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INTERVIEW

Japanese

アルカラ

2015年04月号掲載

アルカラ

Member:稲村 太佑 (Vo/Gt) 田原 和憲 (Gt) 下上 貴弘 (Ba) 疋田 武史 (Dr)

Interviewer:天野 史彬

-それって、言い換えるならば"普遍性"ということでもあるんですかね?

稲村:そうですね......やっぱり12年経って、昔の曲もセットリストに入れても、やってる人間が僕らで、僕らが人間として成長していく中で変わらない部分がしっかりあるんであれば、曲は色褪せないし、新曲中心のセットリストにもハマる。そういう部分をしっかり持っておきたいんですよね。そういう意味では、たしかに刹那的ではなく普遍的なものになっていきたいっていう思いがあったんでしょうね。それはこの日のMCでも言ってますしね。

-この日のMCでは"ガイコツアー"というツアー・タイトルの由来について、"骨になっても、子供や孫にも感動を与えられる普遍的な音楽を目指して"というふうに語っていますもんね。でも、そういう思いって、バンド結成当初からあったと思いますか?

稲村:いや、全然なかったですね。"今日のライヴをどうするか"っていうことばっかり考えながらやってました。要所要所で"もう辞めたろうかな"って思う瞬間もあったし。でも、自分たちが歩んだ道を振り返ると、結構な距離を歩いてきてるなと思うんですよね。"あんとき、あんだけ悪い道を歩んできたのは、今ここに来るためやってん"って言いたいなっていう思いがあるんですよ。昔の自分とか昔のアルカラが今の自分を押し上げてくれる気持ちにさせてくれるんです。それこそお客さんが0人の前でやることもありましたけど、その過去をいいものに変えられるか、"あんときはなんやったんや、ボケ!"って言ってしまうかは、その先の自分がどうするかやから。今は、そのすべてをいいことに変えられていると思うんですよ。

-なるほど。みなさんは、バンドの普遍性について考えることはありますか?

下上:普遍性か......10年目までは長くやってる気持ちもなかったんですけど、10年経ってから、結構振り返れるようになって。昔の曲ができるのって面白いなって思うし、その曲と共に過ごしてきた思い出も蘇るし......そういうのって、始めて1年、2年のバンドではできないことで。そりゃ、初めて観る人からしたら関係ないのかもしれないけど――。

稲村:うん。でも逆に言うと、その人からしたらそこから始まる何年かの1日目かもしれへんしな。だから、"ネコフェス"もそうなんですけど、状況がよくなったから場所を大きくしようとか、会場を増やそうとか......それって成長しているふうに見えるけど、違うものになってる場合もあるじゃないですか。そうなってしまうと、"続けていく"こととはベクトルが変わってしまうんですよね。1年目、2年目に来ていた人が、3年目、4年目、5年目になってくると、彼氏がうるさくなって来られなくなってしまった。で、6年目に彼氏と別れて、ちょっと大人になってまたライヴに来たときに、"まだアルカラあんな感じでやってんねや"って思って欲しいというか。そういう、戻ってこられる場所でありたいし、もちろん出会える場所でもありたい。人って出会って別れても、別れてしまったら終わりじゃなくて、再会することもあるじゃないですか。アルカラはそういう場所でありたいと思いますね。僕らが12年経っているっていうことは、かつてキッズだったけど、今はもう子供産んだりしてる人もいるわけですよ。その子らがこういうタイミングで神戸とかから観に来てくれると、やってる側にも熱いものが込み上げてきますし。そこに自分らの普遍性を感じられるというか。

-お客さんが帰って来られる場所であることが、バンドの普遍性に繋がる、と。

稲村:人気が出てお客さんに若い子が増えても、昔から応援している人の入る余地がなくなるのは、アルカラが求める感じではないのかもしれないなって思いますね。今の僕らがやるべきことは、一瞬目をつむってしまったしまった人がいても、目を開いたときに"こいつら変わってないな"って思わせるような歩み方をすることなのかなって。変わらずにいることって、音楽の場だけじゃなくても難しいことだと思うんですよ。でもアルカラを見ることで、それに対する勇気を感じられるのであれば、アルカラの存在意義もあると思うし。そういう、アミューズメント・パークでもあるし、戻れる場所でもあるし、でも常に新鮮な場所であるっていう、矛盾してるけど理想的な場所にアルカラがなっていけば、唯一無二なものに近づいていけるんかな、とは思いますね。

-人や時代が変わっていくことは仕方がないかもしれない。だけど自分たちは変わらずにここにいるっていう、そのスタンスは聴き手にとってものすごく優しくて、心強いものかもしれないですね。

疋田:ちょっと前に、結成10年目の記念ライヴを地元でやったんですよ。あのときは"もう10年やってきたんや"って思ったんですけど、そのときに、変わってる部分もたくさんあるんですけど、同じメンバーでやり続けてきたことによって、変わらない部分もたくさんあったことに気づいて。長くやればやるほど、同期のバンドたちは解散したりしているんですよね。でも、"10周年ライヴやるから復活して"ってお願いしたら、復活してくれるバンドが結構いて。それは、俺らが変わらずにやり続けてきた結果なのかなって思ったんですよね。それが普遍性かどうかはわかんないですけど、自分たちがやりたいと思ったことをやり続けた結果がそれだったとしたら、それが20周年、30周年、40周年ってなったときもできたら面白いなって思いますね。

田原:僕もギターウルフを観て思ったんですけど、"この人たちってずっとこうなんやろうな"って。だからすごいなって思ったんですよね。僕の好きなバンドは、ずっとブレずに続けているバンドが多くて。それはたしかに、ひとつの目標でもありますね。僕も10年過ぎたぐらいから"めっちゃやっとるやんけ!"って思って(笑)、それが11年目、12年目と更新されていっているんですけど、でも、バンドとしての理想の形のひとつはそこにあるなと思う。

-あと、この日感動的だったのが、稲村さんがツアーで対バンしたバンドの名前をすべて列挙しながら、彼らに感謝を伝える場面があったじゃないですか。ああいう場面からも、周りのバンドに対する愛をすごく感じるんですよね。これはアルカラの特徴のひとつだと思うんですけど。

稲村:これはね、僕らの気質なんですよ。アルカラって、地元でも1バンドでハコを埋められるほどではなかったし、ずっとみんなと一緒にやってきた感覚があるんですよね。誰かのイベントに呼んでもらったから、いっぱいの人の前でやれるし、自分らもバンドを呼んで、お互いが頑張ってお客さんを呼んでいくことで会場を埋められるっていう考えのもとで育ってきたから、自分らさえいいライヴすれば、他がよくなくてもええわっていう発想は成り立たないんですよね。みんなが楽しくないと意味がないんです。昔のバンドの気質なのかもしれないですけど、"みんながいて自分がいる"っていう意識があるから、だからネコフェスも、みんながいるからああいうイベントができるって思ってますし。音楽的にアルカラが幅広い見せ方をできるのも、それこそギターウルフみたいに"ロックンロール!"って言ってる方から、今の一線でやっているバンドだったり、東京にはあんまり出てこられないけど、でも地方でしっかりやっているバンドと繋がって、それぞれの良さを感じられるポジションにいるからだと思うんですよね。いっぱい学ぶところはあるので。"対バンは絶対に1番前で見よう"とか言ってた時期もありましたもん。