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INTERVIEW

Japanese

神はサイコロを振らない

神はサイコロを振らない

Member:柳田 周作(Vo) 吉田 喜一(Gt) 桐木 岳貢(Ba) 黒川 亮介(Dr)

Interviewer:石角 友香 Photo by Viola Kam (V'z Twinkle)

7月16日、17日のLINE CUBE SHIBUYA 2デイズで、メジャー1stフル・アルバム『事象の地平線』を軸にしたツアーを完走した神はサイコロを振らない。その前日に、恒例となりつつある夏のシングルを配信リリース。今年は原点を思わせつつ、今の表現力でアップデートした感のある「カラー・リリィの恋文」も世に出たタイミングだ。コラボやフル・アルバム、そしてツアーを経てファン層を拡大した彼ら、今夏は主要な夏フェスにも軒並み出演が決まっており、初見のオーディエンスの反応も楽しみなシーズンに突入する。今回はツアー・ファイナルから間もない4人にツアーの手応えとこの先への意気込みを訊いた。

-まずツアーを完走してみた手応えはいかがですか?

黒川:いやぁ楽しかったですね。ライヴ感がやっと、コロナ前にコンスタントにライヴやってたときの感覚に近づいてきたというか。それがフェスの前にできたっていうのがすごい大きいなぁっていうのはありますね。

桐木:2ヶ月間終わってみて、そんなつもりはなかったんですけど、めっちゃ張り詰めてたんだなって思いました。最終日、ライヴ終わった直後、すべての疲れがバーンって一気にきて。 体力的にはそんなに疲れてはないんだけど、精神的に張り詰めてたものが一気にバーって切れた瞬間があって。意外と張り詰めて生きてたんだなというか、この2ヶ月間やってたんだなぁっていうのは終わってみて気づいたんですね。

-久しぶりにツアーをやってるだけじゃなくて、こういう状況の中でやってるわけですし。

桐木:1から自分と向き合う時間がめっちゃ多くなって。1ライヴごとに本当に自分と向き合って、もうなんで音楽してるんだろう? ぐらいから向き合ってたんで。そういうのもあって"解放!"って感じでしたね。安心みたいな。

-吉田さんは?

吉田:結構、一瞬で終わったと思ったんですけど、なんで一瞬で終わったんだろうって考えたら、結構その箇所その箇所でドラマがちゃんとあったんですよね。九州、自分らの地元4ヶ所回ったときに一瞬帰省したんですけど、そういうときでも昔からの友人に会ったりとか、お世話になった場所、ライヴハウスに行ったりしたんです。そういうところでいろんな人の期待を知らぬ間に背負ってて。全国各所でも会う友達とか、みんなに期待されている自分がいることにすごい気づけたんで、そういうドラマを1個ずつ拾ってったら、すぐ終わっちゃったなっていう感じですかね。だから充実してたんだと思います。

-やっとそういうことをリアルに感じるタイミングだったということですよね。柳田さんはいかがですか?

柳田:やー、いろいろあったなぁと。終わったから言える話ではあるんですけど、すごい精神的にも浮き沈みが激しかったし、喉的にも実は本番直前まで点滴打ってた日もあって。声がリハで出ないみたいな日もあったんですよ。結構ピンチが定期的にあって。あと俺がチャリンコで事故して、肩上がんねぇとか、そういうこともあったんで。

桐木:それ自業自得でしょ(笑)。

柳田:そういうこともあったりして。でも神サイ(神はサイコロを振らない)って4人のバンドなんで、フロントマンのセンターの柳田周作がヤバいってときはメンバーがそこをカバーしようとするみたいな。それが顕著に出たのが島根公演で、リハの時に全然声が出なくなっちゃったのが島根の日なんですけど、バンド人生であそこまでピンチだったのは初めてで。あの日のライヴ終わったあと初めて涙目になってるマネージャーさん見て、"乗り切れて良かったな"って。ツアーってこれだなみたいな、もう何が起きるかわかんないし。あとは車でずっと移動するんで、シンプルに事故ってもおかしくないっていうか、こっちがどんだけ気をつけても貰い事故するかもしれないじゃないですか。本当に何が起きるかわからない状況で2ヶ月間、しかもこのコロナ禍で誰ひとり病気にもかかることなく、中止とか延期とか1個もなく、全公演ちゃんと来てくれたお客さんに最大限のパフォーマンスをし続けられたっていうのは、自分らの自信に繋がるなっていうのはありましたね。この規模感でツアー回れたのも初めてだったし、ファイナル東京2デイズもホールでワンマンしたのも初めてで、ライヴによってもお客さんがどうとかじゃなくて、自分ら自身の波っていうのがありました。すっごいボルテージが高い日もあれば、そのボルテージの上げ方がわかんない日とかもあって。そういうライヴのあとはめっちゃメンバーでミーティングしたり、反省点を話し合ったりして、まだまだ駆け出しなんやなって思ったし、良くも悪くも今が一番楽しいんだろうなっていうのはすごい思いましたね。たぶんこれが10年後とかになってくると、ライヴのやり方とかってもう、なんとなく自分らのスタンダードができてしまうというか。だから今って登っていくしかないですけど、仮にいつの日か登り詰めた瞬間、それを維持するのすごく大変だろうし、そこから上を目指すっていうのもまためちゃくちゃ大変な話だと思うんで。

