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INTERVIEW

Japanese

ASIAN KUNG-FU GENERATION

2018年12月号掲載

ASIAN KUNG-FU GENERATION

Member:後藤 正文(Vo/Gt) 喜多 建介(Gt/Vo) 山田 貴洋(Ba/Vo) 伊地知 潔(Dr)

Interviewer:石角 友香

-(笑)曲の話をしましょう。「レインボーフラッグ」のいかにもロックンロールのリフが入ったあとにめっちゃ緩くなるじゃないですか? こういう展開を聴くと、単にパワー・ポップって言いづらいところもあるというか。

後藤:自分たちは演奏がそんなに上手くなくて、今もそんなに上手じゃないですけど、わりと昔からアイディアで補ってきたところがあると思うんですよね。面白い曲の構成であったりとか、自分たちでも何やってるのかよくわかんないことが功を奏してたりとか。例えば「無限グライダー」(2003年リリースの1stアルバム『君繋ファイブエム』収録曲)の前半とか、採譜するときにコード進行がわからないとかね。譜面に起こすプロとかも"ノー・コード"って書くしかないみたいな。そういう不思議なものを作ったりとか。まともに演奏力で渡り合っても勝てるものができなかったから、"普通そんなところには行かないだろ"っていう面白いアイディアをどう出し続けていくかみたいな、そういう考え方で初期のころは作ってたから、そういうところに戻ってきてるのかもしれないですね。ただ、昔よりもっとふざけてやってる感じ。昔は切実に変わったことを見つけないと、ちょっと違うバンドになれなかったけど、今はゲラゲラ笑いながらやってるっていうか。

-ふざけられるようになったのか、意識的なのかちょっとわからんぞって言うのは「UCLA」でした。

後藤:「UCLA」は最初のころなんで、バラエティに富んだものを作ろうとしてたときのものですね。

-これはリズムが最たるものじゃないですか。

伊地知:"チキチキ"って打ち込みはゴッチが作ったんだよね、サンプリングして。

後藤:作ったっていうか、潔の生のハットの音なんだけどね。だからサンプルは使わずにやりました。

-冒頭はちょっとトラップっぽいですね。

後藤:そうですね。結果、トラップにはしなかったんですけど。

-リズムの展開が最強で、そういう話をするには一番適したお題の曲なのかなと。

後藤:そのときは、ちゃんと物語を立てて曲が進んでいくような、言葉数が多い曲を作ってみたかったんで。最初、自分の声だけで録ったんですけど、やっぱこの2ndヴァースの女の子のくだりとか、女の子の声の方が絶対グッとくるよなぁと。誰がいいかなって考えて、Homecomingsの畳野(彩加/Vo/Gt)さんにやってもらったんですけど、めちゃくちゃ歌上手くて、録りも早かったんですよね。最近ゲストに呼ぶと、そういう人が多いんですよ。俺は7、8回も歌わされてんのに、なんでこの子たちは3回ぐらいで帰っていくんだろう? って、だんだん気づき始めて。ホリエ(ストレイテナーのホリエアツシ/Vo/Gt/Pf)君も早かったな(笑)。

一同:はははは(笑)。

-世代の問題では?

後藤:世代に逃げられないぞっていう(笑)。もしかして、俺以外みんな上手いんじゃないか......? っていう不安が今ありますけどね。

-(笑)ギターの話もしましょう。「さようならソルジャー」のイントロのギターが非常にグッとくるんですが。

喜多:はい。「さようならソルジャー」は僕も名リフが生まれたなと思って。シンプルで自分らしいなと(笑)。「さようならソルジャー」とか「モータープール」とかは今回、シンプル且つ印象的なリフだなと、自分でも"やったぞ"と思ってます。

-自分の中にあるオルタナ・マインドみたいなものがブワ~っと上がってくるんですよ。

喜多:「さようならソルジャー」と「ボーイズ&ガールズ」は最後の方にやったんですよ。なので、ああでもない、こうでもないってセッションして録ったって感じ。うまく曲が化けたというか、そういう2曲ですね。

-「ボーイズ&ガールズ」がアルバムのラストに位置するような曲で、それはシングルの段階では知らなかったけど、この曲がシングルだったというのは、ほんとにチャレンジングだったんだなと思いますね。

後藤:ね? 売れてねぇもんな、シングル(笑)。

喜多:そうなの(笑)? でもシングルにも強い想いがあったので。僕はどれがシングルでもいいなと思ってたぐらい、結構いい曲が揃ってきてる感じはありましたね。

後藤:愕然とした、自分の商才のなさというか。

喜多:でも、アルバムを通して聴いてみて、シングルにして良かったと今は思いますね。

-聴くと届く曲ですよね。

後藤:じっくり届くと思うんですけどね。前から別にシングルを買ってもらうようなバンドじゃないと思うし。アルバムをみんな待つ、みたいな流れはあるから。ファンの方は買ってくれるけど、そんなにシングルが売れなくても傷つくことはなくて。Spotifyでも結構回ってるみたいだし。

-でも今のアジカンを確かめたいから聴いてはいると思うんですよ。

後藤:おかしいんだよね。俺はこれで時代が変わると思ってシングルに選んでるんだけど、なかなか変わんない。サザン(サザンオールスターズ)みたいになるはずなんだけど(笑)。アルバムの最後に聴くと、全然気持ちが違うと思います。俺でもかなりグッとくるっていうか、救われるような感じが。