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Japanese

神はサイコロを振らない × キタニタツヤ

 

神はサイコロを振らない × キタニタツヤ

メロディ、歌詞、トラック、アレンジの展開、各楽器のフレーズ。そのすべてにおいてコラボレーションならでの化学反応が美しく結晶化されたのが、「愛のけだもの」という楽曲だ。コラボレーション第1弾となった前作「初恋」(n-buna(ヨルシカ)とアユニ・D(BiSH/PEDRO)が参加)に続き、神はサイコロを振らないが、シンガー・ソングライターのキタニタツヤと共にコラボレーションし完成させた、ファンキーで艶やかなポップ・ナンバー。同世代同士の気の置けない関係性だからこその濃密な制作過程を通じて、神サイ(神はサイコロを振らない)は音楽を作り始めた頃のピュアな感情を思い出したという。国内でも広がりを見せるフィーチャリングのムーヴメントに目配せをしつつ、他の誰でもない神サイとキタニだからこそ音楽の本質に辿り着けた今作について、座談会で大いに語り合ってもらった。

神はサイコロを振らない:柳田 周作(Vo) 吉田 喜一(Gt) 桐木 岳貢(Ba) 黒川 亮介(Dr)
キタニタツヤ
インタビュアー:秦 理絵

-Skream!では、キタニさんの『聖者の行進』のインタビューをやったんですけど。そのときに、"周りにすごいヴォーカリストが多い"っていう話の流れで、キタニさんが柳田さんの名前を挙げてたんですよ。

キタニ:そう、ヨルシカのsuisさんとユアネスの黒ちゃん(黒川侑司)と神サイの柳田。みんな歌が上手いから、"俺も上手くなりたい"って思い始めた、みたいな話をさせてもらったんですよね。

吉田:(※柳田に対して)ニヤけてる(笑)。

-自分のいないところで褒められてるのって、どうですか?

柳田:俺、上手くないっすよ(笑)。

キタニ:いやいや。今回の「愛のけだもの」はヴォーカルRECがすごく早かったですからね。僕、一応、ディレクションをやったんですよ。"もうちょっとこういうふうに歌って"とかやらせてもらったけど、そんなに仕事もせず。"おぉ、いいね! 採用"、"あぁ、歌上手いね、いいわぁ"って感じだったから、すげぇ楽だった。俺もこれだけ歌えたらなって思ったんですよね。すごい時間がかかっちゃうので。

柳田:でも、かかるときはめっちゃかかるよ。8時間とか歌ってるときもある。

キタニ:マジで!?

-過去の神サイのインタビューでは、ヴォーカル録りに時間がかかるっていう話をしてもらったこともありますよね。

柳田:自分で納得いかない箇所がひとつでもあると、止まらなくなるんです。

-でも今回はキタニさんがディレクションに入ってくれて、"いいねぇいいねぇ"って言ってくれるから、スムーズに決められた感じ?

柳田:そう。すごく褒めてくれるんです。

キタニ:"柳田先生、素敵です!"って(笑)。

柳田:誰かがそういうふうに言ってくれるのはデカいですよね。俺はキタニをうらやましいなと思いますよ。根本的に種類が違う気がするんです。

-ふたりのヴォーカルの違いについては、どんなふうに捉えていますか?

柳田:キタニって歌がリズムになってるから、歌を聴くだけでノれるんですよ。けど、俺の歌ってノれるタイプの歌ではないんです。

-どちらかと言うと、メロディアスなヴォーカルですよね。

柳田:究極を言うと、演歌寄り。

キタニ:で、俺は楽器っぽい。

柳田:そう、楽器。それはそれぞれの個性だから、ヴォーカルってめっちゃおもろいなって思いました。なんでもありじゃないですか。全部が正解になるから。

キタニ:逆に自分はそういう、楽器っぽくない、演歌っぽいのがうらやましいなと思うけどね。本来歌ってそっちだから。そういうものに憧れる。

柳田:結局ないものねだりだよね、それ。

キタニ:隣の芝生なんだよね。

-他のメンバーは、ふたりのヴォーカリストの違いはどう見ていましたか?

黒川:ドラムの位置関係で言うと、僕は柳田のヴォーカルを引っ張っていかないとっていう気持ちなんですよ。でもキタニ君は逆に引っ張ってくれてるんです。難しいことを考えなくても、キタニ君のグルーヴ感に自分がひょんって乗ってったら、その曲のグルーヴ感が良くなったというか。そこは面白いなと思いましたね。

桐木:自分はミックスのときに初めてそこに気がつきました。声の成分というか、質感が違うんだって。それは発見でした。

キタニ:柳田の柔らかみのある歌っていうのが神サイの味だからね。俺はわりとザラッとしてたり、カッとしてる。

吉田:キタニの最近の楽曲って、上モノがきれいにハマっているような気がするんですよ。日本人って発音的にも中低音に寄りがちっていうのがあって。それが歌謡曲だと思うんですけど。キタニはわりと高いところにいるから、上モノがなくても声だけで成立するっていうのを、マスタリングのエンジニアさんと話してたんです。

キタニ:倍音が多いからね。

吉田:中低音の歌だと、必然的に高音にパットとか、シンセとかを足しちゃうらしいんですよね。それで上がゴチャゴチャして、リズムが見えづらくなっちゃうことがある。そういう意味で、キタニは外タレみたいな感じなのかなって。

キタニ:外タレは声に倍音成分が多いから。下のほうだけ楽器を入れておけば、大丈夫だったりするからね。

神サイ一同:へぇ。

-キタニさんは、それを自覚してやってるんですか?

キタニ:まぁ、そうですね。

-いきなりヴォーカルの話から始まったんですけど、それ以外でお互いの音楽性、存在については、どんなふうに分析していますか?

