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LIVE REPORT

Japanese

秋山黄色

Skream! マガジン 2019年03月号掲載

2019.02.15 @渋谷TSUTAYA O-Crest

Writer 稲垣 遥

2018年に宇都宮市から突如出現した現役ニート・ソロ・アーティスト 秋山黄色が、1stミニ・アルバム『Hello my shoes』のレコ発ライヴを行った。YouTubeの広告や、Spotifyが今年大きな飛躍が期待されるニューカマーを紹介する"Early Noise 2019"選出など注目度も高いだけに、彼のことが気になっている方もいるだろう。宅録/DTMから始まった秋山黄色の生のパフォーマンス。それは予想外にも、彼から溢れ出る衝動をありのまま体当たりでぶつけたステージだった。

同ライヴにはゲスト2組も参加。"久しぶり"、"元気にしてた?"、"うーん、普通かな"――そんな男女の会話が音源になった「変化に気づかない」で始まったのはユアネスだ。その最後のセリフに返答する形で、ストーリーを繋げるように「凩」を紡ぎ、3拍子の怪しげなコード展開で不安定な気持ちを演出する「あの子が横に座る」へ。ユアネスはとことん物語的で、情景を描くのが上手なバンドだと思った。それは詞の部分だけでなく、黒川侑司の儚げなヴォーカルをメインに置いた3人の丁寧な演奏によるところも大きい。MCでは黒川が物腰柔らかく、方言交じりで観客の体調を心配する様子に客席から笑いも起き、温かいムード。そして「夜中に」では、キメにより訪れる一瞬の静寂や一音一音響くキーボードの打ち込みの音色により、"夜中"の静けさと、沸々と浮かぶモヤモヤした想いや虚無感を際立たせ、控えめだが芯のある世界観を作り上げていった。

続く眩暈SIRENは、スクリームが響きわたる激しいトラック「ジェンガ」で一気に会場の色を変える。彼らはラウドやスクリーモと形容されることもあるが、そこに和の香りが漂っているのがユニークなところだ。それは日本語詞というだけでなく、幻影的なキーボードの旋律の影響も大きい。それでいて、曲自体はキャッチーなので初見の者も惹きつけていく。フロントマンの京寺は終始ステージの一番前で前のめりになりながら歌い、イントロやアウトロ中もまくし立てるように想いを訴える。"孤独"を掲げるバンドのその懸命な姿にオーディエンスが焚きつけられ、徐々に距離が縮まっていく様子は圧巻。"これからもここに立ち続けるために!"と京寺が叫んで始めたラスト「故に枯れる」では、ここまでスクリームに徹していたウエノルカ(Pf/Vo)が、京寺と共に高音のサビを美しくハモり絶唱するパートも聴かせ、見事なステージを終えた。

そして主役の秋山黄色が登場。アー写はイラストなのでこの日初めて彼の姿を見た人も多かったと思う。金髪で、完全に目が隠れるほどの長い前髪、ビッグ・サイズの白いTシャツ。"現役ニート"と謳う彼らしい出で立ちだ。サポートは、ベース、ドラムの2名のみ。注目を浴びるなか鳴らしたオープニング「スライムライフ」は、捻くれたテクニカルなステージを想像していた聴き手を、いい意味で裏切る直球パンク・ナンバーだった。"O-Crestー!"とライヴの経験がまだ少ない彼の、まさに初期衝動と言いたくなる鋭い咆哮を響かせ、「やさぐれカイドー」ではギターを弾きながらドラム、ベースの方へ動き回る。技術とセンスも見せながら、打ち込みも入れず、ギター1本と音源以上に力強い歌声だけで勝負する姿は潔く、彼の今の魅力を伝えるにはこれがむしろ正解なのだという説得力すらあった。

そして、息を切らしながら大型フェス出演決定の告知をし、"好きなことをしているだけで、周りの景色が変わっていく。最高の趣味です"と話す。"音楽って遊びなんですけど、ライヴは全然遊びじゃないんですよね。まだ(自分の中のいいライヴが)わかってないけど、近づきたい"と演奏したのは「ドロシー」。"悲しみを/分かち合いたい"というフレーズは彼が音楽で目指す理想を表しているのかもしれない。そこから「とうこうのはて」、「猿上がりシティーポップ」と手を上げて一緒に歌いたくなる屈強なナンバーへなだれ込み、秋山も力の限りギターをかき鳴らして本編が終了した。

鳴り止まない手拍子を受け再登場した彼は、"体力が余ってたらアンコールやろうと思ってたんですけど、ご覧のとおりなので......もうギターも持ちたくありません(笑)"と体調万全でないなか燃え尽きた姿を自虐し笑いを起こす。"でもいつかアンコールをやる姿を観に......追ってください。今日は形式的な感じじゃなく心から、ありがとうございました"とステージを去った。

音源のイメージとは異なる少年のような無垢な印象を与え、観客の心を掴んだ秋山黄色。ライヴもただ"やってみる"という体験の延長線上で、楽しみながらひとつひとつ試している姿にはわくわくさせられた。ぜひこれからも大きなステージに立ち、成長していく彼の雄姿を目撃してみたい。


[Setlist]
■ユアネス
1. 変化に気づかない
2. 凩
3. あの子が横に座る
4. T0YUE9
5. 夜中に
6. Bathroom
7. pop

■眩暈SIREN
1. ジェンガ
2. 明滅する
3. 偽物の宴
4. HAKU
5. 夕立ち
6. 故に枯れる

■秋山黄色
1. スライムライフ
2. やさぐれカイドー
3. Drown in Twinkle
4. クラッカー・シャドー
5. 日々よ
6. ドロシー
7. とうこうのはて
8. 猿上がりシティーポップ

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