Japanese
神はサイコロを振らない
Skream! マガジン 2025年03月号掲載
2025.02.11 @日本武道館
Writer : 石角 友香 Photographer:toya
2025年に結成10周年、メジャー・デビュー5周年を迎える神はサイコロを振らないが、アニバーサリー・イヤーのキックオフとして、自身初の日本武道館公演を開催。ポストロックにシューゲイザー、ヘヴィ・ロックやオルタナティヴ・ロックからR&B、J-POP要素のあるポップスまで、ジャンルに拘泥しない彼等のヒストリーを全21曲、約2時間のステージに凝縮して届けてくれた。
アンプやスピーカーを排し、自由に動けそうなステージに開演前からワクワクしていると、暗転とともに鳴らされたのは彼等が初めてYouTubeに動画を投稿した「秋明菊」。4面のLEDスクリーンの前に4人が存在する演出がまさにバンドを象徴している。そこから一気に最近のナンバー「火花」がセットされるのだが、不思議と違和感はなく、桐木岳貢(Ba)のヘヴィな音作りとフレージングをはじめ、吉田喜一(Gt)のリフにはどこかインダストリアルなムードすらある。重厚なアンサンブルは「修羅の巷」、「少年よ永遠に」と続き、グッとブラッシュアップされた各々の演奏とロック・バンド 神サイ(神はサイコロを振らない)のベーシックの強さを体現していた。ちなみにストイックでスタイリッシュな演出はメンバーも関与したもので、バンドの現在地をどう見せることが最適解なのか? を真剣に模索した結論に思えた。派手さやギミックよりメンバーの音が際立つ演出が非常に効果的だったからだ。
最初のMCですでに感極まった様子の柳田周作(Vo)を観て、信じて積み重ねてきたことの大きさはもちろん、彼が心を開いてこのライヴに向かっていることが感じられ、さらにオーディエンスとの距離が縮まったように思う。ちなみにこの日までにどうしても奪還したかったという、初めて自分で購入し、人に貸しているうちに行方不明になっていたギターが(日本)武道館公演に間に合ったのもドラマチックだ。
バンドのヘヴィネスに続いては飛び切り明るくポップなラインナップが続く。最近のナンバーからはツアー・バンドである神サイを表現した「Baby Baby」、イントロに上がる歓声が一際ボリュームアップした「キラキラ」ではロング・トーンの"イェー"のシンガロングが起こる。チャイルドフッドも青春も輝くメロディに乗せていくこのセクション、次はEDM要素をバンド・サウンドに取り込んだ「巡る巡る」をドロップ。ハンドマイクの柳田は歌いながらステージを歩き回り、喜びを全身で表す。バラエティに富む神サイ楽曲のどんな側面にもヴィヴィッドに反応するファンはサビで思い切りジャンプして、バンドへの感謝と今この時を楽しみ尽くしている。その自主性というか自律性は呼び掛けがなくても自然と「1on1」でタオル回しを起こす。たぶん、1曲目の「秋明菊」で涙を流した人の頬もこの頃には乾いていたんじゃないだろうか。楽しく情緒を振り回されるのも神サイのライヴの醍醐味と言える。
"楽しんでますか? 僕は超楽しんでます!"と全身から興奮を溢れさせる柳田。メンバーにも記念すべき日に一言ずつ求めると、吉田は"10年経った今も純粋で人間味のあるところをしっかり届けていきたい"、黒川亮介(Dr)は"柳田と始めたバンドが今も続いていることを心の底から誇りに思います"、桐木は"最初は自分のために始めたバンドだったけど、みんながDMとかで「生きる糧になってます」とか送ってくれると、逆にそれが生きる糧になって続いてます"と、この日だからこそ聴ける本音を披露してくれた。柳田は開演してからずっとこれまでにない滾りを感じていると言い、"曲で何かを伝えるというより、今までいろんな人と出会ってここまで来たと思うので、今日は一緒に楽しんでほしい、一緒に歌ってほしいなと思います"と、「LOVE」に繋ぐ。頭上で手でハートを作るファンの幸せそうな様子が、このポップ・チューンを完成させているようだ。さらにラヴ・ソングのセクションは多彩さを見せていき、映像がシフォンのリボンのような造形を作り、柔らかい声のトーンで歌う「カラー・リリィの恋文」をロマンチックに彩る。
