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INTERVIEW

Japanese

This is LAST

2021年06月号掲載

This is LAST

Member:菊池 陽報(Vo/Gt) りうせい(Ba) 鹿又 輝直(Dr)

Interviewer:秦 理絵

1stシングル『ポニーテールに揺らされて』で、This is LASTが新たな一歩を踏み出した。昨年11月に1stフル・アルバム『別に、どうでもいい、知らない』をリリースし、初の全国ワンマン・ツアーも成功を収めたLAST(This is LAST)は、よりたくさんの人に自分たちの音楽を届けるべく、メンバー全員で話し合ったうえで今作に臨んだという。結果、等身大の恋愛ソングであるという従来のLASTらしさは継承しながら、まったく新しいLASTに出会える新鮮な1枚になった。菊池陽報の"ドキドキするか"がキーワードだったという曲作りのこと、そしてこの先バンドが何を目指すのか、メンバー全員に語ってもらった。


いつまでもアマチュアの気持ちを引きずっていられない。音楽家として、より良いものを作らなきゃっていう気持ちが強くなってるんです


-1stフル・アルバムのリリース後は、初の全国ワンマン・ツアー([This is LAST「別に、どうでもいい、知らない」Release tour"走り続けてこそ人生"])を回りました。やり終えてどうですか?

陽報:バンドとして、今3周年を迎えたんですけど、全国公演をソールド・アウトしたっていうのが感慨深かったです。昔は柏の(ライヴハウスの)きれいな床に向かってライヴをしてたので(笑)。こうやって、もっともっとバンドをおっきくしていかなきゃいけないっていうのを、再確認したツアーになりましたね。

輝直:前身バンドでやってたときは、本当にフロアが丸見えの状態だったからね。今回はワンマンということで、LASTを好きな人だけが観に来てくれたから、本当に感慨深かったです。

-りうせいさんはどうでしたか? 初めての全国ツアーを振り返ってみて。

りうせい:基本的にセトリを決めるのが僕なので。ワンマンの長尺を作るのが大変でしたね。さっきてる(輝直)も言ってたけど、ワンマンって、僕らだけを観に来てくれてるわけじゃないですか。持ち時間が3~40分のイベントだと、イベントそのものの雰囲気でセトリを作ることもあるんですけど。ワンマンでは完全に僕らの世界観を作らなきゃいけない。そこで、僕らがライヴに懸けてる想いをどれだけ高い純度のまま音に反映させるか、みたいなところはずっと考えてました。曲間の繋ぎで世界観を作りたいな、とか。

-ツアー中、少しずつセットリストをブラッシュアップしてましたけど、ファイナルの千葉LOOKでは、完成したなって納得できるものになったんですか?

りうせい:僕の中での、今回のツアーではこれが正解っていうものにはなったと思います。まぁ、"MCが長かった"とは言われましたけど(笑)。

陽報:そこが見せたいところでもあるんですけどね。

-そんな、初のフル・アルバムを携えたツアーを終えてリリースされるのが、『ポニーテールに揺らされて』になります。とても新鮮に感じるシングルでした。

陽報:そのとおりの作品ですね。1stフル・アルバムを出したところで、バンドとして、ひとつの分岐点を迎えたんです。そこからThis is LASTが次に踏み出す一歩っていうときに、まず先にゴールを考えなきゃいけないと思って、3人で話し合ったんですね。ただ、いきなりゴールに向かってシフトチェンジすると、お客さんを置いていってしまったり、自分の書いてる曲が嘘っぽく見えてしまったりしたらすごく嫌なので。今まで自分たちが作ってきたLASTっていうものと、次の一歩として踏み出したものを交ぜて、納得のいく作品を作ったのが、この『ポニーテールに揺らされて』ですね。

-1stフル・アルバムまでがひとつの区切りとすると、それまでの期間っていうのは、LASTにとって、どういうものだったと位置づけますか?

陽報:アマチュアの時代から自分たちで曲を作ってきたんですけど、それは、ある種感覚だったんですよ。柏で培ってきた感覚の部分を伸ばしてきたんですね。それをぐちゃぐちゃに混ぜて、"This is LASTはこういうバンドだから"ってものを尖らせていったのが、1stフル・アルバムまでだったと思います。

-ということは、今のLASTは"感覚"ではなくなってきてる?

