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INTERVIEW

Japanese

KNOCKOUT FES 2019 spring

2019年03月号掲載

KNOCKOUT FES 2019 spring

いつかのネモフィラ:前海 修弥(Vo/Ba)
osage:山口 ケンタ(Vo/Ba)
This is LAST:あきつぐ(Gt/Vo)
ユレニワ:シロナカムラ(Vo/Gt)
レイラ:有明(Gt/Vo)
下北沢MOSAiC:森本 真一郎 佐々木 拓也
インタビュアー:秦 理絵 Photo by 上溝恭香

-なるほど。次はosageです。ネモフィラと同じでベース・ヴォーカルですね。ギター・ロック系のバンドだと、ギター・ヴォーカルの方が多いから珍しいな、と。

山口:バンドを組んだときにギターがふたりいたんですよ。僕は前身バンドでギター・ヴォーカルをやっていたので、スタジオに入ったときに"何をすればいい?"ってなって。"じゃあ、メンバーが見つかるまでベースをやってよ"って言われて、もう2年経つんです。

-ベース・ヴォーカルで定着しそうですね。

山口:ベースは歌とハマらなくて難しいんですけど、やっと慣れてきましたね。

-osageはひねくれたセンスを感じるバンドだなと思いますが。

佐々木:音楽的な遊び心がありますよね。

森本:意外と展開が読みづらくて、どちらかと言うと、最初聴いたときは難しかったんですよ。でも、「セトモノ」(2018年11月リリースの会場限定EP『Weipa.』収録曲)っていう曲かな。あれでバーンって開けたからビックリしました。

山口:それまでは難しく考えてたんですよ。自分でデモのギターも作ってたんですけど、メンバーに好きにやってもらったら、ああなったんです。

森本:なるほどね。osageもライヴハウスの方から熱い推薦があったんですよね。

佐々木:いろいろなバンドからも"osageとやりたい"っていう声があるんですよ。

山口:それ、一番嬉しいです。

佐々木:たぶんバンドマンからも好かれる音楽なのかなと思いますね。

前海:同じベース・ヴォーカルですけど、僕らにはできないことをやっててかっこいいです。

山口:いやいや。逆に前海さんは、僕にはできないことをやってるんですよ。うらやましいです。結局、ないものねだりなんですよね、バンドマンって。

-osageはどういうバンドを目指してるんですか?

山口:このジャンルって、歌だけ切り取ったらありがちなものが多いと思うんですよね。その中でosageだけのオリジナリティを持ちたいなと思ってます。

-たしかに、さっき話に出た「セトモノ」で言うと、"さよならを今あなたに"っていうところを聴いてると普通に失恋の歌なんですけど、最後を"生きがいのない時代にもうさよなら"って締めくくるんですよ。その絶望の描き方がすごいなと思いました。

山口:あれは下手でギターを弾いてる金廣(洸輝)の歌なんです。あいつが彼女と別れたときに電話が掛かってきて。ちょっと珍しかったんですけど、"人と付き合うのって難しいよな"って言ったんですよ。朝の4時ぐらいに。

一同:あはははは!

山口:それはもう誰が悪いとかじゃなくて、世の中が悪いっていうことで。だから、あんまりそういうことをするバンドじゃないんですけど、そこだけ中指を立てた感じですね。

-osageとレイラは対バンしてますよね。

有明:はい。初めてosageを観たときに、すごくいいなって思いました。うちのメンバーもハマってて、特にベース(牧野ウスシオ)がすごく好きで、Twitterでずっと呟くんですよ。"osage、最高!"みたいな。ギター(三浦太樹)も「セトモノ」のリフを弾いたりして、"この曲はコードがいいんだ"って言ってますね。

山口:僕らもレイラにひと目惚れしてて、自分たちの企画にも出てもらったんです。そのときはウスシオ君が、電車の中で"さよならを~"(※「セトモノ」の一節)ってずっと歌ってくれてました(笑)。

-いい関係ですね。続いて、ユレニワ。この5組の中では一番衝動的で泥臭いロック・バンドかなと思います。影響を受けたアーティストはいますか?

シロ:特にいないんですよね。メンバーの中でも聴く音楽が全然違うから、はっきりと誰かの影響を受けてるっていうのは言い難いんです。

-そうなんですか。歴代のロック・スターを彷彿とさせるようなシロさんの熱いパフォーマンスには目を奪われるものがあります。

シロ:ライヴでは静と動のギャップみたいなものを大切にしてるんです。たった30分のライヴの中で、それが何回起こるのかに全部が懸かってる。言っちゃえば、売れるか売れないかが懸かってるんですよね。うちのドラム(RENJU)はシューゲイザーが好きなんですけど、シューゲイザーって、うるさいけどきれいっていうのが地盤にあるじゃないですか。それが発想のもとになったのかなと思いますね。

佐々木:すごく印象に残ってることがあって、最初にユレニワがMOSAiCに出てくれたとき、たぶん高校生だったと思うんですよ。

シロ:あ、はい。

佐々木:そのとき、まだライヴを始めて数回ぐらいだったんですけど、ライヴをしてる最中にお客さんが入ってきたんです。で、その人たちに"今入ってきたお客さん、俺らがユレニワだ、よろしく"みたいなことを言ってたんです。演奏中にですよ。高校生のときから、お客さんひとりひとりに訴え掛ける力はすごかったですね。

-その当時のことは覚えてますか?

