Japanese
神はサイコロを振らない × キタニタツヤ
神はサイコロを振らない:柳田 周作(Vo) 吉田 喜一(Gt) 桐木 岳貢(Ba) 黒川 亮介(Dr)
キタニタツヤ
インタビュアー:秦 理絵
-要するに、メンバー4人の個性が合わされば、それはもう神サイ以外には鳴らせない唯一無二の表現になっているんだっていう。
柳田:そっかぁ......。
-今日は柳田さんに"らしさあるよ"って納得させる会みたいになってる(笑)。
一同:あはははは!
黒川:それで言うと、自分は神サイらしさを出そうとか、微塵も思ってないぐらいの感覚だったんですよ、今回は。吸収したいなっていうのが第一にあって。自分を出そうじゃなくて、曲に合ってるかを考えてました。普段まったくやらないんですけど、ギターとかもコピーしたりして。
キタニ:へぇ。
黒川:転調とか3、4回ぐらいしてて、"なんだこれは!?"って。
キタニ:たしかにコードがね、転調するときにややこしくなるから。
黒川:こういうファンク系の曲はまったく通ってなかったので、それこそキタニタツヤの曲をコピーしたり。
-そこまでやったんですか。
キタニ:勉強が熱心すぎますよね(笑)。
-今回のコラボは吉田さんの発信だったそうですね。
吉田:きっかけはそうですね。まずは柳田と一緒に1回コンタクトをとって。すぐに方向性のミーティングをしたので、さすがキタニ先生のテンポ感だなっていう感じで。
柳田:何をやっても早いんですよ。デモも2秒であがってくる(笑)。しかも、2曲。どっちもクオリティが高いし。"どっちも出そうよ"って言いたいぐらい。そのあと、さらに1曲あげてきて。その3パターンのどれでいこうかっていう。
吉田:贅沢な迷いをしたよな。
キタニ:デモは、俺が神サイをプロデュースするイメージで膨らませたものですね。「愛のけだもの」のもとになったデモは、"神サイサマー・ヴァイブ"というテーマで作ったものだったんです。あとはヤンキーっぽいやつと、もうちょっと渋いヒップホップ的なトラックの上で、John Mayerが「Neon」のリフを弾いてるみたいなやつで。それぞれ、これも面白いだろ、これも面白いだろって思い浮かんだ感じでした。それも神サイ自体が面白い存在だからなんですよね。
-神サイ側から"こういう曲がいい"っていうものは伝えていたんですか?
柳田:リファレンスはありました。
キタニ:3人で軽く話したときは、キタニのファンクっぽいノリを神サイではやったことがないから、"うちのリズム隊も成長させてやりてぇ"みたいなことを言ってて。あぁ、こいつらいいバンドだなと思った。だったら神サイのボキャブラリーの中にないものを放り込んでやろうっていうのはあって。そこから、始まったんですよね。
-結果的に「愛のけだもの」のデモを選んだ決め手はなんだったんですか?
柳田:イントロに恋をしてしまったというか。ファンクを通ってない人でも好きじゃんっていう曲なんですよね。まずリフがキャッチーだし、爽やかさがあるし。その爽やかな曲にエロいテーマを盛り込んだら、すごいのができるんじゃないかって。
吉田:キタニのグルーヴが色濃く出てたので、完成したかたちのヴィジョンも浮かびやすかったのかなと思います。あとはライヴでやりたいっていうのもあったよね。
柳田:そう、ライヴ絶対盛り上がる。これ(※手拍子)めっちゃいいよね。天才だよ。
桐木:最初に聴いたとき、俺、それが一番耳に残ったもん。
キタニ:へぇー!
吉田:ああいうのって本能的に入れてるの?
キタニ:うん。
柳田:こういう、無意識でキュンとくるポイントをやれちゃう人なんですよ。
-基本的にグルーヴはファンキーでクールなんだけど、手拍子が入った瞬間に一気にポップになるんですよね。そこに、いい意味の違和感がある。
柳田:この曲ってメロディがなかったら爽やかなファンクなんですよ。でも、メロディと詞の世界であそこまで艶めかしさを出してる。それもまたおもろい違和感なんです。
キタニ:オケだけだったら、サマー・ヴァイブだからね。夏の海でダイナマイト! っていう。
吉田:よく考えると、サマー・ヴァイブって何?
キタニ:全然わかんない(笑)。山下達郎さんの、平たい車で海沿いを走るみたいな。
柳田:そうそう! それ。
-資料を読ませていただくと、"ファミレスで初顔合わせをして、二度目に全裸でグルーヴを高め合う"って書いてあって。全裸でグルーヴって?
キタニ:全裸になったのはお前(柳田)だけだから!
一同:あははは!
キタニ:俺は脱いでない。最初はファミレスで企画概要を聞いて、なんで神サイがコラボをしたいのかとか、俺の曲のどういうのが好き? って話をしたんです。そこから、俺も神サイとやってみたいことがあるから、デモを作るよって言って。それを持って行って、柳田の家でより詳しい話をしていこうっていう。
-ごめんなさい、ちょっと話の腰を折っちゃうんですけど、"俺の曲でどういうのが好き?"て聞かれて、なんて答えたんですか?
