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LIVE REPORT

Japanese

MiMiNOKOROCK FES JAPAN -Special Edition 2019-

Skream! マガジン 2019年12月号掲載

2019.10.22 @吉祥寺CLUB SEATA

Writer 三木 あゆみ

2015年に産声を上げ、これまで東京にて4度開催し、すべてソールド・アウトしている注目のサーキット・イベント"MiMiNOKOROCK FES JAPAN"。同イベントのスピンオフ"Special Edition 2019"が吉祥寺CLUB SEATAにて開催された。これからのバンド・シーンを担うであろう20歳前後、年齢の近いバンド8組がひとつのライヴハウスに集まり、完全ソールド・アウトを達成したこの日のイベントは、1秒たりとも目が離せない熱い1日となった。

開演が待ちきれず、すでに昂っているフロアの手を出音一発で一斉に上げさせたのは、神戸の4人組、ofulover。中本 樹がギターをかき鳴らし、「国道2号線」を勢いよく歌い出す。装いはクールだが、4人が放つその一音一音には重みがあり、内包する熱がヒシヒシと伝わってくる。儚さの中にも強い想いが滲む「bouquet」では、美しく且つひりついたギター、低く繊細ながら力強い中本の歌声が胸に刺さる。オレンジの光が照らすなか、「自惚れ」で伝えた今日この日への切実な思い、噛みしめるように中本が放った"俺たちは神戸 ofuloverだ"には痺れた。そして、暗闇に一筋の光が射すようなキラーチューン「春を越えて」、疾走感溢れる「平凡少女」と、ラストまで駆け抜けていった。

続いて、横浜のレイラが登場。静かにステージに立ち、シューゲイザー風の「エンドロール」で会場の空気を一変させる。この日唯一の女性ヴォーカル、有明が紡ぐ言葉のひとつひとつと、感情をぶつけるように音を鳴らす楽器陣によるサウンドは、胸が痛むほどに切なく、リアルなシーンやストーリーが頭の中に流れてくるようだった。"金なんかなくたってさ、君さえいればそれでよかったよ"という歌詞が強烈な印象を与えるバラード「アパートの中で」では、思わず見入ってしまうほどの引力に引き寄せられる。最後の「Emma」では、未練や苦しい感情を"ありがとうね"と高らかに歌い上げる様が清々しく、各々の想いや感情、出せるものすべてを出し切り、4人はステージをあとにした。

浜口飛雄也の深みのある歌声が会場に広がる「オレンジ」でスタートしたmoon drop。ラヴ・ソングを主に歌うという彼らが奏でる音からは、過ぎていく一瞬一瞬の時間の尊さや切なさ、がむしゃらに駆けていくような"青春感"が感じられる。爽やかさの中に少し毒気が見える「センチメンタルガール」、真剣な顔つきで歌い上げたバラード「恋の断捨離」、そしてラストの「君に捧ぐ」までの6曲。"ただ演奏しにきたわけじゃなく、ただ歌いにきたわけじゃなく、「ライヴ」をしにきました"と浜口が言った通り、今このライヴハウスという場所で、この4人のバンド・サウンドを鳴らす意味を見いだすような、彼らの内側にこもった熱と勢いが、このステージから感じられた。

まさに"完全燃焼"と言えるアクトを見せたのは、Mr.ふぉるて。稲生 司(Vo/Gt)が"やるぞ!"と叫び、初っ端「偽愛」で威勢よく飛び出すと、フロアもその熱に応え前方に詰めかける。そのままダッシュで「気づけば」、ロックなリフが刺さる「幸福の唄」で等身大の衝動をぶつけていく。少年と大人の狭間で揺れながら、大人に近づくにつれて感じるやるせない気持ちやもどかしさを抱えて、不器用でもまっすぐに伝えてくる彼らの音像は、どこまでも純粋で説得力があり、グッとくる。彼らの代表曲「あの頃のラヴソングは捨てて」や「口癖」には、そんな感情が凝縮されていた。最後に稲生がマイクを持ち、フロアに飛び込むほど前のめりになり、「救いようのない世界で」を全力で歌い上げる姿は実に痛快だった。

この日、出演した8組の中では最年長だというBOYS END SWING GIRLがテンション高めに登場。爽やかな風が吹き抜けるような「ナスカ」でライヴをスタートさせる。次いで、ミラーボールの回るなか披露した「MORNING SUN」では、手拍子やジャンプを煽り、会場を徐々に巻き込んでいく。"至極のラヴ・ソング"と紹介したバラード「Goodbye My Love」や、タオルや拳が上がったライヴ・チューン「リベラル・セブンティーン」と、多彩なセットリストで、約30分の僅かな時間でもしっかりとバンドの色を見せつける。最後の1曲は、BOYS END SWING GIRLを象徴すると言えそうな清涼感溢れる「フォーエバーヤング」。冨塚大地(Vo/Gt)が語った、20代半ばとなり感じる周囲の変化や"夢を追うこと"への葛藤、それらをひっくるめて色褪せない青春を歌う姿は非常に眩しかった。

