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LIVE REPORT

Japanese

This is LAST

Skream! マガジン 2022年12月号掲載

2022.11.14 @渋谷Spotify O-EAST

Writer : 稲垣 遥 Photographer:日吉“JP”純平

This is LASTが9月から全国を回ってきた対バン・ツアー"This is LAST 「アウィナイト」ツアー2022"。そのファイナルが渋谷Spotify O-EASTでFOMAREを迎えて開催された。規制が緩和されて追加チケットも販売され、それもソールド・アウトしたO-EASTはまさに満員。両者のグッズを身につけた若者たちが今か今かと開演を待ち、ひしめき合っていた。

まずは群馬県発の3人組 FOMAREが登場し、ストレートで爆発力のあるナンバーで、1曲目から一斉にオーディエンスの拳を上げさせる。パンク・テイストな曲からポップ・チューンまで、3ピースの粒立ちのいいサウンドをめいっぱいの大音量でフロアへ飛ばしていった。FOMARE はThis is LASTとは初対面だそうだが、初めての対バンでファイナルという大切な場に呼んでくれたことにアマダシンスケ(Vo/Ba)が感慨深げに感謝を述べ、"間違いない日にする"と言うと宣言通り存分に会場の温度を上げていった。

菊池陽報(Vo/Gt)、菊池竜静(Ba/Cho)、鹿又輝直(Dr)が姿を表し、ドラム・セットを中心に3人が集まって気合のひと声を上げると、「愛憎」からThis is LASTがライヴを始めた。"このツアーで見てきたもの全部ぶつけます。千葉柏から、This is LASTです。どうぞよろしく"と陽報が告げ「黒く踊る」へ。和の香りのするメロディが、移り気な恋人へのドロドロと渦巻く想いを際立たせる、ダークで鋭利なロック・チューンだ。クールな姿を見せたあとは、陽報が歌い始めると同時に大きなクラップが湧いた「アイムアイ」、人懐っこいリズム&メロディのとびっきりキャッチーなナンバー「恋愛凡人は踊らない」を連続投下。照明が早くもひとつになったO-EASTを明るく照らし、陽報も"2階も1階も最高だよ! ありがとう!"と笑顔で会場を見渡していた。

MCを挟んでは今夏リリースの「もういいの?」。爽やかに疾走する音像と、奔放すぎる彼女への愛憎こもごものアンビバレントな感情のギャップが、リスナーの想像をかき立てる。特に陽報の歌はライヴでもリリックがしっかり入ってくるため、その生々しい言葉選びが耳にこびりついて聴き手を曲の物語(多くは陽報の実体験でもあるのだが)へいざなっていく。それは続く「勘弁してくれ」でも発揮され、今度は女性目線のちょっぴり自分本位な本音を、軽やかだが陽気なだけではない、不安定な展開も挟むサウンドに込めた。そしてここで、新曲「カスミソウ」をライヴ初披露。いきなりブラスが高らかに鳴り響く、音の面ではおそらくバンドのイメージをひっくり返すような、史上最もポップに明るく振り切った楽曲だが、その裏切りがいい意味ですでに多くのファンに愛されていることが、一斉に上がる手から伝わる。竜静や輝直もそれを嬉しそうに見つめながらパフォーマンス。カスミソウの花言葉"感謝"の通り、恋人に"ありがとうね"と伝え前に進むための優しいラヴ・ソングが、きらきらとした新たなバンドの姿を見せてくれた。

演奏後"新曲、緊張した~!"と口々に話す3人。"出会ったことに感謝できるように強い人になりたい"と陽報は曲に込めた想いも話し、そこからは終盤戦だ。"最後まで、あなたの曲だと思って聴いてください"とスポットライトを浴びて始めたのは「バランス」。ストリングスの入ったノスタルジックで温かなミドル・テンポに、"両思いのはずなのに/片思いをしてるみたいね"という悲痛な言葉が儚げな歌声で重なる。さらに「ディアマイ」と切なく胸を痛めるナンバーを畳み掛けた。テンポアップすると同時に前に出てギターをかき鳴らす陽報。その熱いパフォーマンスに乗ると、露骨な歌詞表現も深い愛情ゆえのものだと思わせられる。曲として昇華された彼らの想いが、観客の経験に、共感に結びついて昂っていく。その熱気を受け取り"ライヴハウス、こうやって戻していきませんか?"と陽報が問い掛けて本編最後に披露したのは「オムライス」だった。ドラムの1音目から瞬時に反応するフロア。キメのクラップまでばっちりだ。"オムライス好きな人! This is LAST好きな人! ロック・バンド好きな人!"と陽報がオーディエンスに語り掛け、大盛り上がりする会場を黄色のライトが包み込む。This is LASTってこんなにハッピーなバンドだったっけ? と思うくらいにファンとの絆が幸せなムードを作り上げていった。

アンコールでは"あっという間だった。濃くて充実したツアーだったと思います"(輝直)、"人の優しさ、施し、命の重み。そんなツアーでした"(竜静)とそれぞれツアーを振り返り、陽報は"各地で食べて2キロくらい太りました。次のツアーでは太っていけたら......太っていけたらじゃない(笑)! 痩せていけたら!"と言い間違えて笑いが起きる場面も。そうして最後の最後は彼らの名を知らしめた「殺文句」を、再び気迫を持って、3人がひと塊になって届ける。"あなたに会えて良かった。またあなたに会えますように!"という陽報の言葉が響き渡っていた。

ライヴ後、輝直が"過去最高のライヴができた"とツイートしていた。手応えを自信に変えた彼らは、今度は自身最大キャパとなるZepp公演を含む全国ワンマン・ライヴ・ツアーへ出発する。

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