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INTERVIEW

Japanese

キタニタツヤ

 

キタニタツヤ

Interviewer:真貝 聡

キタニタツヤの新EP『スカー』に収録されているのは、"BLEACH"のために作られた楽曲たち。そのどれもが"BLEACH"のシーンや世界が想起させる一方、そこにはキタニ自身の人間愛や死生観など、人生哲学も多分に反映されている。しかも今回キタニは、自分の想い、"BLEACH"から受け取ったメッセージだけでなく、作者 久保帯人の趣向も曲の中に込めているという。今作はキタニの読み取る力の凄みも存分に味わえる。どのようにして、今作を完成させたのかたっぷりと訊いた。

-本誌10月号に載っている、THE 1975のページを熟読されていましたけど、お好きなんですか?

めっちゃ好きですね! "THE 1975 インタビュー"と検索しますからね。めったに買わない洋楽専門誌もTHE 1975の記事が出てると知ったら、その記事を読むためにゲットします。

-他にもインタビューをチェックしているアーティストはいます?

山口一郎(サカナクション)さんの記事はほとんど読んでますね。音楽はもちろんだけど、考え方も面白いんですよね。そういえばthe GazettEのインタビューも読んだな。

-お! ちょっと意外な感じがしますね。

今、自分の中で空前のthe GazettEブームが来てて! 昔好きだったんですよ。

-そっちも聴かれるんだ。

いや、ヴィジュアル系自体はそんな詳しくないんですよ。でも、高校生のころにthe GazettEとナイトメアのプチ・ブームが起きたんです。最近久々に聴こうかなと思って、the GazettEが直近に出した2、3作を聴いたらめちゃくちゃいいし、SNSもめちゃくちゃカッコ良くて。なんか、ちゃんと続けている人って素晴らしいなと思いましたね。

-キャリアを重ねて、いい円熟味が出ていますよね。

そうなんですよ。そもそもヴィジュアル系って、トータル・プロデュースを当たり前のようにやる世界じゃないですか。自分でメイクをしてヴィジュアルにも凝っているし、世界観が大事なジャンルだから賢い人が多くて、音源しかり読み物にしても面白いんですね。

-見え方に関してはキタニさんも意識されますか?

それはもちろん。なるべくカッコ良くて、すごく見えたほうが嬉しいので(笑)。

-ハハハ、正直! 音楽シーンの中での在り方はどうですか? ポップスを発信する者として敷居を高く見せないようにとか、そういう自己プロデュースは考えますか?

そこもちゃんと考えてますよ。......っていうとちょっと寒い感じになっちゃうけど、まぁそうですね。敷居は絶対に高く見られたくないです。カジュアルに誰でも聴けて楽しめるものがポップスだと思っているし、そういうものに憧れているので。公式YouTubeチャンネルで毎週生放送("キタニタツヤを解放せよ")をしてるんですけど、そこでも馴れ馴れしくされるほうが自分としてきっと得だろうと思っていて。

-得っていうのは?

年下に気を使われるようになったら、おしまいだなと思うんですよ。僕がすごく気を使う年上の人がいたら、たぶんその人はどんどん老害になっていく気がする。年下から気安く話し掛けられるような人であるべきだと思うし、ファンに対しても同じ気持ちです。それはプロデュースというより、そういう人間になりたいってことですね。

-先日アンディ・ウォーホルについてお話しされている記事がありましたけど、今のは繋がりますね。

そうそう! たしかにウォーホルも魅せ方の人ですからね。

-ウォーホルと言えば、多くの方はキャンベルの缶が思い浮かぶ。それってすごく素敵なことだと思うんですよね。アートという敷居が高かったものを、大衆の手の届きやすいところに置いた功績は大きい。それはキタニさんにも感じていて、今回リリースされるEP『スカー』は"BLEACH"のために書き下ろした楽曲たちということで"BLEACH"の世界観に浸れる一方、キタニさんの持つ死生観や人間愛も反映されている。それによって人類の命題を"BLEACH"というフィルターを通して、触れやすいものにしていると思いました。

