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LIVE REPORT

Japanese

ビッケブランカ

Skream! マガジン 2021年12月号掲載

2021.11.06 @LINE CUBE SHIBUYA

Writer 吉羽 さおり Photo by 藤井拓

4thアルバム『FATE』を引っ提げ回った全国ホール・ツアー"FATE TOUR 2147"が、11月6日LINE CUBE SHIBUYAで最終日を迎えた。この日は、10月の同会場の公演が即完売となってしまったために開催が決まった追加公演。いかにファンがこの日を待っていたかは、スタートからテンションをマックスに持っていくセットリストと会場一体となった盛り上がりからも明らかだ。冒頭から、2ndアルバム『wizard』のツアー("WIZARD TOUR 2019")でも披露されているDJセットで、「蒼天のヴァンパイア」~「化かしHOUR NIGHT」と連投したステージは、観客のジャンプやハンドクラップにさらに勢いをつけるようにスモークがガンガン噴射され、ホール公演でありながらクラブさながらの状態となった。

メロウでエヴァーグリーンなメロディを持つ歌、カラフルな色があふれ出すような極上のポップス、または甘酸っぱい記憶を蘇らせるJ-POPや歌謡曲など、様々な曲を入り口にしてビッケブランカの世界にたどり着いている人たちがライヴに足を運んでいると思うが、その人々をファットなビートによるEDMチューンで一息に掴んでいくパワーは凄まじい。高揚感に包まれたなか、ビッケブランカの"「FATE TOUR」ファイナル、始まります"の言葉とともに、エレクトロからバンド編成へとスイッチ。ドラム、パーカッション、ベース、ギター、キーボードに弦楽器2名を加えた編成で、この時期に似合うキラキラときらびやかな「Winter Beat」を披露(と言ってもこの日の都内は11月なのに20度超えの陽気だったが)。アルバム『FATE』が中心のセットリストだが、新旧を織り交ぜた前半から、ショーとしてのボリューム感や満足感が高いステージを展開する。楽曲はライヴ・バージョンとしてアップデートされ、音源ではシニカルで無機質なデジタル・サウンドの「Death Dance」が、ストリングスを生かしたバンド・サウンドとなり、スリリングなアンサンブルで魅せていくのが新鮮。またそこから「Want you Back」、「Shekebon!」とねっちりとしたグルーヴでファンキーに踊らせていくのも最高だ。いきなりのクライマックスで始まったライヴだが、その熱量をあげ続けるパフォーマンスに観客は大きく長い拍手を送り、ビッケブランカも胸に手を当てながら愛嬌たっぷりに、その拍手をもっともっとと全身に浴びていく。このツアーへの喜びが窺えるシーンであり、MCでも"楽しみで、珍しくライヴ前日に気持ちが高ぶって眠れなかった"と語る。

観客とともにツアーやライヴをできる喜びを表現した前半から、中盤は"みなさん、(ビッケブランカの)愛嬌あるキャラだから忘れちゃうと思うんですけど、本来ビッケブランカはカッコいいやつなんですよ"と"かっこいいゾーン"へと突入。クールで、クリエイティヴにポップ・ミュージックを刷新していく「FATE」で、軽やかにステージを闊歩する。アコースティック・ギターとピアノのブリージーなハーモニーにチルアウトする夏の曲「夢醒めSunset」から、切なく甘酸っぱい春の曲「ポニーテイル」、そしてアルバムの中でも様々なリスナーに聴いてもらって人気の曲になっているという「オオカミなら」と続く。歌謡曲テイストのグッド・メロディが冴える「ポニーテイル」、「オオカミなら」はビッケブランカ流J-POPであり、その郷愁を誘う、懐かしい記憶の琴線に触れるソングライティングの妙味は、新たなリスナーも開拓しているようだ。またピアノの前に座り静かに弾き語る「Divided」や、「まっしろ」のようなシンプルで、歌心あるオーセンティックな曲の良さも、この中盤のブロックで輝きを放った。

コロナ禍でライヴでのルールはあるがマスクをしていても、その目を見れば伝わってくるとMCをするビッケブランカ。制限があるからこそ、もっと近づこう、より伝わるようにという思いが以前にも増して、今のほうが最高なんじゃないかと思うと、ツアーの充実を語った。そして"この制限がなくなったら、僕ら、最高すぎない? と思う。それはミュージシャン全員が楽しみなこと。2022年も、ビッケブランカを筆頭にすべての音楽を愛してくれたら"という言葉で突入した後半は、たっぷりとイントロから遊んで狂おしいほどの幸福感を会場に充満させていく「Slave of Love」で、再び観客の歓喜を爆発させる。曲の後半でたっぷりと溜めをとって興奮を大きくしていき、そこから「Ca Va?」へと続く。コール&レスポンスはできないものの観客は全身でレスポンスして会場を揺らし、ストリングスのリフにボルテージが高まる「ウララ」では、観客もステージ上のメンバーたちも躍動的に音にノッて、喜びが晴れやかに舞い上がっていく。そしてラストの「天」へと繋げていった約2時間は、密度の濃い、贅沢な時間を過ごした、夢のような味わいだった。

アンコールでは現在放送中のNHKドラマ10"群青領域"の主題歌「北斗七星」を披露となったが、ここでゲストにドラマ主人公を演じるシム・ウンギョンが大きな花束を持って登場。スペシャルなステージで、ツアーの締めくくりと5周年イヤー突入を祝した。多面的なビッケブランカの音楽の面白さや創作欲と、またその柔軟な表現でライヴという時間を生み出していくマジカルさが溢れたツアー・ファイナルだ。終演後席を立つ観客の上気した笑顔がそのすべてを物語る、幸福な一夜となった。


[Setlist]
1. 蒼天のヴァンパイア
2. 化かしHOUR NIGHT
3. Winter Beat
4. Death Dance
5. Want you Back
6. Shekebon!
7. FATE
8. ミラージュ
9. 夢醒めSunset
10. ポニーテイル
11. オオカミなら
12. Divided
13. まっしろ
14. Slave of Love
15. Ca Va?
16. ウララ
17. 天
En1. 北斗七星

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