吉田:「人間みたいね」(2020年リリースのアルバム『DEMAGOG』収録曲)はキタニのおいしい部分が入ってるね、みたいな話をしたね。
柳田:で、俺らの「遺言状」(2020年リリースの1stデジタルEP『文化的特異点』収録)っていう曲が、唯一ファンク寄りの楽曲だっていう話もして。
-なるほど。っていうのがあって、柳田さんの家に行って?
キタニ:より詳しくどういう音楽が好きかを披露し合う会みたいなのをやったんです。YouTubeを交互で見ながら。そしたら楽しくなっちゃって。お酒を飲んでたとか、そういうのじゃないのに、こいつ(柳田)が気づいたら下履いてなかった。
一同:だははははっ!
-柳田さんはいつか全裸で"男祭り"をしたい人だからね(笑)。
柳田:(キタニに)"男祭り"ってしたくない?
キタニ:うん。対バン呼んでね、それ。
柳田:ええで、ええで!
-いきなり制作に入るんじゃなくて、そういう時間を持つことはやはり大事でしたか?
吉田:大事ですねぇ。
柳田:曲を作るより、そっちでグルーヴを高めておいたほうが。
キタニ:そのときに柳田がどういう恋愛遍歴を辿っているかを聞いたのが、歌詞を書くインスピレーションになってるし、どういう音楽を聴いて育ってきたか、今どういうものが好きなのかもそうだし。大事なコミュニケーションだったよね。一緒に遊ぶって大事よね。
-コラボレーションの意味ってそういうところなんでしょうね。リファレンスがあって、そこにまっすぐ向かうだけじゃなくて、それ以前のバックボーンとか恋愛観、人生哲学も含めて、人間まるごとでぶつかり合うというか。
柳田:うん。今回そういうことをやってすげぇデカかったのは、普通に音楽って楽しいもんやなっていうのを取り戻せたことなんですよね。別に普段が楽しくないわけじゃないですよ。でも、今はこれで食っていくって決めたし、それは楽しいだけじゃやっていけないじゃないですか。こらえなきゃいけないもの、背負わなきゃいけないものが日に日に大っきくなってて。そのなかで誰のために音楽をやってるのかもわかんなくなる瞬間があるんです。でももとを辿っていくと楽しくてとか、モテたくてとか、そういうところから楽器を買って、ギターが4人のバンドを組んだりもして。
キタニ:ははは(笑)、ベースひとりもいないんや。
柳田:きったねぇスタジオに集まって。当時高校生ですけど、ただカバーするだけで、マジで楽しかったんです。そういうのを全部思い出させてくれたっていうか。キタニが俺のケツを叩きながらビートを作って、吉田がギターを弾いたりしたんですよ。
吉田:あはははは!
柳田:すべての根本はそれの気がする。おもろいから音楽をやるし、楽しいから音楽をやるし。っていうのを全部思い出させてくれた。
キタニ:たしかにそうだね。邪念がないというか。大人になって、計算高くなったことを一度忘れて、シンプルに好きな音を並べながら制作が進んでいったから。
-本当にいい時間だったんですね。
吉田:俺も今回フレーズを作るのが全然苦じゃなかったんですよ。お互いアイディアを出し合って、みたいなのが楽しかったから。
キタニ:ギター・ソロはね、最初のカッティングっぽいところから、最後にテクくなって終わるっていうアイディア自体はあったから、これをどうやって収束させる? みたいな感じだったよね。
吉田:コードが転調してて難しいから、どうしようもないところはキタニに丸投げ。助けて! みたいな(笑)。
キタニ:各メンバーに"こういうふうにアレンジしてください"って、アレンジ指示書のお手紙を出したんですよ。で、ギターに関しては、"ギター・ソロの終わりのところがややこしいので、困ったら電話してください"って書いてたので。
吉田:すぐ甘えに行きました(笑)。最終的にうまくベースに繋げられたのは楽曲として良かったのかなと思ってます。
-アレンジの指示書っていうのは? キタニさんが全員に手紙を書いたんですか?
桐木:そう。あれはすごく良かったです。
黒川:嬉しかったよね。
-どういうことが書いてるんですか?
桐木:"自由にしていいよ"とか。
キタニ:えっと、ガクさんへは......(※スマホを見ながら)"リズムのアクセントとコードが合っていればいいので、一度わりと自由にフレージングしていただいて、そのあと都度スタジオで修正していくという感じで、進めさせていただきたいです......"
一同:(笑)
キタニ:"ギター・ソロのあとのDメロのベース・ソロのフレーズは、僕が作った仮のものが入っていますが、全然違うものをご提案していただいても大丈夫です"。バカ丁寧(笑)!
桐木:律儀な方だなと思いましたね。
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