シロ:なんとなく覚えてるかなぁっていう感じですね。基本的にライヴのことって記憶がないんですよ。ところどころ写真みたいに覚えてたりしてて、"あのときこけたな"とかは覚えてるんですけど。......気持ち悪いですよね(笑)。

山口:いや、わかります。そういうものですよね。お客さんに"MCで言ってたこと、すごく感動しました"って言われても、全然覚えてなかったりして。

有明:うん、私もライヴ中のことは覚えてないです。

-「バージン輿論」(2018年8月リリースの2ndミニ・アルバム『THE VIRGINISM』収録曲)のライヴ映像では、"ラヴ・ソングを絶対に殺すな"とか叫んでますけど、その場で思いついたことを言ってるんですか?

シロ:そうですね。基本的に台本は書いてないです。ライヴごとに抱負を決めてやってるから、伝えることの軸はブレないようになってると思います。

-レイラはユレニワと一緒にツアーも回ってますよね。

有明:はい。ライヴでは100パーセント以上出してる感じがしますね。ツアー中って、前日にあんまり眠れないこととかあるじゃないですか。喉の調子が悪いとか。そういうことも関係なしに、どんなにつらくても全員が100パーセント以上を出してるんです。そういうのを見ると、"あ、そうだよな"と思いますね。いいライヴをしたかったら、100じゃダメだなって。

あきつぐ:僕はこのギター・ロックの界隈に出て、初めて経験した大きなイベントでユレニワのライヴを観たんですよ。そこで、ギター・ロックの厳しさというか、ここまで燃えないとこの世界では勝てないのかっていう気持ちが生まれましたね。

-ちなみにユレニワは、THE ORAL CIGARETTESとかフレデリックを輩出しているMASH A&Rのオーディション"MASH FIGHT!"で昨年グランプリを獲得したバンドですけども、今の状況をどう感じてますか?

シロ:今までそういうお話がほぼなかったんですよ。あったんですけど......"やっぱり君たちはもうちょっと大きくなってから来な"みたいに言われたりして。"なんでそんなに上から目線なんだ!?"って思いながら、バンドは自主でやるものなんだっていう認識があるんです。だから、急にいろいろな大人の手が加わることで、あまりにも僕らの自我が崩れると、僕らよりも応援してくれてる人が悲しむから、絶対に芯は持っていたいですね。

-頼もしいです。では、最後がレイラ。唯一の女性ヴォーカルのバンドですね。有明さんのヴォーカルが印象的で、一瞬で自分たちの世界を作れるバンドだと思います。

佐々木:あんまり女性ヴォーカルっぽくないんですよね。力強い歌声っていうのもあるんでしょうけど。若い女の子のお客さんだと、基本的には男ヴォーカルのバンドが好きっていうのが多いと思うんですよ。でもレイラはそういう壁がなく、若い女の子も好きになるようなバンドかなっていう印象です。あと、ギターの三浦君がセンスいいです。

森本:彼のソングライティングはいいよね。

-曲作りは、有明さんと三浦さんのふたりが中心ですか?

有明:そうですね。例えば、「Emma」(2018年8月リリースの2ndシングル表題曲)は私で、「アパートの中で」(2017年リリースの1stミニ・アルバム『あなた色に染まりたいの』収録曲)とか「あなた色に染まりたいの」(『あなた色に染まりたいの』表題曲)はギター(三浦)が書いてます。

森本:「アパートの中で」は、昔の自分を思い出すんですよ。"お金なくてもいいから"、みたいなことを言ってたなっていう。自分みたいなおっさん世代にも響くんです。

佐々木:この曲って"何があったんだろう?"って思いますよね。

森本:"どんな壮絶な恋愛をしてきたんだ?"ってね(笑)。

有明:ギター(三浦)は、昔付き合ってた彼女にフラれたときに作ったって言ってましたね。だから、この曲だけ男目線なんです。

森本:それを女性が歌うから、独特な広がり方があるのかなと思います。

-対バンをしたことがあるシロさん、山口さんは、レイラにどんな印象を抱いてます?

シロ:MCでほとんど喋らないから、完全に歌1本で勝負してるんですよ。サウンドで勝負できるバンドなんですよね。ここまで音で人を黙らせたり、感情を動かしたりできるバンドは計り知れないなと思います。売れないわけないなと思いますね。

-MCは、あえて喋らないようにしてるんですか?

有明:そうですね。ギター(三浦)が喋るので。

シロ:それも必要最低限ですね。

有明:そう。そのぶん曲をやった方が良くないですか? って思うんですよ。MCが感動的なバンドもいるけど、私はあんまりMCが好きじゃないんです。

山口:うちのメンバーはみんなレイラが好きなんですけど、「Emma」だけテイストが違うのがズルいんですよ。他の曲はオルタナ的な強さというか、とにかく楽器の音がデカいんです。それに声が負けてないのもすごいんですけど、そういうなかで「Emma」みたいなテイストの曲をやるのがズルい。女性的だけど、バックのサウンドは男が弾いてるから力強くて。そういうのはやろうと思っても、誰もができるわけじゃないですよね。