Japanese
ビッケブランカ
2018年12月号掲載
Interviewer:吉羽 さおり
ファンタジーな世界への導入となるような、語りとポップなピアノによるイントロダクション「Wizard」で始まり、一気にめまいがするような極彩色の音が渦となって冬の景色を染め上げていく「Winter Beat」、そして息が白くなるしんとした冬の美しさが眩しい「まっしろ」へと続く。ビッケブランカの2ndフル・アルバム『wizard』は、彼のポップな世界をより濃厚に、そして新しい扉をどんどんと開け放った作品となった。ストリングスやブラスが歌う構築的な曲から、ロック、新たにEDM、エレクトロ・チューンも同居するアルバムは、無限のジューク・ボックスや小宇宙のように広がっている。それぞれの曲が突き抜けているからこその面白さで、リスナーは様々な曲を探索できる楽しさがあるアルバムだろう。
-ワクワクするような語りで始まるイントロダクション「Wizard」からスタートして、濃いポップな世界が展開していくアルバムとなりました。今回は、どんな構想でアルバム制作がスタートしていったんですか。
毎度そうなんですけど、アルバムを作るからこれをテーマにっていうのは、基本的にはないんです。そのときに作れるものを作って、7、8曲できあがってくるとだんだんと全体像が見えてきて。それが9、10曲目とできあがったところで、"wizard"っていうタイトルにしようと決めました。1曲目の「Wizard」はアルバム名が決まったから書いたという感じですね。流動的に、まずは全部をバーッと散らかして書いていくっていう感じです。
-今回はアルバムに先行してシングル曲のリリースも多かったですが、その点をまとめるうえで、難しさなどはあるんですか。
シングル曲、既発曲を入れるのが初めてだったので、どうなるのかなと思ったんですけど、ただ、アルバムとしてテーマを掲げていないぶん、難しさはなかったですね。何をしてもいいと感じたので、作りたいものを作るという。アルバムの曲を自分で並べてみて、なんとなくこの要素が足りないかなというのを、それが合っていようといまいと、作らせてもらえるという状況でした。
-シングル以外で、制作の最初の方にできていた曲はどのあたりですか。
頭の2、3曲ですかね。「Winter Beat」、「まっしろ」っていう冬の曲ができあがって。そこからアルバム曲を作っていった感じでした。
-「Winter Beat」のような、ストリングスが入って、重厚且つポップな世界っていうところは、引き続きビッケブランカの音楽世界としてアップデートされていますね。
そうですね。ピアノと弦とで、荘厳にならずにやれるっていうのは、自分でも好きなんだろうなと感じます。弦がメロディになっているというか。バッキングの弦ではない、というところはこれからも変わらないと思いますね。後ろにバーっといる弦ではなくて、ピアノとかと一緒に横で並んで、前に立ってやっている弦の存在感というバランスはあるんじゃないかなと。
-背景的でオーケストラ的な弦楽器ともまた違う、ビッケブランカの曲においてのそういう弦楽器の立ち位置は、もともとどういうところから生まれているんですか。
メロディが息継ぎしている瞬間に、楽器がそこで歌う。その一瞬を歌うっていうのは、すべてにおいてあるんです。自分がいろんなことに関してすぐにダレる性格なので、曲の中では一瞬もダレる瞬間があってほしくないというか。でも、退屈するのもイヤだから、メロディがない部分にもちゃんとメロディに変わる主役がいる状況にしたいというのは、無意識にありますね。それを最近は弦が担っているだけであって、昔の曲だとそれをラッパが担っている曲もあるし、ピアノの右手のカンカンカンっていうのの曲もあるし、という感じです。
-音が常に鳴っている、その濃い密度がいいわけですね。
そうですね。だらんとした"いらんだろうこの間"っていうのを、なくしたいんですよ。だから昔から自然と、だらっと長いイントロとか、長いアウトロというのがない傾向にありますね。曲が4分いったら負けだと思っているくらいですから。
-そうなんですね(笑)。そのなかでいかにして曲を展開して遊べるかということもたくさんしていますね。最後の曲「Great Squall」なんて、最後の最後まで展開していきますからね。
もうギリギリまで(笑)。最後、くどいくらい展開していきます。
-面白いなと思いました。あと、今回新鮮なところでは、打ち込みの曲、EDM曲が「キロン」と「Smash(Right This Way)」の2曲収録されたことで。これはチャレンジというか、いつもとは違った思考回路で作られた感じですか。
この2曲は今回のアルバムで好きな曲です。楽しかったですね。3~4年前からめちゃくちゃ好きなジャンルではあるんですよ。今までも、いろいろ作りたいもの、作るべきものを作ってきましたけど、こういう曲はあまりにも個性的すぎるジャンルで、サウンド感が何もかも違うので、作品に入れにくかったところではあったんです。だから、作りもしなかったんですよね。好きだけど、作ってもビッケブランカとはかけ離れた感があって。でも今回、入れられる塩梅で作り上げることができたので、自分の曲として発表したいっていうものだったんです。ちょっと前には、"別名義で走らせてみたらどうか"という話が出るくらい、違うニュアンスのものだったので、それをアルバムの中に入れることができたのは、むちゃくちゃスッキリしましたね。
-「キロン」と「Smash(Right This Way)」でアレンジを一緒にやっているAViAさんとは、どういう経緯で?
AViAさんは名古屋の知り合いで。愛知県にカルテット.というグループがいて、そのカルテット.自体はFUNKY MONKEY BABYSのような感じなんですけど、そのサウンドメイキング、DJをしているのがAViAさんなんです。すごくセンスがある人だと思ったので、今回アレンジをお願いしました。こういう"シュワ~"みたいな音を自分で作るのは大変なんですよね。好きだけど、今までやったことがなかったから、自分でやるとなると時間もかかるし、こういうものが欲しいというのを伝えて、そういう音をいっぱい作ってもらいました。
-そうだったんですね。
本物の音にするためにという。でも結局、EDMのようなジャンルでもメロディが命だと思うので、キックの音がいかにいいかとかは、アンダーグラウンドで話し合ってもらえば良くて。オーバーグラウンドに行くうえでは、音でバーンといく手前に何が歌えるかだし、バーンといったときの、リードのシンセのメロディ・ラインであると思っています。
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