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INTERVIEW

Japanese

アルカラ

2015年04月号掲載

アルカラ

Member:稲村 太佑 (Vo/Gt) 田原 和憲 (Gt) 下上 貴弘 (Ba) 疋田 武史 (Dr)

Interviewer:天野 史彬

-なるほど。その意識って、さっきの普遍性の話と絡めると、自分たちの下の世代に何かを伝えたい、繋げたい、という意識にも通じると思いますか?

稲村:そうですね。"自分らのイベントに呼んだら、対バン相手のライヴは自分らが1番前で盛り上げろ"って、そういうのを教えてくれたのも神戸の先輩バンドでしたし......神戸って、そういうことを代々やっている土地なんですよね。"これを伝えるぜ!"っていう感じはないけど、でも、伝わる奴には伝わるだろうって思ってますね。

-わかりました。ではここからは『アルカライダー監修「アルカラボーナストラック大全集」』の話にいきたいんですけど、まず、アルバムやEPの最後に必ずボーナス・トラックを入れる理由はどこにあるんですか(笑)?

稲村:えーっとねぇ(笑)、BUCK-TICKの『darker than darkness -style 93-』っていうアルバムがあるんですけど、90何トラックくらい入ってるんですよね(※実際には93トラック)。本編が終わった後、2~3秒くらいのトラックがずーっと入ってて、それが80トラックぐらい続いた後にふわっとボーナス・トラックが始まる。昔は洋楽でも、そういうの結構あったんですけど、それが面白いなって思ったんですよ。最初にミニ・アルバムを作ったときのボートラは、アルバムで歌っている歌詞とかを全部まとめて「編集後記」っていう名前にしたんです。"この物語が終わった後、こうなりました"っていうことを歌って、最後のアウトロで1曲目のイントロを弾いて、作品がループする感じにしたり。そこまで感じてもらえるかはわからないし、自己満足かもしれないですけど、でもそういうことをやり続けようと思っていて......でも次の作品ではすぐに頓挫して、ライヴで録ったやつをとりあえずはめて(笑)。

-ははははは(笑)。

稲村:せっかくやってきたので、"これからもやろうよ"っていう感じでなんとなく続いてきたんですけど、"どうせ歌詞も載せへんのやし、本編でできなかったこと、歌えなかったことを滅茶苦茶やったったらええやん"って段々と思うようになってきて(笑)。こんなんしていいんや、あんなんしていいんや、こんな短い曲でもいいんや、曲って成り立ってなくても曲になるんや......そうやっていくうちに、段々とアルカラの"サブのカルチャーの芸術"っていう位置づけになっていったんですよね。今回の『大全集』は、それをひとつにまとめるとどうなるかな? っていう思いがあって。なので、面白かったですね。アルバム通してのトータリティとかは考えてないし、全部がそもそもおまけで付けている曲なので、全曲フィナーレ感があるんですよ(笑)。それが逆に面白いなって。

-今回の曲順は、『CAO』のボーナス・トラックだった「くだけねこのうた」から時系列を遡っていく構成じゃないですか。だからボートラが時代を経るごとにどういう変化を辿っていったのかも、曲順を逆に見ればすごくわかりやすいんですけど、もう本当に、時を経るごとに悪ふざけが悪化していますよね(笑)。で、それと同時に、音楽的なこだわりとか自由度もどんどん上がっていって。

稲村:だからこのアルバムは、段々とまともになっていくんですよね(笑)。また昔の録り音が無茶苦茶しょぼくて。それがいいんですけど(笑)。

-でも、去年、アルカライダーとして子供向けアニメの主題歌を担当したこともそうだし、このボーナス・トラックも、こういうアウトプットがあるのはアルカラにとって重要なことですよね。

稲村:そうですね。"アルバムでどの曲がよかった?"って訊くと、"ボーナス・トラックが1番よかった"って言う人も多くて。そういう位置にあって欲しいんですよね。美味しいハンバーグを食べて、美味しいステーキを食べたあとになんとなく食べる安いアイスクリームが美味しかったりするじゃないですか。そういうものであって欲しいと思いますね。コンビニで買ってきたのを入れてるだけなんやけどなっていう(笑)。曲も、完全にパロってるところとかあるし。本編ではそういうことはできないのでね。やっちゃうと、"アルカラってなんやねん?"っていうことになっちゃうので。"こういう面もあるよ"っていうところを見せたい意識はありますね。

-あと、去年のアルカライダーのシングルの感じとか、ボートラにオマージュやパロディがたくさん入ってくる感じを見ても、80~90年代のテレビのバラエティ番組の雰囲気を感じるんですよね。そこもアルカラにとってひとつのルーツとしてあるのかなと思って。

稲村:いいですねぇ。影響はあると思いますね。全然関係ないかもしれないけど、僕、"風雲!たけし城"(※1980年代後半に人気を博した、ビートたけしが司会のテレビ・バラエティ番組)がめっちゃ好きで。あれを見てると、たけしさんが喋ってるところとか、当時のテレビはテロップとか出ないので、何を言っているのか全然わかんないんですよ(笑)。また、たけしさんの頭の回転が速いんでしょうね。Aの話をしてたと思ったら、もうBの話になってて、トントントンと変わっていくんですよ。この出演者をイジってたと思ったら、もう別の出演者をイジってる、とか。今はもう言ったらダメなような話も平気でするんですけど、ああいうしっちゃかめっちゃかなところが、"風雲!たけし城"の面白味だと思うんです。こんな無茶苦茶が普通に成り立っていて、それが普通にゴールデン・タイムで流れていたんだと思うと、すごい時代やったなって思うんですよね。で、それが僕はよかったと思うんですよ。わかりにくいけど、わかりにくいからこそ、めっちゃ頭使わないと理解できないんです、たけしさんの話とか笑いは。だから、見る側のアンテナがごっつ成長するんですよね。大人になってから見たら、昔のバラエティってこんなに難しかったんやって思いましたもん。

下上:"笑っていいとも!"とかも昔はそうやったよな。

稲村:今は"笑いどころはここです"ってバーンと出るから、それはそれで統一感があって盛り上げる意味ではいいのかもしれないけど、もっとそれぞれが違ってもいいんじゃないか、とは思いますね。

-それって『CAO』の取材のときの「アブノーマルが足りない」の話にも繋がると思うんですよ。世の中、もっとアブノーマルなものがあっていい。今、アルカラはバンドとしてそういう場所になろうとしていますよね。

稲村:いやほんとに、"こういうことしてんのはアルカラだけだよ!"って、早よわかって欲しいですわ。10何年やってんのに(笑)。......まぁでも、そういうのが好きって言ってくれる人がいる時点でありがたく思いますね。それに今はまだ、それをやりすぎるとブレてしまうんじゃないかっていう恐れもあるし、自分らが絶対的にブレないっていう自信がついたら、またキャパシティも上がるのかもしれないし、それはわからないですけど......でもまぁ、自分らがこうありたいと思うやり方で変わらずやってきている証拠が、この『大全集』なのかなって思います。