Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

LIVE REPORT

Japanese

ビッケブランカ

Skream! マガジン 2024年02月号掲載

2023.12.28 @TOKYO DOME CITY HALL

Writer : 吉羽 さおり Photographer:タカギユウスケ(LiveYou)

2022年10月に第1回が開催された、ビッケブランカによるスペシャルなライヴ"RAINBOW ROAD"。支えてくれるファンへの想いを形にしたいとスタートし、またパーマネントなイベントにしていきたいとも語っていたこのライヴが、2023年12月28日にTOKYO DOME CITY HALLで2回目の開催を迎えた。"Vicke Blanka presents RAINBOW ROAD -翔-"と冠した今回は、ヨーロッパやサウジアラビアでライヴをし、世界を駆けた2023年に相応しく、また2024年には初の単独北米ツアーが決定しており、飛躍する今にもぴったりなタイトルだ。国を越えての活躍は、ファンにとっても誇らしい気持ちがあるのだろう。年末の会場は高揚感で満ち溢れていた。

井手上 誠(Gt/Cho)、若山雅弘(Dr/Cho)、牧山羽留奈(Ba/Cho)、神佐澄人(Key/Cho)、Nona* Iwamura(Cho/Key etc)、岡部磨知(1st Vn)、天野 恵(2nd Vn/Cho)というバンド・メンバーとともに、晴れやかにストリングスの音色が舞い上がっていく「天」でスタートしたこのライヴ。「アシカダンス」など初期の頃の曲から、10月にリリースしたEP『Worldfly』の曲まで、セットリストは新旧の曲で織り成されたものとなった。さらに、このライヴのための最新アレンジでショーアップされている。「蒼天のヴァンパイア」などはこれまでのツアーでもパーカッシヴなラテンのヴァイブスが加わって、かなり遊びたっぷりなアンサンブルヘと練り上げられていった曲だが、今回もビッケブランカはパッドを叩きながらラストはドラマーと熱いセッションを繰り広げて、序盤から会場のテンションを上げていった。

また、今回は最新EP『Worldfly』の曲たちが、新たなエッセンスとしてセットリストにアクセントをつけていたのが印象的だ。海外でのライヴ経験、異国で感じた空気や情緒、知見がビッケブランカならではのポップなフィルターを通して描かれた曲たちが、ライヴではその土地、そのときの温度や風を生々しく感じさせるものとなった。前半では、シチリアで親交を深めたミュージシャンたちとの語らいが形となった「Luca」が披露されたが、リズミカルなバンド・アンサンブルは、軽妙な芝居のように歌うビッケブランカの歌を引き立てる。力の抜けた、居心地のいい会話劇を観るような感覚は新鮮だ。また中盤では「Sad In Saudi Arabia」、「Snake」、そして「ミラージュ」が連投されたが、ここは逆に逃れられないほどに濃密、濃厚なサウンドで観客を捕らえるものとなった。その振り幅に翻弄されるライヴだ。

序盤こそ、"貴重な場所にしたい。話したいことはいっぱいあるけれど、まずは曲を聴いてほしい"と、映像を交え、あるいはピンスポットのもと、ミニマムなアンサンブルで「WALK」や「まっしろ」の美しいメロディを紡いでいったが、中盤はMCもたっぷり。この"RAINBOW ROAD"はビッケブランカとファンとの、この1年をどう過ごしてきたかの報告会の場でもあるのだが、今回はコロナ禍にあった声出しなどの制限がなくなったこともあって、観客とのやりとりや、観客の言葉をきっかけにセットリスト以外の曲も披露したりと、予定調和は壊していくスタイルにもなっていた。MCでビッケブランカは"「RAINBOW ROAD」はホーム感がある"と言ったが、まさにその通り。

「ミラージュ」後に、"どうですか、「RAINBOW ROAD」楽しんでますか"というビッケブランカの声に"最高!"、"かっこいい!"という声が客席から上がるなか、"はなまる!"という子供の声が上がり、そういえば「ミラージュ」の他にも歌詞に"はなまる"と入る歌があったよねと「Lucky Ending」を弾き語りで聴かせたり。あるいは、ポーランドのライヴで熱烈なファンに「Moon Ride」をやってほしいと言われたものの、そのときは準備などの都合もありできなかったと土産話をすれば、後半で会場から"「Moon Ride」やって!"と声が上がって、"じゃあ、ギターでやるか"とバンドとの打ち合わせもそこそこにアグレッシヴに披露をしたり、ホールという大きな会場だがとても距離の近い空間が生まれている。これもまた、回を重ねて、よりホーム感が増しているからこその雰囲気なのだろう。

急遽追加となった「Moon Ride」含め、ドラマーによるボレロの高揚感のあるビートから「Winter Beat」へ、そして「Ca Va?」でダンサーも交え踊り、ラストは高らかに「革命」をかき鳴らし、神聖な「Changes」で1年の様々な思いをすすいでいくように会場全体が光で包まれる、"またすぐに会いましょう。全員、幸せ者でした"。そんな言葉を残して会場は暗転。再び登場したビッケブランカは、盛大な拍手喝采のなか会場の隅々にまで手を振って挨拶をし、"RAINBOW ROAD -翔-"を締めくくった。

またすぐに、の言葉を裏づけるように今年5月には、初の大阪での"Vicke Blanka presents RAINBOW ROAD -伝-"の開催を発表したビッケブランカ。2024年も国内外でのツアーやライヴで忙しい年になりそうだ。

プレイリスト情報

"RAINBOW ROAD -翔- Set List PLAYLIST"
プレイリストはこちら


[Setlist]
1. 天
2. アシカダンス
3. 蒼天のヴァンパイア
4. ポニーテイル
5. Luca
6. Bitter
7. WALK
8. まっしろ
9. Stray Cat
10. Sad In Saudi Arabia
11. Snake
12. ミラージュ
13. 北斗七星
14. Echo
15. Moon Ride ※観客リクエスト曲
16. Winter Beat
17. This Kiss
18. Ca Va?
19. ウララ
20. 革命
21. Changes

  • 1