千葉県発3ピース、This is LASTが円陣を組み、気合十分でライヴを始める。1曲目からバンドのアンセムとも言える「殺文句」を放ち、フロアは手を上げ大合唱を巻き起こす。"みんなの歌声が大好きだ!"と菊池陽報(Vo/Gt)がこぼすシーンもあり、彼らのライヴを観ていると、会場にいる"みんな"とライヴを創り上げていくことを何よりも大事にしていることが伝わってくる。胸が痛むほどの恋愛体験を綴る「距離」、好きな人への未練が滲む「愛憎」と、リアルで生々しい言葉を並べる彼らが、嘘ひとつない想いを伝えるからこそ、客も同じ熱量で応えているのだろうと感じた。最後には"見守ってくれてありがとう"と柔らかい声で伝え、バラード「終電」でそんな陽報の声をフロアいっぱいに響き渡らせ、観客ひとりひとりの心にじっくりと刻みつけていった。

北海道のUMEILOのステージは、「Last Song」で幕開け。夜空が広がっていくような突き抜けるギターの音が耳に飛び込み、伊藤純輔の透き通った歌声に引き込まれる。MCでの様子はクールで落ち着いて見えるが、4人の演奏からは内に秘めたエモーションが湧き上がってくるのが感じられた。美しい高音ヴォイスに心をグッと掴まれる「春火鉢」、伸びやかな声が遠くまで届くような「夢路を終えて」と、胸に抱く強い想いを歌とサウンドに昇華していく。痛みも情けなさもひっくるめて、ストレートな言葉で伝えた「高空」ではシンガロングも巻き起こり、バンドと観客が一体となる。そして、これまで一組一組受け継いできたバトンを、次のthe shes goneへと大事に繋いでいった。

トリを飾るのは、the shes gone。浮遊感のあるサウンドと優しく柔らかい兼丸の歌声が響く「最低だなんて」から、ふわふわと水中を漂うようなギターとビート感が心地よい「甘い記憶」、リアルな歌詞が共感を呼びそうな「ラブストーリー」、女性目線で描かれた「想いあい」と、時に甘酸っぱく、時に切ない感情をグッド・メロディと小気味よいリズムに乗せ、しっかりと聴かせていく。"全部が全部楽しい曲じゃないし、悲しい曲じゃないけど、ライヴに来てくれたあなたのために歌う"と兼丸が語る通り、自分たちらしい演奏、楽曲で切実な想いを届けていった。アンコールではまっすぐに書いたという「シーズンワン」で温かな空気でフロアを包み、この日のイベントを締めくくった。

年齢やジャンルが近いバンド同士がひとつのライヴハウスに集まった今回の"MiMiNOKOROCK FES JAPAN -Special Edition 2019-"。似ている部分、共通するものもたくさんあるけれど、自分たちが何を大事にしているのか、バンドとしてどんなところを見せたいのかというのが、それぞれこんなにも違うのかということを改めて感じさせられた、見応えありまくりな1日だった。来年2月8日には大阪6会場にて"MiMiNOKOROCK FES JAPAN in 大阪 2020"が開催される。そちらもどんなイベントになるのか楽しみだ。



[Setlist]
■ofulover
1. 国道2号線
2. 渇き
3. bouquet
4. 自惚れ
5. 春を越えて
6. 平凡少女

■レイラ
1. エンドロール
2. SEASIDE
3. 最低
4. アパートの中で
5. Emma

■moon drop
1. オレンジ
2. アイボリー
3. センチメンタルガール
4. 恋の断捨離
5. 花束のかわりに
6. 君に捧ぐ

■Mr.ふぉるて
1. 偽愛
2. 気づけば
3. 幸福の唄
4. あの頃のラヴソングは捨てて
5. シガレット
6. 口癖
7. 救いようのない世界で

■BOYS END SWING GIRL
1. ナスカ
2. MORNING SUN
3. Goodbye My Love
4. リベラル・セブンティーン
5. フォーエバーヤング

■This is LAST
1. 殺文句
2. 距離
3. 愛憎
4. アイムアイ
5. 艶麗
6. 終電

■UMEILO
1. Last Song
2. ダーリン
3. 春火鉢
4. 夢路を終えて
5. 新曲
6. 高空

■the shes gone
1. 最低だなんて
2. 緑とレンガ
3. 甘い記憶
4. ラブストーリー
5. 想いあい
En. シーズンワン

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