Japanese
ユアネス
Skream! マガジン 2019年02月号掲載
2019.01.13 @渋谷WWW
Writer 山口 智男
ユアネスというバンドについて、CDを聴いたりMVを観たりしているだけでは、もしかしたらわからずじまいだった、いろいろなことを改めて知ることができるライヴだった。
"窮屈な思いをさせてすみません。最後まで元気に、楽しんで帰ってください"と序盤、黒川侑司(Vo/Gt)は申し訳なさそうに挨拶したが、会場から溢れ出しちゃうんじゃないかと思えるくらい超満員の観客がバンドを迎えたこの東京公演を含め、"Shift Tour 2019"の全4公演はすべてソールド・アウト。それに加え、3月23日の札幌公演が追加されたことは、2018年のユアネスの人気上昇を印象づけると同時に、その人気がまだまだ止まるものではないことを予感させたのだった。
観客が拍手でバンドを迎えるなか、ライヴは2018年11月にリリースした1st EP『Shift』のオープニングを飾る「変化に気づかない」で始まった。そこから1時間半、バンドはインタールード的な「T0YUE9」も含む『Shift』の6曲を中心に全14曲を披露。「変化に気づかない」は男女のセリフからなるポエトリー・リーディングとも、ある意味SEとも言える曲だが、間髪いれずに「凩」、「色の見えない少女」と繋げ、演奏は一気に加速。
音源ではコンセプチュアルというか、物語性を意識した曲作りに挑んでいるユアネスは、ライヴ・パフォーマンスもまた、ひとつの作品と考えているようだ。その後もステージの4人は伸びやかな黒川の歌声と、黒川の歌を支える古閑翔平(Gt)、田中雄大(Ba)、小野貴寛(Dr)によるテクニカル且つスリリングなバンド・アンサンブルの魅力をアピールしながら、照明や映像を使って、曲が持つ感情を含め、その世界観を可視化していった。
曲の世界観を表現するためなら、4人だけの演奏にこだわらず、ピアノの他に同期も交えていたが、ライヴでも揺らがないユアネスの楽曲至上主義はこの日、黒川の歌と同期のピアノだけで演奏したバラード風の新曲「私の最後の日」に一番表れていたと思う。歌う前に黒川は"今回のツアーではこういう形で演奏します。今後どう変化するかわからない。メンバーが曲をどう広げるか楽しみ"と、これが完成形ではないという含みを持たせたが、音源化する前の新曲を披露するにあたって黒川ひとりに託したのは、メンバーたちがヴォーカリストとして黒川のことを信頼しているからだ。この日、"ワンマンだから特別なことをしたい"と、黒川はMCの時間もたっぷり取って自分の思いをとつとつと語ったが、横から茶々を入れるようなことをせず黙って見守るメンバーたちからは、黒川をフロントマンとして信頼していることも窺えた。いや、自分たちは黒川をフロントに立てて、バンドとして進んでいくんだという決意が改めて感じられたと言うべきか。
もちろん、演出も含め、メンバーたちが現在のステージングに100パーセント満足しているとは思わない。理想はもっともっと高いところに設定しているはずだから、その意味では今後の成長を期待させるライヴとなったが、彼らがこれからどんなふうに音楽をやっていきたいのか、その信念とその信念を貫き通す意志は、自分たちの理想に果敢に挑戦したこの日のライヴからしっかりと伝わってきた。
"これから楽しいことが待っていると思う。みんなのおかげで音楽を好きになれて良かった。音楽でその恩返しをしたい"と最後、黒川は客席に語り掛けた。ユアネスの今後には筆者は期待しかない。
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