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INTERVIEW

Japanese

アルカラ

2019年12月号掲載

アルカラ

Member:稲村 太佑(Vo/Gt) 下上 貴弘(Ba) 疋田 武史(Dr)

Interviewer:吉羽 さおり

-(笑)詩的な歌詞でその想いを伝えるものになっているのは、アルカラらしさでもあるなと思います。また心の景色とでも言うべき情景をまっすぐに歌っているということで、最後の「夕焼いつか」もすごくいい曲ですよね。

稲村:これは何回聴いてもいいですよね。僕、"夕焼け"という言葉をよく使うらしいんですけど。細木数子先生は、夕焼けは沈んでいくものやから、気が沈んでしまうから夕焼けは見ないで、朝の太陽を見なさいとおっしゃるんですけど。

-そうなんですか(笑)。

稲村:僕はどっちかというと、夕焼けってきれいだなと思うタイプで。必死に生きている人からしたら、夕焼けって1日の終わりを癒してくれる何かのような気がしていて。もしくはその答え合わせができるものというか。人生ひとつとっても、夕焼けに例えられるなと思って。夕焼けを、一生の終わりと思いながら聴くと、また大きく話が変わってくるし。そこで"ついでに朝焼けも/見ないか"と言えたのが、自分で自分にグッときたんです。いろんなことあるけど、とりあえず一緒に夕焼け見いへんかっていうのがいいなと思っていたんですけど。その自分ですら超えられたなと思った。夕焼けを人生の終わりと揶揄してると考えるならば、朝焼けでまた次の人生もという考え方になって希望の歌に変わるし。あるいは夕焼けを見ようぜなんて言いながら、なんなら朝まで飲もうぜって夜更かしをする意味にも聞こえるし。なんか、希望しかないなと思って。ようやくここで、細木数子先生の朝焼けにたどり着いたんですよ(笑)。

-なるほど(笑)。前作『KAGEKI』では、「さすらい」というとてもパッションも温度も高い曲で、派手にいき切ったパワーがありましたが。今回は、日常感のある温度感で締めるのがこのアルバムなんだなって思えた。そこも良かったんですよね。

稲村:この曲は実は、弾き語りでもやっていたんですよ。毎年3.11に仙台でやっている"MASTER PEACE"というイベントに出させてもらっているんですけど。それは趣旨としては3.11を音楽の日にしたいというイベントなんです。そこで弾き語りでお呼ばれしたりしていたので、何か僕なりの愛を歌いたいなと思って、ライヴの2日前に作った曲だったんです。弾き語りの曲だと、その日に披露して以来やらないような曲もいっぱいあるんですけど。この曲は下上が聴いてくれとって。"ギターむっちゃ下手やったけど、新曲良かったで"って言ってくれて。

下上:ほんまひどかったです、ギターに関して言うと(笑)。でも、この曲で"朝焼け"っていう言葉が出てきたときに、一晩何やっとってんって思って。

疋田:そこ?

下上:っていうとしょうもない言い方やけど(笑)。あぁ、朝になったなと思って。そういう想像をさせる言葉が出た瞬間に、この曲すごくいいなと思ったんですよね。ギターは下手やなと思いながらも。

稲村:はははは(笑)。

下上:そのときにもちょっと話したんだけど、井上陽水さんっぽさがあるなと思って、グッときたんですよね。僕の中では、昭和の名曲シリーズの1曲のようなイメージで。

稲村:令和の一発目でね。

-聴く人の心情が入れる隙間がある曲ですよね。下上さんからの言葉もあって、バンドでやってもいいのではとなったんですか。

稲村:そうですね。やってみたらそれはそれでまたいいなっていう。アコースティックでやっている感じはこの曲には合っていると思うので、それに味を添えるという感じで作らせてもらいました。

-インストである「サスペンス激情 第二楽章」からアルバムが始まって、「夕焼いつか」で終わって、また淡々と頭に戻っていくような感触もあって。それがアルバムらしくもあっていいなと思いました。

稲村:CDは1曲目から聴いて2、3曲とくるところまでにドラマチックにいかへんかったら、曲の羅列になるので。毎回の作品でそこは考えているんですけど、今回はインストからいくことでいきなり裏切ったろうという気持ちと。あと2006年に出した3rdミニ・アルバム『20秒前』の1曲目が「サスペンス激情」で、インストから始まるんです。その「サスペンス激情」をあえて、第二楽章という形で作るという。これもなんか面白かったんですよね。クラシックの第二楽章を作る人の感覚がわかりましたわ。わからないけど。

疋田:速攻で否定(笑)。

下上:もとのイメージがあるから、それをどう生かすかとか、壊せないけど壊したいみたいなってことやな? 俺もわからんけど(笑)。

稲村:だいたい第三楽章は楽しい感じになるんですよね、今まで暗かった曲が急に跳ねだすとか。

-言わば、起承転結の転の部分に当たるような感じになりますよね。今回、第二楽章が来たということは、この先にも期待が持てます。

下上:ただ、第二楽章まで13年かかってるけど、次いつになるんやろう(笑)。

稲村:その間隔もええやん(笑)。

下上:60とかになるで。

稲村:ええやん深みがあって。"第三楽章ついに!"っていう。