ありがとうございます。大きくて深いテーマを扱いたくなるのは、純粋に自分の性だと思うんですけど、そういうものをみんなも当たり前のようにカジュアルに考えるべきだなと思っていて、そのトリガーに僕の音楽がなれたら最高。生き死にとか、大きくて深いものについて考えるタイミングって、生活の中であまりないけど、通勤途中の何気ないBGMだとか、生活の脇役として聴いている音楽の中で"あぁ、自分はどうなんだろう?"と考えるきっかけを与えられたら嬉しいなと思ってます。

-今作は"BLEACH"を背負ったうえでキタニさんの想いも乗せたアプローチですけど、これまでと作曲への取り組み方は違いますか。

作品を読んで"俺はこういうことを言いたいな"と思ったところを抽出して歌にしているので、やり方としてはあんまり変わらないですね。どれだけ強い作品のタイアップがついたとしても、今の自分の切り抜きになるようにはしたいから、そこはブレないように意識していて。とはいえ、作品には純粋に多大なる影響を受けているので、僕が書いたら自然と"BLEACH"的になるのはあると思います。

-今作は"BLEACH"のニュアンスもすごく感じるし、キタニタツヤのエッセンスも十分感じられて、双方の魅力が際立っていますよね。

そうなっていたら嬉しいですね! どっちかだけでもよくないじゃないですか。"このアニメの曲ではあるけど、誰が歌ってもよくない?"というのも悲しいし、"全然作品に合ってないな"というのも最悪だし。そのバランスっていうのはすごく気を使いました。

-もともと"BLEACH"の愛読者だったそうですね。

ただ、ちゃんと作品に触れるようになるのは、大人になってからなんです。僕の世代って小学生のころには"BLEACH"のアニメが放送していたし、漫画も連載されていたんですけど、当時の自分には"週刊少年ジャンプ"は大人すぎたんですよね。それよりは"月刊コロコロコミック"派だったので。

-いつ、読むようになるんですか?

大学生ぐらいで音楽を始めて、周りにデザイナーをやってる友達とかもちょっとずつ増えてきて。そういう人たちがみんな"BLEACH"が好きなんですよ! 僕が"剣を持って戦う感じの、王道の少年漫画でしょ?"みたいな話をしたら"いや違うぞ"と。"あの漫画にはデザインのすべてが詰め込まれているんだよ"と言われたんですね。

-それは面白い! デザインのすべてですか。

僕の映像をよく作ってくれている、イノウエマナという映像作家がいて。その子が教えてくれたんです。"BLEACH"のこの見開きをご覧よ! カッコいいだろ"みたいな(笑)。それをきっかけに興味を持って読んでみたんですよね。それまではめちゃくちゃ初期のほうの "BLEACH"しか知らなかったんですけど、ちゃんと全巻セットを買って読んだら"あ、なるほど!"と感動しましたね。

-話題になっているから、その作品に触れるのもいいことですけど、そういう世間の流れとは関係なく出会う漫画とか音楽とかって、今の自分に必要だったから機会が訪れたんだなと思ったりしますよね。

まさにそれでしたね! 僕の場合は大人になってからハマって良かったなと思います。大人って俯瞰できるし、多面的な見方ができるじゃないですか。それでこそ楽しめる作品な気もするんですよ。

-キャラクターのひと言ふた言の台詞も、何気ない描写にも奥行きを感じられますしね。

そこが素晴らしいですよね。まだ世の中のことを知らない純粋な少年が興奮する作品でもあるし、なおかつ大人が俯瞰してちょっとうがったような見方をしても、考察の余地というか深みを楽しめる作品でもある。その2軸がすごいなと思うんですよね。

-それは大衆芸術の一番理想ですね。

そうそう。一見カジュアルに見えて"実は深い"というのは本当に理想的。自分も見習うべきポイントが非常に多いんですよね。