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LIVE REPORT

Japanese

Permanent vol.4

Skream! マガジン 2018年01月号掲載

2017.11.17 @下北沢LIVEHOLIC

Writer 沖 さやこ

Skream!編集部イチ押しの若手アーティストをピックアップしたライヴ・イベント"Permanent"。4回目はLINE wanna be Anchorsのレコ発"点と点ツアー"も兼ねての開催となった。

トップバッターは広島出身のゆるふわリムーブ。ドラマチックな楽曲アレンジも特徴的な彼らは、ライヴでも楽曲の良さやフレージングのセンスが最大の持ち味になっていた。網谷直樹(Gt/Vo)が"心から愛することができた人との別れの歌"と前置きをしたミディアム・テンポの「海辺にて」は、メンバー全員が丁寧に音を出す。メイン・ギターのアルペジオと網谷のファルセットは切なく、そして温かく響いた。「分岐点は蒼」では瑞々しさ、新曲「ブルースター」ではダンス要素と、楽曲の振れ幅の広さで空間を鮮やかに彩り、ラストの「夢の記憶」は自由度の高いパフォーマンスも影響してか、生き生きと力強く音を届ける。今後のさらなる成長を期待させるステージだった。

続いての登場は福岡出身のユアネス。雨音と女子の朗読「雨の通り道」から「虹の形」に繋いでライヴは幕を開ける。クリーン・ギターのリフレイン、変拍子、強めの低音、素朴で繊細なヴォーカルが渦巻き、8分の6拍子の「あの子が横に座る」は緩急を使ったサウンドスケープで魅了した。黒川侑司(Gt/Vo)がほんわかとした口調で"次は僕の大好きな曲をやります。自分のバンドの曲に優劣をつけちゃいけないと思うんだけど、僕は一番好きなんです(笑)"と言い「凩」を歌い出す。あえて宣言するだけあり、隅々にまで神経が通った気合溢れるヴォーカルを聴かせた。そのあとは壮大なバラード「Bathroom」からエモーショナルな「pop」になだれ込み、フロアには多数の拳が上がる。世界観を重視した展開に観客も陶酔した。

トリ前に登場したのはユアネスと同じく福岡出身の"神はサイコロを振らない"。幕が開くと静謐な音が鳴り響き、柳田周作(Vo)がハンドマイクで「白に融ける」をじっくりと歌い上げる。メンバー全員が音でストーリーを描いていき、「秋明菊」は轟音と休符を巧みに扱い静と動を織りなしていく。鬼気迫るMCをし、激情的に音を出して歌っていた柳田が、ライヴの終盤に"今日は俺にとってめちゃくちゃ特別な日"と語り始めた。自分と音楽を出会わせてくれた大切な親友が、この日初めて自分たちのライヴを観に来てくれた喜びと強い想いを、涙を流しながら話す。そのあとの「煌々と輝く」は涙で歌えなくなるシーンも。叫び声を上げた彼を支えるように、観客が歌声を上げるシーンは愛に満ちていた。

最後を飾ったのは3rdミニ・アルバム『Braille』をリリースしたばかりの京都発4ピース・バンド、LINE wanna be Anchors。「Sugar」、「愛の堤防」と耽美な音像を鮮やかに繰り出していく。特にベースの作るグルーヴは、非常にしなやか且つ洗練されていて都会的。LINE wanna be Anchorsのサウンドにおいては裏番長と言ってもいいだろう。阿部将也(Vo/Gt)が"僕ららしさ全開の曲"と言った「No.2」はセンチメンタルな妖艶さを見せ、続いての「ERROR」ではRADIOHEADとGRAPEVINE譲りのダークで内省的なサウンドスケープを作り出す。シリアスな空気感とシューゲイザー的なギターの音色が崇高に響いた。
ギターをかき鳴らしながら"命を削るも削らないも僕ら次第。伝わる伝わらんも僕ら次第です。こんなシビアな世界ないなってつくづく思う"と語り始めた阿部は、リスナーの反応で心が潤っているとまっすぐに感謝を告げる。"あなたたちとどこまでもいきたい"と叫ぶとギターの音はどんどん熱を帯び、それと呼応してフロアでも次々と拳が上がっていった。ラストの「人生」ではピュアな心情がどこまでも疾走する。本編後半の畳み掛けに、2010年代艶ロック・バンドの懐の広さを目の当たりにした。

アンコールは「アンチヒーロー」。阿部が"全身全霊で歌うんで、声聞かせてくんねぇかな下北!"と呼び掛けると、フロアからは痛快なシンガロングが沸いた。4バンドそれぞれの強い想いが端々に垣間見られた"Permanent vol.4"。ライヴハウスだからこそ味わえた濃密な空間だった。

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