-長期展望があるんですね。

柳田:とりあえず今はがむしゃらに。フェスもガッと決まったんで。なんて言うんですかね? 自分を俯瞰で、もうひとりいるみたいな。"お前今のうちに楽しんどけよ"じゃないですけど、バンドにとってたぶん今が一番、青春の時期なのかなっていうか。こっから待ち受ける壁が絶対あると思うんですよ。ある日突然、キャパが上げれんくなるとか、きっとあると思うんで。とりあえず"お前ら今を楽しんどけや"っていう。

-そしてツアーのセミファイナル前日に「カラー・リリィの恋文」が配信リリースされて。夏の楽曲が続いてますね。

柳田:そうですね、メジャー・デビュー以降、毎年。「カラー・リリィの恋文」はライヴで何回かやりましたけど、実際ライヴでやったらすごい盛り上がって。

-わりと静謐なコーナーというか、じっくり聴かせるブロックがすごい良くて。もちろんこの曲はTVアニメ"アオアシ"第2クールのエンディング・テーマでもありますが、それ以外の部分ではどういうことを意識して作った曲ですか?

柳田:お客さんに向けての神サイからのラヴ・レターだなっていうのは1個ありますね。結局ずっと自分では思っているんですけど、何か音楽を作りたいだけの人もきっといるじゃないですか。創作というか、芸術家気質な人っていうか。別にライヴで披露することに重きを置いてるんじゃなくて、作品として作り込みたいという人。けど、神サイはロック・バンドとして、ライヴ・バンドとしてちゃんとライヴでお客さんに伝えたいっていうのがあります。ライヴではお客さん、今は全員マスクしているし、目しかわかんないんですけど、もう目からお客さんの愛が全部伝わるっていうか。僕らに対する愛情がめっちゃ伝わってるんで、そういうの全部ひっくるめて"君の声が力になる"っていうのを入れてたりしてますね。背中を押してあげるというよりも、ふっと寄り添って一緒に前に進んで行けたらいいなみたいな願いを込めてます。

-柳田さんのもともとの繊細な歌をそのまま生かしているのが新鮮です。

柳田:今の時代ってレコーディングして、絶対ヴォーカルのピッチをちょろっと直したりとかすると思うんですけど、今回1ヶ所もピッチ修正してなくて。それがたぶんこの生々しい、人間味のあるヴォーカルに繋がってるっていうか。俺は結構気になるところがあるんですけど、あえてそこを生かしてるっていうのがこの曲の面白いところで。

-その判断は?

柳田:そのときはエンジニアさんが。俺、てっきり直してると思ってたんですよ。で、ミックスのときに"あれ、これってヴォーカルって?"、"いや1個もピッチはいじってないよ"って言うので、"ええ?"と。でもせっかくなんだったら、そこで人間味出せたらっていうことでそのまま作品にしちゃいました。

-この仕上がりも相まってだと思うんですけど、励ますというより祈りのニュアンスに近いなと。バンドのアレンジに関してはみなさんどういうアプローチをしましたか?

黒川:アレンジは特に"これだ"っていうのはなくて。自分は結構パッション的な部分が大きいですね。"アオアシ"の放送ってNHKの夕方の時間帯で。自分が中学生のときに"メジャー"っていうアニメを同じくらいの時間でやってて、そのときの曲をめっちゃ聴いてました。で、野球やってて、試合前とかにそれ聴いてちょっとテンション上げて試合するじゃないですけど。だから、そういうふうに聴いてもらうと嬉しいなって、そういうところをイメージしながらレコーディングしました。

-ポストロックっていうか、大きく言うとU2的なスケールもありますね。

桐木:昔、俺らポストロックのバンドと言われてたこともあって、結構何も考えずにすらすらフレーズが出たというか、たぶん考えないっていうのはそういうことなのかなって思ったりして。たぶん得意なもの、好きなものっていうか、久々に自分のもととなるジャンルのエッセンスが取り込まれた曲だったんで、割とすらすら考えずにという感じでしたかね。あとベースはだんだんシンプルにしていきたいなぁっていうのはちょくちょく作品出すにつれて、そういう考え方に変わってきて。テクニカルより、グルーヴ命っていう感じの方向性にはなってきてますね。

-ライヴで拝見してて、もちろんファンク寄りの曲では手数も多いですけど、どっちかって言うと音を選んでるんだなという感じはしましたね。吉田さんはいかがですか?

吉田:昔のエッセンスを受け継いでるフレーズが結構入ってて、昔はタッピングのフレーズとかよく楽曲中に使ってたんですけど、今回も2Aで使ってて。一応、手数の少ないタッピングと、めっちゃ動いてるタッピングのフレーズ、両方提出したんですけど、"たぶんこれシンプルなほうがいいよな"と思ったら、シンプルなほうが採用されてたんで、そこのすり合わせがうまくいってるな、と。自分がどういうふうに変化してるのかもそこで見えて面白かったし、バンドが選ぶ方向はこっちだろうなっていう。昔のエモさも持ちつつ昇華していけてる感じが楽しかったですね。