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INTERVIEW

Japanese

ビッケブランカ

2021年09月号掲載

ビッケブランカ

ビッケブランカ

Official Site

インタビュアー:吉羽 さおり

前作『Devil』から約1年半。4作目となるニュー・アルバム『FATE』は、シンガー・ソングライター、ビッケブランカの貪欲なクリエイティヴィティと普遍的な歌の魅力を、磨き上げた1枚になっている。ドラマのオープニング曲で幻影的な「ミラージュ」や、ビッケブランカがやる"J-POP"を形にした「ポニーテイル」など、シングルでも見せた幅は、よりレンジを広げ、そして一曲一曲洗練された。独自のポップ・ミュージックを作り上げている。また今回はアルバムの曲を、2作のEPに振り分け先行して配信するなど、新しいリリースの形でアルバムへと繋げている。そのリリースも含め、今のビッケブランカのモードについて話を訊いた。

-今作で4枚目のアルバムとなりますが、これまでの3作『FEARLESS』(2017年リリースの1stフル・アルバム)、『wizard』(2018年リリースの2ndフル・アルバム)、『Devil』(2020年リリースの3rdフル・アルバム)とはまた違う、新たに踏み出していくような感じがありますね。

作り方自体は変わっていないんですけど、アルバム前に2枚のEPを挟んで、アルバム曲それぞれにフォーカスを当てるというやり方は新しいかもしれないですね。

-7月にEP『HEY』を、8月に『BYE』がアルバムに先駆けて配信リリースされましたが、このEPからアルバムへの流れにはどういう意味合いがあるんですか?

これまでに3枚アルバムを出していて、例えば"アルバムの中の7曲目めっちゃいいんだけどな。でも、アルバムだから、リード曲が聴かれちゃうのはしょうがないよね"みたいなのがあったんですよね。でも、それをしょうがないと受け入れずに、せっかく全部"俺が、俺が、俺が主役だ!"という曲ばかりなので。彼らにそれぞれのチャンスを与えられるように、まずEPという形で分割をしたんです。制作は大変でしたけどね。アルバムとしては9月に仕上がっていればいいんですけど、その前にリリースするために7月には仕上がっていなきゃいけないことになってくるので(笑)。しかもそのアイディアが出たのが、6月頭くらいだったんですよ。めちゃくちゃ急ピッチで進んでいて。

-まさにEPのリリース直前に、決まったんですね。その『HEY』、『BYE』を出すということで、その6月段階でアルバムの全体のトーンは頭にあったんですか?

そうですね。シングル・カットする曲が入るのもわかっていたし、自分のモードもなんとなくわかっていたので。EP『HEY』、『BYE』、アルバム『FATE』、この3部作がいいなという感じでした。

-EP『HEY』が出会い/高揚感をテーマにしたアッパーな曲が中心で、『BYE』は別れをテーマに哀愁感のある曲が中心となりました。この、出会いや別れというテーマとしたのは何が大きかったんですか?

これはひとつの仕掛けであって、何か大きな出来事があって、出会いと別れを描きたいみたいなことではないかもしれないですね。結局はアルバムを聴いてもらいたいので、そこまでのホップ、ステップになるようにというところで。『HEY』、『BYE』、『FATE』って語感が似ているんですよね。そのリズム感もいいなと思ったし。アルバムではノリのいいものとゆったりとしたもの、両方入るのがいつもだったから、きっとそうなるだろうというところで。初めの挨拶と終わりの挨拶、楽しいものと寂しいものと分けることができるだろうという感じだったんです。それで見事に分けることができて、"アルバム曲"として埋もれてしまう曲に、ちゃんと光が当たるようになったのはめちゃくちゃ良かったなと思います。

-様々な曲が揃いましたが、今回は特にそれぞれの曲で歌の良さというものが際立っているなと感じています。ずっと大事にしているところだと思いますが、EDM、ダンス・ミュージックの曲でも、より音数を絞りながら歌でその世界観をしっかりと伝えている印象です。

これは結構、テクノロジーの進歩に適応しただけのような気がします。それが自然とそうなっているという感じですね。ラップトップのスピーカーやAirPodsだったりと、だんだんと聴くデバイスが変わってきたなかで、しっかりと真ん中に歌がいないと成立しない音像しか出せなくなってきているから。それに適応している感じですね。それは情勢を見るだけじゃなくて、自分で音楽を聴いていてもそうなんですよね。ダンス・ミュージックこそ、歌がめっちゃ聞こえなきゃいけないようになってきているし。ヨーロッパとかでは、歌での差別化になっているから。

-そういったうえで、作り方や音へのアプローチで、新しい試みをしたところはありますか?

