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Japanese

indigo la End

2018年07月号掲載

indigo la End

Writer 沖 さやこ

2017年7月にリリースされたindigo la Endのフル・アルバム『Crying End Roll』。そのリリース時のインタビューで川谷絵音(Vo/Gt)は、"『Crying End Roll』はもともと「Play Back End Roll」という楽曲を中心に制作が進んでいた"と話した。この「Play Back End Roll」という楽曲は、本来ならば『Crying End Roll』のタイトル・トラックにもなる予定だったそうだが、結果として収録されなかった。その理由について"歌詞も完成していたがどうしても歌えなかった。その時期の自分の感覚に、なんだかハマらなかった"と彼は語っていた。

当時のインタビューで彼はこう続けた。"2016年のライヴでも演奏していた「煙恋」も『Crying End Roll』には入れていないし、ほかにも歌まで録っていて完パケしている曲もあったり、できていたけど入れていない曲はあるんですよ。その曲たちは、『Crying End Roll』の曲たちと同時期に録っているんだけど、ちょっとこのアルバムとは違うカラーのものというか"、"「Play Back End Roll」は結構大事な曲で、(メンバーやチームの)全員がこれはいいよねと思っていたし、自分でも気に入ってるんで、然るべきときに出したいなという感覚もある。『Crying End Roll』のあとに「Play Back End Roll」を出したら、より熟した感も出るんじゃないかと思う"――それから5ヶ月後、indigo la Endは4曲入りの配信シングル『冬夜のマジック』をリリースする。同作のカップリングには「Play Back End Roll」も収録されていた。

その後indigo la Endは、2018年4月に高音のファルセットが辿るサビメロが印象的な「ハルの言う通り」を、6月にストリングスを招いたミディアム・ナンバー「蒼糸」を配信リリース。季節にリンクさせながら4つの楽曲を放ち辿り着く『PULSATE』は、この4曲だけでは見えなかったindigo la Endの深層を表す作品であり、あの4曲はバンドが『PULSATE』に辿り着くために生んだものだったのだと腑に落ちた。


PULSATE=脈打つ、鼓動する


思い返せば、indigo la Endもゲスの極み乙女。も、作品のキーとなる楽曲はその場のインスピレーションで形を成すものが多かった。今年の1月に行ったゲスの極み乙女。のインタビューで川谷は"曲が完成したと思ったから世に出しているだけ。制作にどれだけ時間がかかるかは関係ない"と言っていたが、『PULSATE』が深度の高い作品になったことは、制作から世に出るまでの時間が普段よりも長い楽曲が多いことも、少なからず影響している気がしてならない。

前作のタイトルに含まれる"Crying"も、今作の"PULSATE(脈打つ、鼓動する)"も感情の昂りに不可欠な要素。"PULSATE"という言葉は「Play Back End Roll」の歌詞の"都合の良い血が通ってるだけ"や"野放しの命"などから用いられたものだろう。"命"は、前々作『藍色ミュージック』から歌われることが多いテーマでもある。『PULSATE』の楽曲は恋心を歌ったものもあるが、それらも恋心に主眼を置いているというよりは"生きること"に恋の成分がまぶされている印象を受ける。『藍色ミュージック』にも「藍色好きさ」と「インディゴラブストーリー」という、バンドに関連づいたタイトルを持つ楽曲を頭とラストにあてがうところにバンド像が投影されていたが、『PULSATE』ではさらに、"indigo"という色を紐づけた単語を擁する「蒼糸」で幕を開け、「1988」という川谷の生まれ年がタイトルの楽曲で締めくくる。彼がここまで明確に自分自身を示す単語をタイトルに持ってくることは今までなかった。収録曲が進むごとに様々な感情を旅するような感覚にもなるし、同時に少しずつ川谷自身にフォーカスが絞られてくるようでもある。



