングはすごく燃えましたね。

-そして「君を知らない」、これこそ音数が多くない淡々とした感じでありながら強い曲で。

大森:これなんかジャンルむずいよね? ロックで、バラードなんだけど、昨今のデスクトップ・ミュージックっぽいし、Z世代っぽい音像なんだけど、急に芋くさいロック・サウンドがあったり。

藤澤:生々しさもあるし。

大森:うん。レコーディングすごく面白かったよね。

藤澤:面白かった。楽器陣はちょっと苦労した部分もあったけど。歌がすごく感情こめて歌うものだったので、楽器は1回ちゃんときれいにというか、歌を支えるみたいな演奏をしようって、みんなで何回もスタジオ入ってやったんですけど、元貴にスタジオ来てもらったら"全然違う"って話をされて。

大森:ははは!

若井:"こうじゃないよね、「君を知らない」は"と。

大森:そんなこと考えるんじゃない、と。これこそきれいな引き算になってるようで、アレンジがもう引き算されているものなので。演奏陣がマインドで引き算をすることは許さないって話をしたんですよね。もうきれいに整ってるんだから、声と演奏で勝負ぐらいのヒリヒリ具合っていうか、バチバチしてなきゃいけないから。マインドで引き算をしないでほしいって話はしましたね。ただ久々にアンサンブルとしてのディスカッションみたいなものがスタジオであったので、すごく面白かったです。

若井:この曲はスタジオで歌詞をみんな読み合ったりして。

大森:"俺の恋愛観はよう"みたいな話をして(笑)。

若井:"俺はここが刺さるんだ"みたいな。そこから一気に良くなった。

-歌詞の構成力も素晴らしくて、ラヴ・ソングとして考えても核心を突いていると思います。

大森:ラヴ・ソングっていうのは間違いないんですけど、異性間とかじゃなくて別にいいじゃないですか。みんなの持ってる愛情の中に、根幹にあるちょっとした汚さだったりとか、そういう孕んでいるものが歌われていると思うので、絶対みんなちょっとグサッとくるとこあるんじゃないかなと思いますけどね、この曲をちゃんと歌詞も読んで聴いてもらえたら。

-新しいです。そして「延々」。"延々"のことを最近、"永遠"って書くじゃないですか。意味は"延々"っていうことを書きたいんだろうなと思うんですけど、みんな勘違いしてるっていう。

大森:口語とぐちゃぐちゃになってる、はいはい。

-そんなことが思い出される部分がありました。これも非常にバンド・サウンドで。

大森:バンド・サウンドですね。「インフェルノ」(2019年7月リリース)って楽曲があって、それが"炎炎ノ消防隊"っていうアニメの初期のオープニングで。結構それがきっかけで海外の方に知ってもらえたりとかあったんですけど、またそのタッグを組めるということで書き下ろしたんです。「インフェルノ」で"永遠は無い"って歌っているんですけど、僕らも編成が変わったり、いろんな場面で"あ、永遠ってマジでないんだ"っていうところのトドメみたいなものを食らいまして。そこでいろんなものを考え直すきっかけになったりとか、前を向くことのエネルギー消耗がどれだけ大きいのかっていうのが身に染みてわかったりしたし。そのなかで「延々」は"永遠"ではなく"延々"を歌ってみようみたいな。で、"炎炎ノ消防隊"だしみたいなところで、この曲ができてるって感じですかね。

-非常にいいバンド・サウンドですね。

大森:これは僕と若井がずっと16分で刻んでます。このBPMで16分を刻むっていう結構あり得ないアレンジを実はしていたりとか、大サビ前に変拍子があったりとか、フックになるところはたくさんあったりするのかなと。

