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INTERVIEW

Japanese

This is LAST

2021年06月号掲載

This is LAST

Member:菊池 陽報(Vo/Gt) りうせい(Ba) 鹿又 輝直(Dr)

Interviewer:秦 理絵

-改めて自分たちの進むべき道を明確に持ったことで、レコーディングの変化はありましたか?

りうせい:とにかくあきが"ドキドキしたい"って言ってたよね。

陽報:今回の盤のコンセプトは"ドキドキしたい"なんですよ。

りうせい:意味わかんないじゃないですか。

陽報:ふたりともずっと"意味わかんない"って言ってたよね。ふたりはいろいろアレンジを出してくれるんですよ、"こういうのどう?"って。それに対して俺は、ドキドキするか、しないかでしか判断しないから。"勘弁してくれ"って言われた(笑)。

輝直:例えば、「オムライス」はドラム始まりなんですけど。これは某夢の国の......。

りうせい:夢の国は1個しかないよ(笑)。

陽報:あそこのゲートの前に立つだけでドキドキするやん? みたいな。そういうことなんですよ。再生ボタンを押すだけでドキドキする。それを俺はここに入れたかった。

輝直:その感覚をドラムに出せって言われて。ディズニーの「ビッグバンドビート」をこういう感じって見せられて、それを参考にしつつ。

陽報:「Sing, Sing, Sing (With A Swing)」(Louis Prima)のオマージュみたいな感じでね。

-曲作りをスタートしたのは、ツアーを終えてからだったんですか?

陽報:いや、もう前作のフル・アルバムをリリースした直後には作ってました。

りうせい:早い段階で曲はできてたよね。「ポニーテールに揺らされて」は、最初タイトルが違ったんですよ。てるが"歌詞から抜粋したらどう?"って言ってくれて。

陽報:もともとは"7月の片想い"っていう、そのままのタイトルだったんです。そこから、みんなですごく頭を突き合わせて悩んだよね?

-輝直さんがそこを抜粋したいと思った理由はあるんですか? わりと直感?

輝直:直感ですね。ポニーテールって入るだけでかわいいじゃん?

りうせい:アイドルみたいだよね(笑)。

-陽報さんが作る段階から、そのフレーズが肝だったんですか?

陽報:もともと僕がポニーテールっていうものが好きだったんです(笑)。これも、自分の実体験から書いてる話ではあって。でも、今までみたいに純粋な実体験かっていったら、少し言葉をキラキラしたものに変えてるんです。まずAメロから浮かんで、それが夏っぽかったんですね。で、自分の中にある夏の記憶から、毒っ気があるところは抜いて。今までのThis is LASTは、そういうドス黒い感情を残していたんですけど、今回はそこを爽やかに転換したかった。そこが新しい部分ではありますよね。

-「ポニーテールに揺らされて」のアレンジは、さっき話してくれたように、感覚ではなく、より理論的にポップ・ミュージックを目指したことが、一聴してわかりますね。

陽報:アレンジを一緒に考えてくださる方たちと話し合ったときに、僕らの作り方って、もともと洋楽を聴いていた影響もあって、Aメロ→Bメロ→サビっていう概念が甘いって指摘されたんです。だから、今までのアレンジだと、これから新しくThis is LASTを聴く人が入ってきづらい。これから一段一段のぼっていきたいっていう意志があるんだったら、そこのセオリーは踏襲すべきというか......。

りうせい:王道をね。

陽報:そう、その王道を貫いてみたらどう? っていう話をされて。自分の中でスッと(腑に)落ちたんですよね。

-たしかに「ポニーテールに揺らされて」は、A→B→サビっていうオーソドックスな展開です。最後のサビ前にCメロが挟まって。

陽報:もともとCメロも全然違うところに入ってたんですけどね。僕はそういうのが好きだったんですけど。そこが日本のポップスに寄った部分かなと思います。

-あと、「ポニーテールに揺らされて」はメロディもとてもきれいなんですよ。

陽報:いやー、それはもう僕、天才なんですよね。あははは!

