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INTERVIEW

Japanese

ハルカトミユキ

2013年11月号掲載

ハルカトミユキ

Member:ハルカ (Vo/Gt) ミユキ (Key/Cho)

Interviewer:天野 史彬

-ミユキさんは、この「長い待ち合わせ」の歌詞を見た時に思うことはありましたか?

ミユキ:そうですね......私の中で「長い待ち合わせ」は、なんとなく「Vanilla」に近いような感じがしてて。自分の中でも、アレンジをする時に、真剣に取り組まないとなって......(笑)。

ハルカ:えぇっ(笑)?

-他の曲は真剣じゃないみたいですけど(笑)。改めてそう思うくらい、切迫したものがあったんですね。

ミユキ:そうですね。「長い待ち合わせ」は隣で弾きながら、自分の中にもこういう体験があるような感じがして、演奏してて顔が引きつるというか(笑)。

ハルカ:(笑)

-確かに「長い待ち合わせ」って、多くの人にとって思い起こさせる体験がある曲だと思うんですよ。この曲って、人にコミュニケーションを求めていって、その先に傷ついたり裏切られたりする未来があって、それでも人に何かを求めてしまうっていう気持ちを歌ってる曲だと思うんです。多くの人って、そこで傷つくのが怖くて1歩引いちゃったりするじゃないですか。インディーズの頃のハルカトミユキにも自分を守るために1歩引いちゃう感覚ってあったと思うし。

ハルカ:そうですね、それはありました。元々、捻くれて書きたいタイプだったので、自嘲したり、自分を皮肉ったりする書き方をしてて。誰か人に対して訴えかけるというよりは、自問自答してるのが漏れているっていう感覚のほうが近かったかもしれない。インディーズの頃は、外に向かって言うのと同時に、自分にも言ってるっていう気持ちで書いてました。そうしないと面白くないし、全然いいと思えなかったんですけど、それは防御してたってことかもしれない。それはあると思います。

-でも、この曲に自嘲はないですよね。

ハルカ:ないですね。そんなに自嘲する余裕はないですよね。自嘲するところまでいけずに、もっと内側を剥き出しで書いてる感じはあります。剥き出しで書きたかったんですよね。今までのハルカトミユキだったら自嘲したその先で書いてるところを、もっと手前で書いてみようっていう感覚で書いてて。そういう表現をしてみたくなったんだと思います。

-で、この剥き出しの傷ついた光景っていうのは、「長い待ち合わせ」以外にもタイトル・トラックの「シアノタイプ」や「ナイフ」っていう曲にも書き方は違えど描かれているものだと思うんですね。それぞれの曲が報われない未来を感じさせながらも、それでも人に期待してしまう、人にコミュニケーションを求めてしまうっていう姿を描いてて。それが、このアルバムに今までとは違ったトーンを与えてると思うんです。

ハルカ:そうですね......「シアノタイプ」では<少しだけ未来を期待してしまうから/できるだけ気づかれないように笑った>って歌ってますもんね。......結局、ずっと期待はしてるんですよね。インディーで出した2枚でも期待はしてるんですけど、あの時はそれを隠すことに必死で。その結果として、期待とか、自分の素直な部分が見え隠れするようなものを書いてきたと思うんですけど......ここに来て、何も隠さずに自分が本当に傷ついてる姿とか、人に期待してるっていう気持ちも書けてるのかもしれないです。ずっと皮肉や自嘲の混じった書き方をしてはいるけれど、もちろん期待と諦め、どっちが根本にあるかと言うと、やっぱり期待ですよね。じゃなかったら歌いもしないですし。

-うん、「長い待ち合わせ」に<疑いの意味も知らない少女は/好きな歌を歌った>っていうラインがありますけど、結局、ハルカトミユキの本質ってここにあるような気がするんですよ。凄く無垢な部分というか。だからこそ、疑いを知った時の反動で怒りのエモーションも凄く強いものになるし。そういう意味で、このアルバムは凄く裸になったアルバムだと思うし、それって実は凄く攻撃的なことですよね。

ハルカ:確かに。今までは武装してた分、ここで裸になったらもっと怖いかもしれないですね(笑)。