ピアノのSEが流れ「泡沫花火」が始まると、誰もがその儚さに聴き入っている。儚さや淡さといった抽象的な表現を靄のような照明とスモークで作り出し、繊細な演奏と相まって素晴らしい効果を生んでいた。ラヴ・ソングのバリエーションで聴かせると同時に照明もピンク色の様々なトーンで魅せてもいて、「胡蝶蘭」のエレクトロニックなイントロにフューシャ・ピンクがハマる。幼さゆえに成就しない恋と言い切るにはもっと複雑な心情も内包した曲が続くが、初期からの代表曲である「夜永唄」での内面に問うような柳田のヴォーカルとそれを支える演奏が、神サイのラヴ・ソングを普遍的なところまで押し上げていたように思う。
若くて苦い恋を今の力量で昇華した「シルバーソルト」で、また異なるジャンル感に突入。インダストリアル・ロックにも近いソリッドで重いサウンドとビート。巧みなフレージングでリズムを組み立てる黒川のプレイに耳を奪われる。最近のナンバーから一気に「揺らめいて候」でギター・ロック・バンドらしさを全開にし、コロナ禍以降のアンセムといって差し支えないだろう「タイムファクター」ではサビで起きる"イェエエ!"のシンガロングもさらに大きくなる。ファンク的なグルーヴもあるが、彼等の音楽性にポストロックが存在することが分かる屈強なリズムに圧倒される。
"2020年にデビューしていつかこういう景色を見るために作り続けてきました。最高!"と謝意を述べた柳田。自分たちはルーツも違うし、ジャンルも変わってきたバンドだが、なぜ音楽を続けてきたのかその答えは"4人で笑っていたいから"だという。強くもない人間だからこそ、メンバー、出会った人たちと二人三脚でこれからも歩いていきたいのだという素直すぎる言葉は冒頭、感極まった柳田がライヴを通じて見えたものなんじゃないだろうか。
終盤はMCでのバンドの意思表明を繋ぐように「ジュブナイルに捧ぐ」、そして今を生きるあらゆる人を祝福しながら、自分なりのロック・スター像を歌う「夜間飛行」へ。一瞬場内が明転する場面でオーディエンスの生き生きした姿が見えたことでさらに祝福感が高まり、柳田の"そのまま星を見に行こう!"という声とともにスマートフォンのライトが続々と点灯。澄み切ったサウンドと光が溶け合う「illumination」と、トーンの近いナンバーで気持ちも体感も空高く持ち上げてくれる。さらに明快なロック・ナンバー「クロノグラフ彗星」の久しぶりの披露が、むしろここからまた始まる予感を湛えていた。
この日、本編のみ21曲に凝縮してきた4人。柳田は本編ラストを前に初期の神サイに散見された文語っぽいライヴ・タイトルの由来を説明。凡庸、つまり普通の人である自分たちがこの日に武道館のステージに立つことをイメージしたと受け取った。めちゃくちゃ説明が長かったのもご愛嬌である。そしてラストは最新シングル「スケッチ」。4人が車座で演奏しているような親近感とバンドの今の心情を綴った歌詞が、この日のセットリストを通じてより力強く響いたことは間違いない。最高のアニバーサリー・イヤーのスタートだった。
なお、武道館公演の映画館上映(ディレイ・ビューイング)、全国ホール・ツアーの開催も発表された。
[Setlist]
1. 秋明菊
2. 火花
3. 修羅の巷
4. 少年よ永遠に
5. Baby Baby
6. キラキラ
7. 巡る巡る
8. 1on1
9. LOVE
10. カラー・リリィの恋文
11. 泡沫花火
12. 胡蝶蘭
13. 夜永唄
14. シルバーソルト
15. 揺らめいて候
16. タイムファクター
17. ジュブナイルに捧ぐ
18. 夜間飛行
19. illumination
20. クロノグラフ彗星
21. スケッチ
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