Japanese
キタニタツヤ
Skream! マガジン 2022年08月号掲載
2022.07.02 @Zepp Haneda(TOKYO)
Writer 宇田川 佳奈枝 Photo by 後藤壮太郎
どうしようもない現実と向き合いながら、生きていくために歌う。ツアー・タイトルに掲げた"BIPOLAR=両極性"を体現する、喜怒哀楽が混在したステージだった。全国10ヶ所を回るワンマン・ツアーのラストを飾る(※仙台公演は延期)、自身最大キャパとなるZepp Haneda公演。奇才と称されているキタニタツヤだが、故に葛藤する苦しい日々もあるのかもしれない。キタニタツヤというアーティストが、誰よりも繊細で、リアルと向き合っている人間だと感じた一夜だった。
オープニングSEに乗せ、ステージ前面に降ろされたスクリーン代わりの紗幕に『BIPOLAR』のイメージ・ムービーが映し出される。Zepp Hanedaを埋め尽くす約2,000人の観客が、キタニタツヤの登場を待ち構えていた。
SEが鳴り止むと、静寂に包まれる会場。柔らかく神々しい光の中にシルエットが浮かび、壮大なロック・バラード「振り子の上で」でスタートする劇的な幕開けだ。光の泡がステージいっぱいに映し出され、幸福感に包まれた様子は、"BIPOLAR"ショーの始まりに相応しい。"よろこびのうたを歌う"と丁寧に歌い上げると、佐藤 丞のドラムで一気に加速度を上げ、"キタニタツヤです。よろしく!"とキタニとバンド・メンバーが姿を表す。「PINK」のタイトル通り、怪しげな真っピンクのライトに照らされたステージで、軽快なステップを踏みながら、少し気だるげに響かせる舌打ちが、なんとも妖艶だ。一瞬にして、会場全体が彼の魅力に飲み込まれていく。
続く歪なサウンドを奏でる秋好のギターからの「聖者の行進」では、平畑徹也(Key)が拳を力強く、天高く掲げたのを合図にビートに合わせクラップをする観客。キタニが先導するパレードを見ているかのようで、オーディエンスからは、彼について行けば間違いない、そんなふうに思う様子すら窺える。
畳み掛けるように続く「ハイドアンドシーク」。平畑のエッジの効いた旋律と、重低音のドラム、ベースが身体中に響き渡る。
"俺は感慨深いよ。前の3人(キタニ、秋好、佐藤)はキャパ80人のところで初ライヴをやっていたのね。この会場でできることを誇りに思うし、ここまでついてきてくれて、みんなマジでありがとう"と感謝を伝えた。心なしか、少し声が震えているような気がする。
水色のファントム・ギターを持ち、軽快なカッティングを弾き踊りながら「Cinnamon」へ。この日、キタニがベースを持つことがなかったのは、齋藤祥秀(Ba)に想いを託したかのように感じられた。齋藤もそれに応えるように丁寧に会場全体にベースを響かせる。
ぐっと大人でメロウな「白無垢」から、「Sad Girl」と続き、再びギターを持って「人間みたいね」へと。ここまで来ると、完全にキタニの世界観にどっぷりと浸かり、今いるところが夢か現か幻かわからなくなる。するとキタニは"普段さ、どうしようもない現実があってさ。今だけは、どんだけ夢見ても誰も怒る人はいないので、最後までめちゃくちゃになって楽しみましょう"と、さらにキタニの世界観の奥深くへ引き摺り込んだ。"天国なんてここにはないよ"と歌う「クラブ・アンリアリティ」では、リアルという悪夢から解き放たれ、まさに天国にいるかのようだ。天井のミラーボールが光るとフロアの熱は上がり、会場全体がキタニの思いに応えようと打つ手がどんどん力強くなる。
"あ゛ぁぁぁ!"と何かに取り憑かれたかのように頭を抱え、ジャジーでファンクな「Ghost!? (Bad Mood Junkie ver.)」でも、ショーを進めていく。キタニの歌には狂おしいほど愛おしい不思議な魅力がある。そして、秋好が奏でるギターが曲の美しさをグッと引き上げる。目紛しく色を変える照明の中、自由に感情の赴くまま歌っている姿に激しく心が揺さぶられた。歯止めが効かなくなるほど、観ている者の感情をかき乱していく。
また、荒れ狂ったまま歌う「逃走劇」は、これまでのそれとは違う聴こえ方がした。ステージから客席へ訴え掛ける強い眼差しは、キタニ自身が何かと葛藤し、戦い、新たな世界へ逃げていきたいと願っているふうにも思えた。
続く「トリガーハッピー」では、先ほどまで座っていた平畑が立ち上がり、頭を揺らし身体全身で鍵盤を弾く。ここまで休みなくショーが進んだが、「Rapport」で空気が一変。ステージ背後の13面モニターにはトレードマークのひとつ目がずらりと並ぶ。実に奇妙な雰囲気だ。
ここから「タナトフォビア」と続く流れは、曲が醸し出す狂気が際立ち、とてつもなく良かった。そして、吐息まじりの声で、救いを求めるよう歌う「冷たい渦」。キタニを煽るかのように加速するドラムと、それに続く秋好のギター。現実と向き合う必然性をリアルに突きつけてくるキタニの歌だが、最後には光が見える。"ありがとう"とマイクに頭を埋めるように礼をし、ゆっくりと想いを語り始める。
"今日こういうライヴができたこと、今後の自分の中で、今までの人生の中で間違いなく大きなマイルストーンになるなと歌っている途中で思った。今日を思い出すと、自分の精神的な支えになる――乗り越える壁はたくさんあると思うけど、それを乗り越えていく過程で、今日の記憶ってすごく宝になるなって"と、照れくさそうな表情を浮かべ「プラネテス」を披露。神秘的なライトで背後から照らされるキタニの姿は、葛藤の中でもがき、それでも希望を信じ前を向いて進む姿そのままで、その景色は最高に美しかった。
曲終盤の秋好が歌うように弾くギターがさらに叙情的だ。そして、オーケストラを従えているかのような気さえするほどの壮大なサウンド。キタニの思いを受け、長年、音で会話をしてきた4人だから奏でられるのだと思う。
最後に据えられた「ちはる」。春をテーマに作られた本曲では、会場の照明は淡いピンクと、モニターに映る桜の花びらにより、真夏の一夜が一瞬にして春へと変わる。"季節が千巡っても、またここに戻ってこよう"という歌詞が、先のMCと重なり、なんとも胸が苦しい。ステージ上から今日の景色を噛み締めるように眺め歌い終えたキタニは、目頭を抑え、溢れ出しそうな感情を堪えているように見えた。
今あるすべてを捧げようと、重低音のビートに乗せ、丁寧に言葉を紡いでいくキタニの姿がとても印象的だった。心の"叫び"が溢れ出たステージだったが、彼の想いは確実に会場にいたひとりひとりに伝わっていただろう。きっと、ほとんどの者がこの夢から覚めないでほしいと思っていたに違いない。キタニの言葉を借りれば"どうしようもない現実"と向き合う日々だが、キタニタツヤの歌が、音楽が、儚くも美しい希望の光なのだ。
[Setlist]
1. 振り子の上で
2. PINK
3. 聖者の行進
4. ハイドアンドシーク
5. Cinnamon
6. 白無垢
7. Sad Girl
8. 人間みたいね
9. クラブ・アンリアリティ10. Ghost!?(BMJ ver)
11. 逃走劇
12. トリガーハッピー
13. Rapport
14. タナトフォビア
15. 冷たい渦
16. プラネテス
17. ちはる
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