りうせい:それは間違いない。

陽報:そろそろ、もうメロディ・メイカーって呼んでほしいもん。

りうせい:今回、ディレクションをしてくれる人が"あきのメロディがすごくいいから、もっと伸ばしていこう"って言ってくれてね。

陽報:うん。3周年を迎えたのもあるし、自分が持ってるセンスにもっと自信を持ちたいし、より引き締めて伸ばしていかないとなっていうのはありますよね。

-あと、陽報さんの歌の話ばっかりになっちゃうんですけど......。

りうせい:それでいいです。とにかく「ポニーテールに揺らされて」は歌を立たせたい曲なので。

-落ちサビの歌い方に悲壮感が漂ってますよね。特に"この恋が終わる前に..."のところ。低めの音域で聞かせるのも珍しいですし。

陽報:まさにそう見せたかったから、頑張りました。レコーディングはめっちゃ大変だったよね。僕がずっと言ってた"ドキドキする、しない"のこだわりが、自分にもブーメランになって返ってくるんです。歌ってみて、なんかドキドキしないなぁって。何回も録り直したんですよ。"この恋が終わる前に..."の声の低さは、ただ低いだけじゃダメだなっていうのもあったし。あと、歌詞も違ったしね。

りうせい:俺が"嫌だ"って言ったんです。歌う直前に。

陽報:正直、俺も引っかかってはいたんです。でも、(腑に)落ちてはいて。他にも言い回しはありそうだな、でも、この歌詞もいいなって。

-りうせいさんは、そういうのを見逃さないですよね。

陽報:そうなんですよね。みんなにも相談してて、"まぁ、いいじゃない?"って言われてたんですけど。直前になってりうせいが"嫌だ"って言い出したときに、俺は、ひとりでも嫌だって言ってるものを、LASTとして出すのは違うと思ってて。1回レコーディングをストップして、この1行を考えたんです。

-徹底してシンプルな演奏だからこそ、歌に対しても、今まで以上にシリアスな判断が求められたところもあったのかもしれないですね。

輝直:うん。「ポニーテールに揺らされて」に関しては、本当に手数を減らしましたからね。ドラムもヴォーカルに寄り添うっていうことをすごく意識したんですよ。

陽報:嬉しかったのが、今回録ってくれたエンジニアさんが、本当にすごい方なんですけど、その方が"本当にいいドラムだね"って言ってくれて。

-エンジニアはどなただったんですか?

輝直:細井(智史)さんです。西野カナさんとかもやってる方で。

陽報:MAN WITH A MISSIONとか、スペアザ(SPECIAL OTHERS)とかね。その方が"こういう曲だったら、ドラマーは、もっと俺を聴いてくれ! みたいなフレーズを入れてくると思うけど、この子は、それをしっかり区別してる"って言ってくれたんです。"ヴォーカルのメロディをしっかり理解してる。本当にいいドラムだな"って。そこはベースも含めてなんですけど。リズム隊がすごくいいバンドだねって言ってくれたのが、めちゃくちゃ嬉しかったです。

りうせい:それもこれまでの盤がなかったら、辿り着いてなかったよね。

陽報:うん、1stフル・アルバムまでに積み上げてきたものが出てる。

りうせい:(1stフル・アルバムの)タイトルは"どうでもいい"だけど、全然どうでもよくなかったよね。

一同:あはははは!

-さっきも少し話に出た「君が言うには」の制作についても詳しく聞きたいんですけど。ギターが大きくリズムを作っていくようなアレンジは新しいですね。

りうせい:これ、あきは最初嫌がってたよね。

陽報:めっちゃ嫌がってた。俺はできるだけ歌に集中したいので。ギタボ(ギター・ヴォーカル)が何を言ってるんだっていう話なんですけど、そもそもギターが目立つのが嫌なんですよ。

りうせい:アレンジを作ったとき、たしかあきがいなかったんだよ。

輝直:ベードラ(ベースとドラム)でスタジオに入ったんだっけ?

りうせい:そう。そのときに、僕がギターを弾いてアレンジを作ったんです。で、あきに聴かせたら、"えー、微妙"とか言われて。なんでお前この良さがわからないんだ!? ってなったけど、あとからPCでデモを聴かせたら、納得してくれたんですよ。

輝直:あと、「君が言うには」はBPMを結構落としたんですよね。弾き語りの段階だと、170ぐらいあって。わりと速めだったんですけど。最終的に130ぐらいにして。そこで他の曲たちとの差別化もできたかなと思います。

りうせい:あきの持ってくる曲はほとんどファストだもんね。

陽報:速いロックンロールが好きなんですよ(笑)。だから、テンポを落とされるってなったときに、最初はちょっと抵抗があるんです。

輝直:逆に「オムライス」とかは変えてないんじゃない?

りうせい:むしろ少し速くしたよね。

陽報:いつも僕の意志とは裏腹なことが起きてるんです(笑)。

一同:あははは!