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INTERVIEW

Japanese

ビッケブランカ

2018年12月号掲載

ビッケブランカ

Interviewer:吉羽 さおり

-そういう自分のスタンスができあがったのは、何が大きかったと思いますか。

なんですかね? 22歳ごろ、以前の事務所にいたときに、すごくあざとく曲を作った時期があるんです。こうやってやったら人の胸を打つだろう、こういう言葉がよく使われているから使えばいいんだろうみたいに作って、できあがった曲があまりにもしょぼいことを自分で知ったときですかね。こんなふうに作っても、絶対に人の胸は打てないって自分でわかったから、そういうのをやめたっていうことです。

-そこから、好きを突き詰めるっていうことになったと。

そうですね、そこにしか何も伝わるものがないし。ちゃんと本人とのリンクがないとダメだなっていうのを感じましたね。

-音楽の方向としてはすごくまっすぐですね。そして今、3曲目の「まっしろ」が、日本テレビ系ドラマ"獣になれない私たち"の挿入歌となっていて、かなりドラマの内容的なところを汲んだ曲になっています。こちらは、どんなふうに作られているんですか。

この曲は、台本を5話分くらい読んで作ったんです。

-ドラマの中で自分の曲が流れてくるのは、通常とはまた違った感触がありますかね。

1、2話目を見たときに、1話目ではガッキー(新垣結衣/深海 晶役)がすげぇ難題を押しつけられて、でも頑張って頑張って、やっと終わったっていう救いの瞬間にセクハラ電話がかかってくるというシーンで使われていたんですけど。そこまで結構なボリュームで流れていた曲が、そのセクハラ電話の瞬間に曲がカットオフして、電話越しの"晶ちゃ~ん"っていうセクハラの声が聞こえてくるっていう(笑)。そういう演出に曲が関われたことが嬉しかったんですよね。曲が消費されていくんじゃなくて、演出に絡めたっていうのがすごく嬉しかったんです。

-きっとここからも、エピソードによって曲の使われ方も変わってくるっていうことですよね。曲もまたシーンによって、聴こえ方、感じ方も変わりそうなのは、ドラマならではのものですね。

はい。第2話は、ドラマの初キス・シーンで使われてましたからね。そこでは2番くらいまで流れたんです。すごく長くかけていただけて。作って良かったですね。もともとタイアップとか何か共同でという曲になってくると、あまりそこに自分のメッセージ性を入れるみたいなことじゃなくて、ドラマだったらその中にいるかのような、その人であるかのようなところに振りきるので。まったく自分と違う考えの内容でも、平気で歌えるんですよね。それは、これからもそのままでいたいなと思うんです。

-そこで音の面などでいかにしてビッケブランカの世界を出すかっていうせめぎ合いはあるんですか。

そうですね。でも"らしさ"みたいなものは、自然と作ってしまえば滲んでいるので、もはや、そこの塩梅みたいなことを考えることもないんですよ。

-そうなんですね。ドラマを引き立てている、印象的で美しい曲だなと思いました。アルバムで、華やかな2曲目の「Winter Beat」、そして3曲目にこの「まっしろ」と違った冬の曲が並ぶのがまたいいですね。

この並びについては、結構スタッフとも考えましたね。今までの僕の感じだと、ライヴでもそうなんですけど、頭にはアッパーなものを並べたがるんですけど、今回はイントロダクション、アッパーな曲、バラードっていう、凸凹の感じになるっていうのがだいぶ新しいんですよ。だけどそれに相応しい2曲だと思うし、アルバムの頭2曲をこれでっていうのは、結構攻めた感じですね。

-先ほどちょっと話にも出ましたが、最後の曲、「Great Squall」の話も聞いていきたいのですが、これはミュージカル的な匂いがある曲ですね。サウンド的にも構築的で、かなり練られていますが、どういう発想からの曲だったんですか。

これは草案としては2年前からあって。そのときは歌詞とかはなくて、インストゥルメントとなんとなくの英語のメロディ、サビのラインっていうのはあったんです。肝になるのは、ドラムを最後の最後まで、タム回しで持っていくというところですね。本来は、派手にならないものじゃないですか。派手にバーンっていうのにいくための、導入のフィルですからね。そういうときに使われるもので、延々と持っていくっていう曲になっていて。でもそのタムのボコボコボコっていうのが、ワールド・ミュージック感や広大な感じを出せると思ったんです。それがひとつテーマでした。そのサウンドに引っ張られて歌詞もできていきましたね。

-だからこそ、野生動物が出てくるんですね。この曲はすごくその光景を想像できますよね。

サバンナですよね。定点カメラみたいなやつで、めっちゃ早送りした空が映ってるみたいな。で、ライオンがあくびしていて、遠くでキリンがゆっくりと歩いているとか、そういうイメージですね。

-最後まで転調していくという話をしましたが、それは草案のときにすでにイメージとしてあったんですか。

ありましたね。でもこれってひとつ斬新なことをやれていて。2サビが終わって、ちょっとコードが変化するんですけど、実はそのときに、半音下げているんですよ。1個下げているんです。そこから最後のところで、戻っているだけなんですよね。

-あ、いったん下げてもとに戻っているのか。

そうなんです。曲の最後にキーを上げたいと思ったんです。でも上げたいとなると、最後のサビまでは本来いきたいところの半音とか1音下でいかないといけないわけで。最後のために、温存しなきゃいけないと。いやでもライオンはそんなふうに生きているか? と思ったんです。明日頑張るから今日はちょっとゆっくり走るかってならないから。それで、2サビのところでいったん下げるということをしてみました。下げてもとに戻っただけだけど、上がったように聞こえるし。さらに最後にもう1回上がるっていう。

-ちょっとしたトリックがありましたね。そういう曲の構造みたいなことを考えるのはすごく楽しいし、好きな時間なんですかね。

それはありますね。このアイディアどう? っていう。