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LIVE REPORT

Japanese

ビッケブランカ

Skream! マガジン 2019年07月号掲載

2019.06.14 @新木場STUDIO COAST

Writer 石角 友香

とにかく奇天烈で楽しい曲ができたからリリース・パーティーをしたい! しかも今までにない趣向のワンマン・ショーを! という溢れんばかりのアイディアと趣向が凝らされた2時間だった。このリリース・パーティーの2日前に出たばかりの3rdシングル『Ca Va?』の表題曲「Ca Va?」は、SpotifyのCMソングとしてもお馴染み。大仰ですらあるフランス語でのオープニングから一転、ファンクネスを感じさせる踊れるピアノ・ポップへ。そしてそれだけで終わらないめくるめく展開。彼のフェイバリットであるElton JohnやMIKA、中でもやはりFreddie Mercury(QUEEN/Vo)に対する若い世代の認知の広まりは、ビッケブランカの音楽の多様性を広める一助になった印象がある。ポップ・ミュージックに定石はないのだ。やりすぎでは? ぐらいの展開とアレンジとヴォーカリゼーション――歪な気持ち良さは一度ハマると癖になる。それが最近の彼に対する期待値の上昇と見事にリンクしている。

まるでサーカス小屋のようなガーランド、キーボードを囲む枠には夏をイメージしてか浮き輪がふたつ。開演前からフロアをカラフルな照明やミラーボールが彩り、まさにパーティー気分だ。そこへライヴ・メンバーの若山雅弘(Dr)、大澤DD拓海(Ba)、井手上 誠(Gt)、にしのえみ(Key)が入場した。一呼吸置いて白いロング・ジャケットを纏った主役、ビッケブランカが登場し、ピアノを弾きながらいきなり「Ca Va?」。ワンフレーズ歌うごとにフロアを見わたして拍手と歓声を求めている様子だ。地声からファルセットへドラマチックに歌い上げ、しょっぱなからピークを作り、すぐさまマイクを取って"C-C-C-C-Cmon, Ca Va?"のシンガロングに突入。すかさず"A-Ha"のコール&レスポンスでさらに参加感が強まる「Want You Back」へ。

黒い布を掛けられた何かがうやうやしくステージ中央に置かれ、それがグレッチの名器、ホワイトファルコンであることがわかると、大澤にも井手上にも持ち上げられない(という小芝居)。そこは持ち主であるビッケブランカしか持ち上げられない――というわけで、にしのもギターを持ちトリプル・ギターで、どこかBEASTIE BOYSの「(You Gotta) Fight For Your Right (To Party)」を思わせる「Buntline Special」を披露。グッと音圧が上がって曲が伝えたいニュアンスをメンバーで表現する姿勢が、ビッケ同様フレキシブルで唸らされる。ラウド/エモの趣もある「Black Rover」まで一気に演奏し、序盤からトップ・ギアの盛り上がりを見せた。それにしても冒頭5曲がすでにすべて異なるタイプの曲というのもビッケブランカらしい。

リリース・パーティーで多くのオーディエンスに見つめられていることが幸せと話すと、序盤と打って変わって"ピアノマン ビッケブランカ"の本領発揮の「アシカダンス」。ピアノ・リフから入り、バッド・ボーイが好きな女の子のために変わっていくという「Bad Boy Love」では、物語を演奏と演出でも見せる。というのも、曲中実際にヴァイオリンを弾きながらステージに軽快に飛び込んできた女性(岡部磨知)に、耳元で"頑張って"と囁かれるというワンマン・ショーならではの一幕があったのだ。"歌詞の世界がついにライヴで実現された! ところであの人誰だったんだろう?"と徹底して演じてみせるのも楽しい。少し切ない「夏の夢」などが続いたあと、アニメ"フルーツバスケット"エンディング・テーマである「Lucky Ending」へ。"アニメのテーマと書きたかったことがリンクして、書かせてもらった感がある"といい話で曲振りをしたものの、なぜかタイミングをしくじり、何もなかったかのように同じ話をして再度チャレンジしたあたり、エンターテイナーたる者にこの頭の回転の速さは必須だなと、どんな場面でもただでは起きない彼の演者としての強さも楽しんでしまった。もちろん演奏も、クラシカルな主旋律やアコースティック・ギターがふくよかなアンサンブルを生み出して、エンディングには大きな拍手が沸き起こった。

そして"さっきのあのお姉さん気になりますよね"とフロア全体でヴァイオリニストを呼び込むも、また別のプレイヤーが登場。今度は天野 恵がフルで「WALK」と「まっしろ」に呼吸するようなフレーズを添えていく。オーケストラでなくても、弦ならではのドラマ性が加味されることで曲の世界に入り込める。フロアも水を打ったような静けさから、ひと息置いて拍手が起こる集中力の高さがあった。

終盤は7人の演奏と歌のグルーヴに息もつけない楽しさへ。ヴァイオリンふたりでアンサンブルを加えた「Winter Beat」は、モータウン・ポップ的なビートや重層的なコーラスというカタルシスに加え、サビの転調をさらに盛り上げるヴァイオリンがポップスの歓喜をさらにカラフルに彩る。そこにお馴染みのスマッシュ・ヒット「Slave of Love」がジェットコースター級のメロディの起伏で拍車をかける。「ウララ」の軽快さを挟んで、本編ラストは高低差の激しいBメロに安定を感じる「THUNDERBOLT」。英国的というか、少なくともJ-POPには珍しいケレン味たっぷりなメロディ、英語のスピーチっぽいエンディングも明確に聴こえて、痛快な後味を残したのだった。演出も楽しいが、後半は弦を加えたバンド・アンサンブルの素晴らしさ、ビッケブランカというソングライターの曲を愛して楽しむメンバーの、あらゆるジャンルを網羅できるパワー、そしてその中心にいる稀有な音楽家、ビッケブランカをこれまで以上に体感できた。

"Ca Va、Ca Va、言い足りないでしょ? 最初にやっちゃったからね"とライヴ途中にも"もう1回やる"とファンを安心させて(?)いた通り、アンコールはスリリングな弦のアレンジが加わり、さらに多様性の増した「Ca Va?」で締めくくる。まさに音楽的なアミューズメント・パークの如き体験的なライヴだった。シングル『Ca Va?』タイミングのライヴだけに久々に披露してくれた曲もあり、注目すべきポイントの多い1回限りのショーだったが、果たして10月のZeppツアー"Vickeblanka Ca Va Tour"の内容やいかに? そちらも大いに楽しみだ。

[Setlist]
1. Ca Va?
2. ファビュラス
3. Want You Back
4. Buntline Special
5. Black Rover
6. アシカダンス
7. Bad Boy Love
8. 夏の夢
9. ソロー*ソロー
10. Lucky Ending
11. WALK
12. まっしろ
13. Winter Beat
14. Slave of Love
15. ウララ
16. THUNDERBOLT
En1. Ca Va?

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