「蒼糸」は、indigo la Endがこれまで育んできた本質の純度を高める美しいバラード。メロディのキーも近年のindigo la Endの楽曲の中では低めで、メロディ・ラインも陰を宿しながら美しさを持ち、川谷の声の響き方も自然体だ。「ハルの言う通り」のサビの"バイバイ熱恋よ"のような"メロディと言葉が作るリズムの妙"は、川谷のソングライティングの特徴のひとつであるが、今作は詞の内容をなぞるような物語性を持ったメロディ・ラインも多い。「1988」には"言葉で小さな命をつぐむ"という意味深なラインもある。彼の言葉、そしてメロディの捉え方というものにも、変化が出てきているのではないだろうか。

歌詞とメロディの自由度が増したのは、間違いなく長田カーティス(Gt)、後鳥亮介(Ba)、佐藤栄太郎(Dr)という楽器隊の存在が大きい。特に佐藤栄太郎のドラミングは、彼がindigo la Endに加入したときから目を見張るものがあった。このバンドが元来持っていたタイトでスマート、且つエモーショナルでほのかに毒気も感じさせる性質は、彼の加入で花開いたと言っていい。センチメンタルなコード進行とメロディ・ライン、ピアノの旋律が際立つ「ハルの言う通り」がindigo la End流のロックとして成立しているのも、彼の手腕が発揮されているからだろう。長田と後鳥はバンドの持つ繊細で優美な要素を広げていくことに長けていて、ミディアム・ナンバー「星になった心臓」では、ふたりの豊かな感性と技術によって生まれた音色を存分に堪能できる。長田がSkream!にて連載中のコラム"indigo la End 長田カーティスの「月刊長田」"内で自分たちのことを"ライブを盛り上げようって気もあんまり無く、なんならどんどん内にこもっていってる気がするバンド"(※2018年5月号掲載分より)と冗談めかして綴っていたが、演奏することに真摯に向き合っているバンドだからこそ表現を磨くことができるのだろう。

『PULSATE』は『Crying End Roll』と同様に、既発曲のリミックスが2曲収録されている。今回のアレンジャーは、NY生まれハワイ育ちで東京を拠点に活動するDJ/プロデューサーのHVNSと、大阪を拠点に活動するプロデューサーのMetome。Metomeによる「プレイバック」リミックスは、原曲からヴォーカルだけ引用して構成されている。indigo la Endが日本のバンド・シーン、お茶の間のフィールドにとらわれず、自分たちのアンテナに反応する音楽を自由に追求していることは、楽曲だけでなくリミックスを依頼するアーティストにも表れている。バンドの育んできた本質を高純度で封じ込めた『PULSATE』。静かに燃える命の火は深く青く、切なくも温かい。それがindigo la Endの持つ音楽への愛情の色と温度なのだろう。



▼リリース情報
indigo la End
4thフル・アルバム
『PULSATE』
2018.07.18 ON SALE
[WARNER MUSIC JAPAN]
初回プレス分に全国ワンマン・ツアー"1988"の最速先行抽選シリアル・コード封入

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【初回限定盤】(CD+DVD)
WPZL-31472~3/¥3,800(税別)
amazon TOWER RECORDS HMV

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【通常盤】(CD)
WPCL-12889/¥3,000(税別)
amazon TOWER RECORDS HMV

[CD] ※通常盤、初回限定盤共通
1. 蒼糸
2. 煙恋
3. ハルの言う通り
4. Play Back End Roll
5. 星になった心臓
6. 雫に恋して(Remix by HVNS)
7. 冬夜のマジック
8. Unpublished manuscript
9. 魅せ者
10. プレイバック(Remix by Metome)
11. 1988

[DVD] ※初回限定盤のみ
"蒼き花束vol.2 at 中野サンプラザ"
1. she
2. 見せかけのラブソング
3. 夏夜のマジック
4. 心雨
5. 幸せが溢れたら
6. 鐘泣く命
7. 想いきり
8. 夜明けの街でサヨナラを
9. 素晴らしい世界
10. 大停電の夜に
11. インディゴラブストーリー

■「蒼糸」先行配信中&『PULSATE』プレオーダー実施中
~7月17日(火)23:00
※プレオーダー中は特別価格 ¥1,800(定価 ¥2,300)

■iTunes Storeアルバム購入特典
「冬夜のマジック」ライヴ映像("蒼き花束vol.2 at中野サンプラザ")
※プレオーダー期間外のご購入でも特典をプレゼントいたします

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