-すごく削ぎ落とされている感じはしましたね。

大森:これ全部詰め込んでやったらただ汚くなっちゃう、騒音になっちゃうんで。上品な無骨さみたいなのはたしかに意識したかもしれないです。

若井:歌詞的にも「インフェルノ」を彷彿とさせるような部分が出てきてるっていうのが面白いところだと思います。

-「インフェルノ」はもっと圧があった感じですね。

大森:そうかも。"もっとなんかやっちゃえ!"って感じだったかも。

-今回はそれより青い炎的な印象です。

大森:ほんとそうですね、嬉しい。まさにそういうことを考えてました。赤い炎はもうあっちでやったんで、緑とか青とか、そんなイメージです。

-そして「Part of me」はタイトルからしてぐっときちゃうんですよ。

大森:ははは! "私の一部"ですからね。

-最後の最後に藤澤さん大活躍の楽曲でもあり。

藤澤:そうですね。

-ずっとピアノと歌みたいな感じで進んでいくのかなって一瞬思わせるんですが。

大森:『Attitude』(2019年10月リリース)っていうアルバムに入ってた「Circle」って楽曲と同じ編成で行くのかと思いきやみたいな。うん、たしかに。

-大きいバラードで核心めいたことを歌われていますね。

大森:これはだから、未だになんで『Unity』に入ってんのかわかんないもんね? このタイミングでこれだけ外へのアウトプットをいろんなところで――それは髪色だったりとか、メイクだったりとか、ヴィジュアルの面でフェーズ1とフェーズ2でこんなに区別をつけているようなのに、急にコアな部分というか、外にアウトプットしているぶん、より内省的になっている歌詞みたいな、やっぱそういうのを書いてしまう自分に対しての気づきみたいなものもありました。やっぱり自分はこういうことでバランス取っていくしかないんだろうなみたいなのは自分でも思うし。この曲は今作ではすごい生みの苦しみでしたね。レコーディング・スケジュールを初めて飛ばしたんですよ。ミセス活動史上初リスケみたいな。それは僕、結構鮮度を大事にしてて。それは出てきたメロディ、歌詞の意味はみんなが作っていくものだし、一緒に作っていくものだという想いのもとに作っていたんだけど、今回は鮮度よりも僕が伝えたい純度を大事にしたいというか。そんな気持ちで初めに臨んじゃったんですよね。で、頭の一節の歌詞が出てきた瞬間に、すごい曲を自分は今書こうとしてるんだなぁと思って。歌詞とかメロディとか構成とかを熟考していたら、時間が足りなくなるので初めてレコーディング飛ばしーの、ふたりはそんなこと起こったことないからプレッシャーを感じーのみたいな(笑)、結構ヒリヒリしたなかで進んでいったよね。

藤澤:心配しつつ。

-歌詞ができないとかじゃなくて構成が完成しなかった?

大森:もう全部ですね。主には歌詞なんですけど、全部ですね。本当に伝えたいことってこれなのか? みたいな、圧倒的に伝えたいものがあるのに出てきてる言葉は果たしてベストなのか、ベターなのではないのかと一度自分を疑ってしまうと一生悩んじゃうみたいな。で、こういうサビの言葉の締めくくり方って、僕やったことないというか。ミセスって悲嘆しつつも明日への希望を歌うことをルールにしてたみたいなところがあるんだけど、一切希望がないので。本当にひとりの世界でずっと淡々とちょっと寂しく進んでいく楽曲だから、そんな自分とずっと部屋で向き合っていると、ダメになっちゃうなと思って、会社に来て書くっていう初めてのことをやったりとか(笑)。誰かに一緒にいてもらわないと書けないところまでいって。そんな僕を心配して涼ちゃんが差し入れを急にしてきたりとかっていう、そんな変な関係値の中でこの曲が進んでいきました(笑)。

藤澤:差し入れしに来たんですけどすごく真剣そうだったのにすぐ帰りました。

大森:ははは!

藤澤:なんか一緒にいちゃダメだと。

-難しいとこですね。でも逆に大森さんとしては他者の視線が必要なところまで行っていた?

大森:そうだし、誰かがいることによって空気がフラットになるし、自分のバランスが取れるじゃないですか。そこまで行きましたね。ひとりで書いてたらわかんない、もうダメになったかもしれないですねっていうところまで行った楽曲なんで、すごいの書いちゃったなみたいな感じです。全然"いいバラードだよ"っていうぐらいで聴いてもらって構わないですけど、裏では実はそのぐらいのエネルギーがあった感じですかね。

-そしてミニ・アルバムのタイトルが"Unity"と。この言葉の意味合いって結合とかそういう言葉ですね。

大森:統一とか。このジャケットもそうなんですけど、異なるものが1個のオブジェのようでオブジェになり切ってない様とか、結局バンドも一緒だなとか。バンドが人と連なるってこういうことだなと思うし。でも、それをあえて"Unity"と呼ぶっていうのがこの作品だったんですよね。メジャー・デビュー・ミニ・アルバムが『Variety』(2015年リリース)だったり"ty"同士で、形容詞的なところも含めて、"Variety"は"V"だけど"Unity"は"U"になって、ちょっと丸くなってたりとか。そういう意味で僕はデビュー盤とも比べてしまうというか、どうしてもそこを意識するようなミニ・アルバムだし。フェーズ1一発目の『Variety』と、フェーズ2一発目の『Unity』みたいな、ちょっと対になってる気はしてます。

-ミニ・アルバムのリリース日に現状、1日限りのライヴ([Mrs. GREEN APPLE ARENA SHOW "Utopia"])が実施されますね。

大森:僕らもびっくりしました、それ聞いて。"マジ?"みたいな。"そんなんありなの?"って。

-提案されたんですか?

大森:提案されましたね。7月8日、すごい日にしたいよねって話をずっとしてて。

藤澤:デビュー日だから。

大森:リリースとライヴ日が被っていてっていうのって、なかなか聞いたことがなかったんで"そうなんだ"って思いながら、まぁでもこの日だよねっていう。単純にブランクがあるので、そこはすごく不安ですけどね。

-みんなきっといろんな想像をはたらかせながら会場に足を運ぶんでしょうね。

大森:ねぇ。僕らも不安なのと同時にやっぱりファンのみんなもすごく不安感が絶対あると思うので。結局このアルバムで伝えたいことと一緒で、またこれからもずっとそうやって伝えていくんだろうけど、変わりたいところと、変わってしまったところと変わらなきゃいけないところと、変わってないところと変われないところが、今回ライヴでもたくさん見られるんじゃないかなとか、そういうふうに伝わるといいなと僕は思ってます。