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INTERVIEW

Japanese

ビッケブランカ

2018年12月号掲載

ビッケブランカ

ビッケブランカ

Official Site

Interviewer:吉羽 さおり

-2曲ともちゃんと歌モノですもんね。「キロン」は特に、空間的な音に、ポンと感情が滲んでいる曲で、たゆたう感覚がいい。

「キロン」を作って気づいたのは、今までになかった作詞の仕方をしているんです。歌詞だけを見るとよくわかるんですけど、繰り返しのない曲って、僕は初めて書いたんですよ。こういうジャンル、音サビっていうものがある構成のジャンルだからこそ、この歌詞ができたと思うんですよね。そこはすごく新しかったです。

-「Smash(Right This Way)」はまたちょっと雰囲気が違って、メロウな雰囲気にビッケブランカ節的なファルセットが生きる曲です。こちらは全編英語詞ですね。

メジャーの明るい音じゃなくて、短調な音というのをテーマに考えていった曲ですね。「キロン」の方で、日本語で、いい音のEDMみたいなのをやるっていうのができたので、こっちは思いっきり、本気で世界水準みたいなものを作ってみたらどうなるんだろうなというチャレンジではありました。こうした方がいいかな、そうしようそうしようとか、いろんなことを考えながら。最近は、この曲しか聴いてないくらいで。

-それくらい気に入ったものができた。

大好きですね。世界水準のものということで、「Smash(Right This Way)」については、英語の文法も正しくないといけないし、英語的な表現でグッとこなきゃいけないところを目指しました。海外の曲って、言語的なものかもしれないですけど、そんなに機微に富んだことは言わないのかもしれないし、じゃあ逆手にとって日本人らしく、いわゆるわびさびみたいな表現を英語でやったら、外国人にも新しかったりして、というのはありましたね。タイトルの"Smash(Right This Way)"みたいなところも、世界のスタンダードなネーミングっていう感じのものにしました。

-今はサブスクリプション・サービスでプレイリストが作れたりして、いろんな音楽の聴かれ方をするぶん、この1曲が世界中で聴かれるということも可能なところが面白いですよね。

そういうスキームができているからこそ、こういうこともできるっていう。

-ちなみに、ビッケブランカとして今エレクトロ・サウンド、EDMで気になっているアーティストっていうと?

今はちょっと自分の中では流行のど真ん中は終わったんですけど、Alan Walkerが抜けているかな。でも結局AVICIIが一番だと思います。

-歌心がありますからね。

そのとおりですよね。結局はメロディ・センスだから、圧倒的にトップはAVICIIです。で、今だったらノルウェーのAlan Walkerという感じかな。Alanはメロディがすごくいいです。めちゃくちゃ若くて、まだ21歳とかなんですけど。

-特に若いアーティスト多いですよね、その界隈は。

しかも世界にたくさんいるんですよね。Spotifyで流し聞きしてもまったく入ってこないものももちろんあるんですけど。そういうところで、しっかり世界でヒットしている曲の違いってメロディの良さだから。そこで言えば、言語は関係ないところでもあって。だから、僕もやれるなというのはありました。メロディを作るだけなら、AVICIIと同等くらいあると思うので。そこからのスタートでしたね。

-ビートや仕様は新しくなっても、琴線に触れるいいメロディだけは変わらないですしね。ちなみに、この2曲を、ライヴでどうやるかは考えているんですか。

まだ全然考えてないですね。今回の中でも「キロン」と「Smash(Right This Way)」がガン浮きしているので。かといって、この質感あっての曲だから、バンドでコピーする感じでもないし。DJセットになって、僕がDJで2曲パーンとお送りしますみたいなこともあり得ますよね(笑)。

-これからまた、こういうタッチの曲も増えていくんですかね。

どうなんでしょう、そこは未知ですね。これでスッキリして満足しちゃう可能性もあるし。

-そういうところの捻くれた感じは相変わらずですね(笑)。

そうですね(笑)。

-でも、どの曲もイントロダクション「Wizard」でのセリフじゃないですが、日常のいろんなところに潜めそうな曲たちではあります。そして、日常をちょっとかき回してくれる曲っていうポップさがある。音楽はマジカルなものだっていう思いとか、ポップスがもたらす高揚感、そういうものをすごく信じてやっている感じっていうのはあるんですか。

あまりそういう精神性みたいなところは考えたことがないんですよね。残念ながら、突き詰めれば突き詰めるほど、ただ好きが高じてるだけというところに行き着くわけですよ。例えば、音楽に救われたという経験が突き動かすということではなくて。小学生のときから、好きだから合唱コンクールを頑張る、好きだから"今月の歌"を頑張る、歌って楽しい、自分が一番目立つぞっていう、その延長にしかまだいないんですよね。なので、悪く言えば音楽とは? みたいなのは、まったく深まってないところがあるんですけど。それでここまで来てしまっているので、それで振りきるしかないというか。"今度はこんなのができたよ"っていうのがただ楽しいんです。それを幸い、"いいじゃん"って言ってくれるスタッフの方が周りにいるという状況だけで十分で。作品ができあがって世に放たれたら、もうそれが、生まれて良かったものだ、って思っていただければいいかなっていう感じというか。

-その自分の"楽しい"をどんどん突き詰められるからこそ、自由度も高いのかもしれないですね。

それが、なんとか成立してるのが救いです(笑)。ありがたいですね。


もともと時代=エラみたいなところとは違うところから始まっていて、こっちにいたいなっていう感じがある


-自分の音楽で、世の中に何か仕掛けてやろうっていうのはないんですか。こうなったら面白い、これが引っ掛かったらどうだろうとか。

面白いなとは思いますけど。それを狙い出すと、また楽しみとは離れていくというか。もともと時代=エラみたいなところとは違うところから始まっているので。はじめから時代に沿ったもの、流行だからとかでスタートしているなら、そこを突き詰めていたと思うんですけど、"逸脱した状態でいいや"って始めているので、今さらシーンを見てもどうしようもないし、興味もなくなっているという感じになっちゃってますね。

-何かやっていくことで、たまに、シーンの方がシンクロしていくことがあるみたいな。

それくらいでいいかなっていう感じです。(流行とは違う)こっちにいたいなっていう感じがあるんですよね。QUEENとかもそうですけど、当時グランジとか、UKのロックが流行るというムーヴメントがあるなかで、まったく違うニュアンスの、QUEENしかできないことをやっていて。初めのうちは評価されないけど、1個のことで、バンっと人気が出てっていう。そういうQUEENというグループだから、時代が変わっても古くならないし。いつでもQUEENはQUEENであるという路線が1個あるから、そういうエラに影響されない場所にいたいなっていうのはありますね。