今回、生楽器がほとんどないんですよ。「夢醒めSunset」とかは、手練れのミュージシャンに弾いてもらっていますけど。4分間弾いてもらって、一番いい1小節をループさせているという、すごく贅沢なもので。

-ドラムをあらきゆうこさんに叩いてもらいながら、ですね(笑)。

あらきさんが4分間叩いた中で最高の1小節が永遠に流せるという。

-それでなぜこの人選に?

あらきさんの重いスネアが好きなんですよね。「ミラージュ」のような、軽快で細かいスネアを叩く佐野(康夫)さんの曲もあるんですけど。そうじゃなく、この「夢醒めSunset」は頭の中でずっと重たいビートがループして鳴っているイメージだったので。あらきさんしかいないなという感じだったんです。で、その通りのスネアが飛んできて。

-ベースはカジヒデキさんですね。カジさんは以前からお知り合いですか。

カジさんは仲が良くて尊敬しているので、一緒に音楽をやりたいなと思っていて。でも、もともとプライベートなところで仲良くさせてもらっていたので、音楽的なところが最初じゃなかったんです。今回ベースでというのも、カジさんベース弾けるらしいよ、じゃあ弾いてもらおうという、意外と軽いノリで一緒にやらせてもらったんです──軽いノリでやっていい相手じゃないですけどね(笑)。

-そうした腕利きのミュージシャンによる最高の素材で作り上げた「夢醒めSunset」は、タイトなビートが立ったシンプルなサウンドで、そこにメロウな、ふわりとしたメロディがのった、気持ちのいい空気を生んでいます。

あえて楽器をコードに当てすぎずに、ふわふわとした感じにしているんですよ。コードを当てようと思ったら、もっとエモい当て方はいっぱいあったんですけど、グッと我慢をしてずっとたゆたう感じをキープしていて。サビも2コードだし、この曲を通して3コードしか使ってないんですよ。

-その、シンプルなループ感が効いているわけですね。

それで、歌が動いているのに注目できるっていうか。

-「蒼天のヴァンパイア」などは、EDM曲ですが、これまでの雰囲気とも違った感触です。トラック部分では、どういうところを重視していますか?

これはEDMとJ-POPを混ぜてみたというものなんですけど。トラックメイクはめちゃくちゃ難しかったですね。世界標準のダンス・ミュージックの真似事にならないように。でも、最低限同じレベルまでいかなきゃいけないので、調べれば調べるほど本当に奥が深いところなんですよね。普通にちょんちょんと作ったくらいでは、あの鳴り方はしないんですよ。

-そうなんですね。

この音を鳴らすのがめちゃくちゃ難しいんですよ。EQを何回もかけて、細かくチューニングして調整をしながら、全部の音を棲み分けて......ってめっちゃきれいにやらないと、マスタリングとかしたときに、きゅっと圧縮されて終わりなんですよね。圧縮されずに出すのが理想なんですよ。だから、もうミックスがマスタリングを兼ねているみたいなことで、ミックス段階で何ができるかが、出音にめちゃくちゃ影響するから。めちゃくちゃ細かい作業でしたね。

-これまでもEDM曲を重ねてきて、自分でも出したい音、もっとこういう音をというのを掴んできていると思うんですが、そこは探求のしがいがありそうですね。

だいぶ。面白いですよね。やればやるだけ徐々にできるようになっていくし、新しい技も覚えるし。今まで、なんで日本の歌はドーンって鳴らなくて、アメリカの音はドーン! って鳴るんだろうってなんとなく思っていたんですけど。人に聞いたら、レコーディングする場所が違うからじゃないかとかもあったんですけど、そういうことじゃなかった。そのあとの処理の能力の話なんですよね。そこのセオリーが全然違うし、ミックスのルールが違うんですよ。そういうことを、徐々に徐々に人に聞いたりしながらわかっていって、会得していってる最中です。今回は、ぶっちゃけて言えば、今の段階でやれる最高のものは出せたけど、次出すもののほうがいい音になるだろうなと思いますね。

-技術的なところで洗練されていくだろうし、音楽的な感度の高さからしても感覚、感性的にも磨かれるスピードが速いですしね。

音に関してばかり話しちゃうと、じゃあ音が一番大事かというとそうではなくて、結局音なんて歌には負けているので。音の良し悪しなんて二の次なので。サウンドにこだわればこだわるほど、歌に手が抜けなくなってくるというか。歌がしょぼかったり、心に残らなかったりしたら、"俺にはわけわかんないけど、どうやら音にこだわってるらしいよ"で終わっちゃう話だと思うので。という意味で、それに対抗できるような歌詞や歌とかメロディには、同じくらい時間をかけましたね。