陽報:そういう部分も増えましたね。最近はいろいろな人がチームに入ってくださって、プロ・ミュージシャンとしての現場になってきてるんですよ。いつまでもアマチュアの気持ちを引きずっていられないっていう場面が、たくさん増えてきていて、音楽家として、より良いものを作らなきゃいけないっていう気持ちが強くなってるんです。

-その気持ちの変化はバンドにとって大きそうですね。

陽報:そうなんですよ。1stフル・アルバムまでは、自分たちのやりたいことをやってきた、みたいな感じなんですけど、ここから先は自分たちが求められるものも、プロとして落とし込んでいかなきゃいけないんだなって思ってるんです。

りうせい:1stフル・アルバムまでは、やりたいことを全部詰め込んだんですよね。本当にやりたいことがいっぱいありすぎたので(笑)。もっとドラムをうるさくしたいとか、もっとベースを歪ませようとか、コーラスを重ねようとか。それを全部詰め込みたかった。バンドっていうものも突き詰めたくて、1stフル・アルバムでは同期を使わないで、バンドの力を全部使おうって作ったりしてね。

輝直:1stフル・アルバムは等身大のLASTの集大成を見せた作品だったんですよね。だから、今回のシングルはその二番煎じにしたくなかったというか。"これ、結局アルバムの曲聴けばいいじゃん"って思われたくなかったんです。

りうせい:そうだね。この1枚で、This is LASTの新しいところが見せたいっていうか。その新しいところっていうのが、必要なものだけを入れることなんですよ。とにかくヴォーカルを立てる曲作りをしたんです。だから、ドラムも最小限だし。"そこはフィルを跳ねなくていい"って言ったりしたよね?

輝直:そうだね。

りうせい:ベースのフレーズも遊ばなくていい。遊ぶのはメロディが抜けたときだけっていう感じなんです。特に、2曲目の「君が言うには」は、1stフル・アルバムに入っててもいいような構成の曲なんですけど、聴くと全然違いますよね。オケの作りがしっかりヴォーカルのメロディに沿ってるし、本当に無駄なものを削いだので。

-不思議なのが、今の話をそのまま受け取ると"あ、今回はバンドの音はそんなに目立たないのかな"って感じるじゃないですか。

りうせい:はいはい。

-でも、実際に聴くとキメてくるところがしっかりキメてるから、逆にバンドの存在感は強く感じるんですよね。

りうせい:(※前のめり気味で)そこなんですよっ!

陽報&輝直:(笑)

りうせい:僕らもやってみて気づいたんですけど、うまい人たち、売れてる曲、いい曲って、本当に無駄なものを削いで、聴かせたい音だけを聴かせてるんです! この音を聴かせたいっていう明確な目的があって、この音が抜けてくる。......わかるでしょ?

輝直:うんうん(笑)。

陽報:すごい熱弁をしてくれてるから、ここはお前にすべてを託した(笑)。

りうせい:今回作りながら、ハッとしたんです。ELLEGARDENを聴いて"ここ、めっちゃギターかっけぇ"と思ったあの感覚が僕らの曲にも欲しい。でも、僕らの曲って"ここ、ギターかっこいいよね。でも、ドラムもかっこいいよね。ベースもかっこいいよね"ってなっちゃってたんですね。それもいいことなんですけど、一番聴かせたいのは、バンドのどこなんだろう? ってなってた。でも、今回のシングルでは、僕らがどこを聴いてほしいかっていうのと、聴いてくれる人が"ここめっちゃいい"って思うフィーリングが、ちゃんと合うはずなんです。いい曲って、きっとそういうことなんですよね。

陽報:僕はMr.Childrenがルーツなんですけど、学生のときにONE OK ROCKとか、ELLEGARDENとかもずっと聴いてたんですね。で、今回作ってるうちに、そういうサウンドに自ずと近寄っていったんですよ。がっつり参考にしたわけではないのに、"もうちょっと歪みを足したいな"とか、"ローをカットしたいな"とかやってると、"これONE OK ROCKじゃない?"みたいになったりしてて、そういう部分は面白かったよね。

輝直:うんうん。

陽報:楽曲がシンプルだからこそ、より自分の癖が浮き彫りになったので。改めて、俺やっぱりこういうのが好きなんだなっていうのは思いましたね。

-さっき"やりたいことからやるべきことにシフトした"っていう話もありましたけど、やるべきことをやってたら、結局、好きなことが浮き彫りになるっていう。

陽報:そうなんですよね。だから、やるべきことが自分たちの中で制限のようにも感じてたけど、全然違った。結局は自分たちのやりたいことがそこにあったんです。

りうせい:あき(陽報)にずっと言ってるんですけど、僕、今回の1枚でLASTがどこに向かってるのかが見えたんですよ。特に「君が言うには」が大きくて。僕らには珍しいミドル帯の曲なんですけど。今まで僕らはポップなこともやってきたし、ロックなのもやってきた。っていうなかで、「君が言うには」って、すごく気持ちいいところにいるんです。

-わかります。聴く人によって、ロックにも、ポップにも受け取れますよね。

りうせい:そうそう。だから、今回のシングルは1枚をちゃんと聴いてほしい。この1枚からLASTの新しい歴史が始まったんだって感じてほしいんです。