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INTERVIEW

Japanese

ビッケブランカ

2017年07月号掲載

ビッケブランカ

Interviewer:秦 理絵

曲ごとに表情を変えるピアノの旋律、伸びやかなファルセット・ヴォイスと緻密なコーラス・ワーク。そして、ライヴで魅せる華やかなショーマンシップ。すべてが新人としては規格外なクオリティをもって昨年10月にメジャー・デビューを果たしたシンガー・ソングライター、ビッケブランカが初のフル・アルバム『FEARLESS』を完成させた。CMソングとして大きな話題を呼んだ「Slave of Love」を始め、ジャンルレスな音楽を取り入れた全12曲。前作ミニ・アルバム『Slave of Love』を作り上げ、自分自身を探す季節には別れを告げたビッケブランカは、その集大成となる今作『FEARLESS』の中に、そこで得た答えをすべて注ぎ込んでいた。


いままで培ってきた知識と経験だけを全力でやったらどうなるかを今作では知りたかった


-フル・アルバムを作ったのは初めてだと思いますけど、作り終えた心境はどうですか?

いま自分が作れるものを作り終えたなぐらいの感じですね。1枚目っていう気張りもなく。言うならば、何枚も出す中の1枚目でもあり、かといって2枚目を出せるとは限らないっていう感覚もある。これが最後になるかもしれない。その両方の感覚の中で自分が満足できるように、気張らずに、一生懸命にやった感じでしたね。

-落ち着いてますね。さすが伊達にここまで苦労してきたわけじゃない。

まさにそうですね。だからもし何か考えてたことがあるとすれば、同じ曲ばかりになって、僕自身が退屈するアルバムになったら嫌だなっていうことですね。自分は飽き性なところがあるから。でも絶対に同じ曲は入れたくないんじゃなくて、それも心掛けるぐらいで。どの曲を入れるか決めずに作っていきました。

-じゃあ、最初はアルバムの全体像みたいなものがないまま作り始めたんですか?

なかったですね。

-前作『Slave of Love』(2016年リリースのメジャー・デビュー・ミニ・アルバム)では、自分らしさは何なのかっていうのがひとつ向き合うべきテーマだったと思いますけど、そのあたりはどうでしたか?

あぁ......そこはもう越えちゃってるなと思いましたね。なんとなく自分がどんな人間なのか、自分に対する理解は前作で深まってるから。それはもう自分が完成されたっていう意味じゃなくて、自分がこのままでいることが重要だった。いままで培ってきた知識と経験だけを全力でやったらどうなるかを、今作では知りたかったんです。

-そういう自分への探求心があるなか、アルバムを作っていくなかで、この曲がポイントだったっていう瞬間はありましたか?

「THUNDERBOLT」(Track.12)ですね。この曲ができたときに"これは1年前の自分には作れなかった曲だな"と思いました。新しいことが見えた気がしたんです。

-サウンドにおいて? 歌詞において?

両方ですね、すべてにおいて。まず構成がいままで自分が作ってきたものとは圧倒的に一線を画してるんです。この曲はサビがふたつあるんですよ。A、B、サビ、サビダッシュを2回繰り返して演説で終わる。この構成は日本ではポピュラーな作りじゃないけど、ちゃんと日本の音楽史も踏まえながら、なおかつ新しいものにできたので気に入ってるんです。あと歌詞で言うと、前作、前々作ではすごくパーソナルなものを歌詞に書いて、それを聴く人がそれぞれの捉え方で聴いてくれればいいっていうスタンスだったんです。でも今回は、自分の感覚はみんなと同じ感覚なんじゃないかっていうところにいったんですね。だから、この曲は本当の意味で"僕ら"みたいな気持ちを歌えてる。

-I(私)の歌からWe(私たち)の歌になったというか?

それも"俺たちは一緒なんだ"じゃなくて、一緒なのは大前提で、"じゃあ、俺たちはどうするよ?"みたいなことを歌えてるから、いままでの曲とは歴然と違うんです。

-どうしてそうなれたんですか?

成長と成熟ですかね。いろんな人と出会って、いろんなことを経験していくなかで。

-あぁ、前回のインタビューでも言ってましたよね。

そう、みんなの言うことにあんまり共感できなかったところがあった気がします。恋愛でフラれて泣く!? とか。"やりたいことがあるんだけど、やれんくて......"とか言う人に対しても、"やれんくてじゃなくて、やりゃいいじゃん"って思ってた。そういう20代前半があるわけですよね。それがいまになって泣く気持ちもわかる。つらいもんだわ、とか思うようになって。別に僕は泣いたことないですけど(笑)。でも勇気を出せないときもあるし、一筋縄ではいかないこともわかったというか。だから昔聴いてた音楽の歌詞の意味もやっと理解できるようになったんです。自分はみんなと同じ感覚を持ってるぞっていう。

-でも実際にビッケさんは泣いてはないんですよね?

泣いてないし(笑)!

-いまの説明でビッケさんの心境の変化はわかるけど、いまいち"俺たちは一緒なんだ"っていうところにいけた理由がよくわからない。

うーん......もし何かあったとしたら、ライヴで学んだのかもしれないですね。自分が面白いと思ったことを話したら、みんなが笑ってくれるとか、自分はここでワーッてなりたいんだけどって言ったら、みんながワーッてなってくれる。そういうことの繰り返しを目の当たりにすることで、自然と変わってきたのかなと思います。