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神はサイコロを振らない

神はサイコロを振らない

神はサイコロを振らない

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ライター:沖 さやこ

理(ことわり)を国語辞典で引くと"中国哲学の概念"、"物事の筋道"、"「道理」や「理由」のやや古めかしい言い方"という意味が出てくる。そして、"理由"とひと言で言っても、それは"原因"かもしれないし、"目的"である可能性もあるし、はたまた"動機"かもしれない。さらに、世の中には真理、論理、理論、理性、心理、原理、処理など、際限がないほど"理"を孕んだ言葉が数多に存在する。つまり、理とは、人間の頭脳や心と密接な関係にある言葉であり、生きるうえで切っても切れない縁にあるもののひとつなのだろう。

神はサイコロを振らないが完成させた5曲入りミニ・アルバム『理 -kotowari-』も、様々な理を孕んでいる。約2年という歳月をかけて制作された前作『ラムダに対する見解』は、緻密に組まれたアンサンブルにダイナミックなメロディ、文学的且つ哲学的な歌詞というバンドの軸はそのままに、ストリングスやピアノ、プログラミング、スポークン・ワードなど新たなアプローチを大胆に取り入れ、より具体的なメッセージで聴き手の心を突き刺す、挑戦の意味合いの強い実験的な作品だった。今作はその経験を生かし、よりバンドの深淵にある基本理念やポリシー、イメージや理想を立ち昇らせている。過去最高に洗練された彼らの音像を体感できると言っていいだろう。

同作の幕開けは先行配信された「ジュブナイルに捧ぐ」。美学は保ちながら以前よりも直接的な言葉で綴られた歌詞が、不条理な世の中とそこにはびこる無情な現実を突きつけ、葛藤を生々しく吐露するも、"君は君でいい"や"この世界中で 唯一君が誇れるものを/他の誰にも渡さないでいて欲しい"、"孤独すら糧にして それでもなお強く/生き抜いてゆけ"など、聴き手を鼓舞する。そのメッセージが緊迫感としなやかさを併せ持つ音色とメロディに乗るからこそ、静かに降り注ぐ雨が地面を濡らすように、優しく確かに心へと染み渡るのだ。

次に控えるのは一転、引き締まったビートとフレーズでグルーヴを作り出すダンス・ナンバー「揺らめいて候」。行きずりの恋を"源氏物語"を彷彿とさせるワードを用いながら描いていく。"理"という言葉の代表例として使われる"盛者必衰の理をあらはす"が"平家物語"の一節であることも呼応しているのだろうか。

同曲で注目したいのは歌詞中に"貴方"と"貴女"が存在する――すなわち女性視点、男性視点と、両名の総意という3つの観点がしたためられていることだ。女性は、"貴方永遠なんて求めれば 去ってゆくのでしょう"と未来を願う気持ちとその諦念を抱え、男性は、"紛い物の愛演じて 身体が欲しいだけ"と快楽に溺れる。この相反する男女の関係性は、"僕"の"君"に対する激しく痛烈な未練が淡々とこぼれる「胡蝶蘭」とも対照的だ。両極端な恋愛を綴った2曲でありながら、色恋の中で生まれる虚無感や孤独感を極限までドラマチックに昇華していることは共通。聴き手によって2曲の間に異なる理を発見できるところも趣深い。

「解放宣言」はダウナー且つひりついたギター・リフから、サビへの解放感への緩急が小気味よい。明確な光を据えつつ、濃厚な美意識で皮肉を込めるラストも含めて、最もユーモラスな曲と言っていいだろう。そんな多種多様な4曲の着地点が「illumination」。音楽を作り、鳴らし続ける理由を星に委ねた、バンドの根幹にもなり得るミディアム・ナンバーだ。

煌びやかでありながら、歪みも放つギターの音色はシンボリックで、悩み苦しみながらも、輝きを手にしようという気概に溢れる。強い想いが率直に綴られた歌詞は、聴き手ひとりひとりに宛てられる手紙のよう。"くたびれた靴履いて 何処か遠くへ/誰も知らない町まで 星を見に行こう"というラインは、我々と手を取り歩幅を合わせて進んでいこうというメッセージにも受け取れた。

原点を未来へ続く道へと繋げた「illumination」は、彼らを深い闇の中で輝く星のように導いていくだろう。それは『ラムダに対する見解』での経験を昇華した『理 -kotowari-』も同様だ。彼らが音楽で紡ぐ理は、この先より壮大な景色を描くに違いない――そう深く確信させる重要作が完成した。


▼リリース情報
神はサイコロを振らない
ニュー・ミニ・アルバム
『理 -kotowari-』
kamisai_jkt.jpg
2020.02.19 ON SALE
amazon TOWER RECORDS HMV
DKNN-1002/¥1,818(税別)
[DKN]

1. ジュブナイルに捧ぐ ※TBS系テレビ「CDTV」2月度エンディング・テーマ
2. 揺らめいて候
3. 胡蝶蘭
4. 解放宣言
5. illumination

「ジュブナイルに捧ぐ」先行配信はこちら

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