柳田:キタニは圧倒的じゃないですかね。詞曲だけじゃなくて、編曲まで全部自分でやっていて。あそこまでのクオリティのものを作ってる。7月にO-EAST(渋谷TSUTAYA O-EAST)のライヴ([キタニタツヤ One man tour "BOUNDARIES"])も観に行かせてもらったんですけど。すげぇかっこいいんですよ。こんな細ぇ足を大開脚して歌ってて。かっこ良くないわけがない。

キタニ:はははは! 何、その表現。

柳田:あぁ、こいつモテるだろうなって。色気もあるし、艶めかしいっていうか。

キタニ:それこそ俺も、(サポート)ドラムのマット君と神サイのZepp(Zepp Tokyo)公演("神はサイコロを振らない Live Tour 2021「エーテルの正体」")に行ってて。そのあと、帰り道にふたりで"俺らもライヴ頑張らんといかんね"って。めっちゃ熱い話をしてたんです。マット君が熱い男だから。"もっと練習しよ"って言ってたし。

-お互いにライヴのパフォーマンスに刺激を受けていると。

柳田:且つ、コンポーザーとしてもすごいから、非の打ちどころがない。

黒川:曲を作るときに思ったことで言うと、普段柳田が作るデモは、ドラマーじゃないので、手順的に難しかったりすることがあるんですよ。でも、キタニ君はそういうのがなくて。デモの段階から完成されてましたね。

キタニ:(ドラムの)フィルとかって手癖になっちゃうんですよ。自分の好きなものになっちゃう。だから(黒川には)ガンガン変えてほしいって伝えました。「愛のけだもの」で印象的だったのが2サビ前のブレイクのところ。

-あぁ、あそこの一連の流れはかっこいいですね。ギター・ソロ、Dメロ、ベース・ソロからブレイクしてドラムが派手に繋いでいくような流れになっていて。

キタニ:あそこは何パターンも打ち込みのデータを、MIDIっていう楽譜みたいなもので送ってくれて。その中から選んだんです。要はトラックメイカーっぽいんですよね。実際に叩いて聞かせるわっていうバンドマン的なことじゃなくて。そういうことができるのは、まずリテラシーの高さを感じるし、きちんとしてるなと。こっちとしてもすごく助かる。そこに自分の手癖では出ないフィルが散らばってたから。あれは良かった。

黒川:でも、手癖でやらないから、自分で叩けないことがあるんですよ。めちゃめちゃ練習しないといけない。

キタニ:そういうチャレンジをしてるのも嬉しいですね。自分の力の範囲外の部分で頑張って作るっていうのは。

柳田:今回俺、ちょっと思ったのは、神サイらしさってなんなんだろう? って。

キタニ:あ、それは俺もコラボして思った。自分らしさってなんだろう? ってあるよね。

-その話は詳しく聞きたいです。コラボだからこそ突きつけられる"らしさ"問題ってあるんじゃないかなと思うんですよ。

柳田:さっきも亮介がパターンを変えたフィルを入れるって言ってたじゃないですか。でも、それって自分の手癖じゃないんですよね。俺は、キタニが作る曲ってなんとなくキタニだってわかるんですけど、神サイって、ある種制限を設けてないというか。なんでもやる精神でいろいろ取り込みながら楽曲を作っていってるなかで、例えば、イントロがバッて来た瞬間に、"神サイだ!"っていう曲ってあるかな? と思うんです。

キタニ:でも、柳田が考えるギター・リフって柳田っぽくない?

吉田:うん。柳田っぽくもあるし、柳田が思ってるよりも、メロディにクセがあると思うよ。こないだ、アイビーのノブさん(Ivy to Fraudulent Gameの寺口宣明/Gt/Vo)が、"柳田に似たことをやってるやつがいるよ"って言ってたじゃん。

柳田:全然わからんかった。

吉田:それさ、(柳田は)ピンときてなかったけど、俺は"あ、本当に柳田の譜割の仕方だ"って思った。結構あるよ。あるある。

柳田:俺の歌って、そのへんの高校生みたいな声だなと思うんです。

キタニ:自信なさすぎでしょ(笑)。お前が歌えば、なんでも神サイになるよ。「愛のけだもの」ってサビは僕が作ったんですけど、Aメロ、Bメロは完全に(柳田に)投げてて。仮歌が送られてきたのを聴いて、めっちゃ神サイになったわって感じたんです。

-神サイの楽曲はジャンルの制限がないぶん、柳田さんはどんな楽曲でも歌いこなせる表現力、メロディの幅広さ、歌声を持ってるってことでしょうしね。

柳田:そうなると、俺、どこで勝負したらいいんやろう? みたいなことを考えちゃうんですよね。俺の良さってどこなん?

一同:(笑)

キタニ:何ウジウジしてるの(笑)? 僕が思ったのは、今回スタジオで音を作るとき、ギターとベースはふたりに任せちゃったんですよ。ドラムはテックさんと(黒川と)3人で話し合ったんですけど。そこで無意識に選び取るものが個性だなって。よぴ(吉田)がどういうギターの音を作るかとか、ガクさん(桐木)がどういうベースを弾くか。特にガクさんのベースの音なんて、当日までなんのアンプを使うのかも、竿は何を使うのかもわからなくて。"へぇ、いい竿っすね。頑張ってください"みたいな感じで、丸投げなんですよ。普段だったら、俺ベースの音とか、すごくこだわるんですけど。

-キタニさんはもともとベーシストですからね。

桐木:たしかに。

キタニ:ベースとドラムは一番時間がかかるんですけど、今回は全部任せたんです。"あ、そういう音を選びとるんだな"っていうところ。その積み重ねで神サイの音になってるから。そういうところの集合体がバンドの音だと思うんですよね。