Japanese
Permanent vol.5
Skream! マガジン 2018年02月号掲載
2018.01.16 @下北沢LIVEHOLIC
Writer 秦 理絵
有名無名問わず、編集部が"これぞ!"と感じる若手アーティストを独自の嗅覚でピックアップするライヴ・イベント"Permanent"の第5回目が下北沢LIVEHOLICで行われた。この日はAnger Jully The Sun、CRAZY VODKA TONIC、phonon、Mr.Nutsの4バンドが出演。全国各地からネクスト・ブレイク・アーティストが集結する濃厚な一夜となった。
トップバッターは札幌の3ピース・バンド、Mr.Nuts。ヴォーカルのヤハラシュンが"僕らは騙し、騙され、裏切られて、傷ついて、20歳になりました"と歌い出した「20歳」をはじめ、いまを生きるリアルな感情をシンプルな演奏で届けた。平凡な毎日で揺れ動く心の有り様を描く長尺のバラード「財布」も素晴らしかったが、ラスト・ソング「ファイター」が感動的だった。繰り返される"生きていくんだ"というフレーズを"生きていこうな"と変えて歌ったところに、聴き手と共にあろうとするバンドの意志が見えた。
続いては愛知県豊明市から乗り込んできた3ピース・バンド、phonon。仄暗いミドル・テンポ「夕闇日記」から幕を開けたステージは、絶望に支配された日々を足掻きながら、なんとか光を見出そうとするような楽曲たちが妙に生々しい。MCで交わす言葉は多くなかったが、リズム隊の強力なグルーヴが次々に異なる景色を描き出す「Mr.Madman」など、そのタイトな演奏がバンドのスタンスを雄弁に語るストイックなパフォーマンスだった。
"バンドをやってたら、Skream!に出るのが夢だよね"と、そのステージに立つ喜びを屈託のない言葉で伝えたのは、札幌からのもうひとつの刺客、Anger Jully The Sun。激しく身体を揺り動かしながら幕を開けた「夢の彼方」を皮切りに、小竹森敬太(Vo/Gt)が巻き舌気味にメロディを投げ掛けたアップ・ナンバー「枯れた花びらを見て」など、アグレッシヴな演奏で集まったお客さんをぐいぐいと惹きつけていく。目の前の未来を強引にこじ開けるような爽快なラスト・ナンバー「youth」まで、個性豊かな楽器隊の真ん中で、強い人間力を持つヴォーカルの存在感が際立つ、とてもバランスのいいバンドだった。
イベントのトリとして、特に孤高の存在感を放ったのは広島県福山市発の4人組、CRAZY VODKA TONIC。"あなたが生きてきた日々以上のものをこのステージで出せなければ、俺たちはステージに立つ資格は何ひとつない"と、淡々と語り掛けた池上優人(Vo)。「雨のあとに」や「ハッピーエンドの続きを」など、緻密なバンド・アンサンブルのなかで、刹那的で妖しげなヴォーカルが聴き手を異世界へと誘いこんでいく。アンコールの「拝啓、名前も知らないあなたへ」に至るまで、爆発しそうな感情を完璧にコントロールしながら作り上げたライヴの構築美は、他の追随を許さないものだった。
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