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月蝕會議エンドウ.の"月蝕會議室24時"【第14回】

2023年12月号掲載

月蝕會議エンドウ.の"月蝕會議室24時"【第14回】

プロのミュージシャンになるためには、ウン十万、ウン百万する機材が必要なのか。もちろん答えは「No」です。世界的に有名なアーティストでも、インディーズデビューアルバムは1000ドルで制作されただとか、ゴミ捨て場で拾ってきたギターを使い続けている大物プロミュージシャンなどなど、お金をかけないエピソードは山のように存在します。そんな僕も人生初の全国流通アルバムは全11曲を6万円でレコーディングしました。機材なんかも10万円くらいのギター以外なんにも持ってませんでした。

そんな倹約エピソードとは逆に、当然豪華でセレブリティなエピソードも溢れています。プロ用レコーディングスタジオのミキサー卓は1億円以上するものもあるだとか、マライア・キャリーも愛用したレコーディングマイクは100万円以上するだとか、そもそも有名スタジオを使うだけで1日何十万円もかかるだとか、あるギタリストは足元のエフェクトシステムを1000万円で特注しただとか、上を見たらキリがありません。

界隈を見渡しても、稼いだ金を高い機材につぎ込むミュージシャン・クリエイターは意外に多く、もはや機材を買うために音楽をやっているような人々もいます。そもそも音楽をやるための機材だったはずなのに!


さて、先日は月蝕會議のレコーディングがありました。主にドラムの録音です。日本のリハーサルスタジオやライブハウスにはドラムセットが常設されていることが殆どなので、ドラムセットを持っていなくてもドラマーになれます。ドラムセットを持たないままのドラマーも、キャリアの最初のころは多いでしょう。しかし海外のライブハウスなどにドラムセットがあることは非常に稀なので、皆ドラムセットを持っています。

実は日本のレコーディングスタジオには、ドラムセットが置いてあるなんてことはほとんどありません。みんな自分の機材を持ち込むのです。そんなの当たり前に聞こえますが、日本のリハ用スタジオやライブハウスには常設機材が豊富なので、駆け出しの頃は気付けなかったんです。初めてレコーディングスタジオで録音したときに、ドラムセットが置いてなくて驚愕したことを覚えています。ああ恥ずかしい。

というわけで月蝕會議のレコーディングでは、当然楠瀬タクヤ氏が自前のドラムを持ち込んで、曲によってスネア(太鼓の名前)を交換して音を変えたりします。シンバルの音を拾うマイクは、スタジオ所有の1本100万円以上するものを2本も使いました。なんかキラキラした音でした。スタジオには他にも100万円くらいする機材がほんとに100個くらいあっていつも凄いと思います。こんなに機材揃えて、元取れてるんだろうかと余計な心配をしてしまいます。そんな僕は1000円のケーブルを使ってギターを録音しました。

月蝕會議

全員が作詞、作曲、編曲家でありアーティストでもあるバンド形態の音楽ギルド。それぞれのスキルと個性を"co-write(コライト)"の化学反応によって高次元でまとめあげる。ももいろクローバーZや"ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-"など、アーティストや作品の音楽プロデュースや、バンド・サポートも請け負う。2021年にはアルバム『月蝕會議2019・2020年度議事録』を発売。2023年10月にNintendo Switchソフト"マツリカの炯-kEi- 天命胤異伝"ED主題歌「時の輪」を配信リリースした。