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INTERVIEW

Japanese

Brian the Sun

2017年07月号掲載

Brian the Sun

Member:森 良太(Vo/Gt) 白山 治輝(Ba/Cho) 小川 真司(Gt/Cho) 田中 駿汰(Dr/Cho)

Interviewer:沖 さやこ

Brian the Sunがメジャー1stフル・アルバム『パトスとエートス』から半年足らずで世に放つ5曲入りのミニ・アルバム『SUNNY SIDE UP』は、夏独特の開放感とシンクロする晴れやかな作品になった。今作には2曲のアニメ・テーマ曲を収録。前作の内省的な作風とは真逆の方向性を持ち、これまでのBrian the Sunで最も明快でもあるのではないだろうか。その軽やかなサウンドスケープの背景にはとても深い理由があった。彼らの音作りのアティテュードを通し、現在のマインドを探る。

-これまで10代のときに作った曲をアルバムに収録するパターンも多かったですが、今作はどうやらすべてメジャー・デビュー以降に作った曲だそうですね。

森:もうストックが尽きたんです(笑)。

白山:いままで過去曲を入れていたのも、パッケージングするうえで合いそうな曲が過去の曲やったから、という理由なので。合いそうな曲はストックにはなかったし、作るしかなかったという。

-では、アニメ・テーマ曲となった「Sunny side up」(Track.2)と「ねこの居る風景」(Track.5/※今作には"ねこねこ日本史version"として収録)の2曲が軸になってアルバムが作られたのでしょうか?

白山:その2曲と、あとは「隼」(Track.1)ですね。「隼」が上がってきて、"あ、じゃあこの曲も入れよう"って去年作った「光」(Track.3)を入れることにして。

森:夏にリリースすることが決まっていたので、うちの事務所の社長が"夏の曲がないから、夏っぽい曲を書こうよ"と提案してくれて、"あぁ、そうっすね。そういう曲ないっすね。じゃあ俺なりに夏を解釈して書いてみます"と言って書いたのが「隼」です。

-「隼」の歌詞は、森さんらしからぬ表現だなと驚きました。

森:あ、ほんまっすか? んー......ある程度言葉に対して敏感な人でないと聴けないものをいままで作ってたと思うんですけど、この曲はそうじゃなくて、誰でも読めるけど、そういう感覚がある人はもっと読み解けるものになっているんです。だからすごく間口が広がった。でも、読み解けば読み解くほど深いところまでは行ける曲なので、一応"ここまで辿り着けたら正解です"というゴールは設けてるんです。そういうやり方をどんどん広げていきたいかなと。

-そういう心境の変化のきっかけはありますか?

森:小難しいことを歌う方が簡単なんですよ。一聴して難しかったら"あ、こういうことを示していきたいんやな"というのが感覚としてもわかるじゃないですか。でも、簡単な言葉はわかりやすいぶん扱い方が難しい。たぶん僕の中で、より難しいことをやりたいと思ってるんです。より難しいというのは、よりシンプルに見えることやから、こういう曲を書く方が難しいですね。小難しい歌詞は、書くのが簡単です。きっかけというか、成長なんやと思います。

-「ねこの居る風景」がエンディング・テーマになっている"ねこねこ日本史"もそういうアニメですよね。小難しく説明しようと思えばめちゃくちゃ小難しく言えるけど、全部のキャラクターをねこに置き換え、そのうえで短尺アニメで歴史をわかりやすく解説するわけですから。

森:"ねこねこ日本史"はめちゃめちゃしっかり監修されているアニメなんですよ。監督さんと話したんですけど、その時代にはない衣装はキャラクターに着せへんし、その事件が起こった時間とかまでちゃんと徹底されていて。そういう話を聞くと、簡単にすることって難しいんやなー......と思いますよね。基礎がないとできない。

-話をBrian the Sunに戻すと、いままで森さんはわかりやすい表現を避けてるような印象もあったんですよ。『パトスとエートス』はその極みだったと思いますし。

森:『パトスとエートス』でそういうことを追求したくて、だいぶポップとはいえ、わりと難解なものになったんやと思います。「パトスとエートス」という曲をリードにできたことで、自分の気持ちがひとつ昇華できた。だから次に行けるようになった、という感じですね。あれができてなかったら、たぶんまだ小難しいことを歌ってた(笑)。そのうちまた小難しい歌詞も書くとは思うんですけど、いまはそういうモードです。

-「隼」は歌詞もそうですが、ビートが新鮮でした。

森:「ロックンロールポップギャング」(2014年リリースの1stミニ・アルバム『彼女はゼロフィリア』収録曲)みたいな疾走感が欲しかったんですよ。でも、作ってみたらそういう疾走感じゃなかった(笑)。ビートまで打ち込んだものを駿汰に聴いてもらったんですけど、俺の作ったものはもっと愚直に直線なビートで。駿汰はたぶん軽やかさを感じてくれたのか、そういうビートを提案してくれました。

白山:作っていくうちにイメージが変わっていった曲ですね。良太が持ってきて"こんな感じでやりたい"と言われたとおりにやってみたら"なんかちゃうな。こんなふうにしてみようか"って。僕もドラムに引っ張られてベース・ラインを作って。"そんなふうにするならこういう感じがいいよね"と言葉で説明せずともわかったところはありますね。

田中:結構がっつり8ビートな曲だったんですけど、みんなで合わせていくうちに"ちょっと跳ねさせた方が気持ちいいんじゃないかな"と思って、ちょっとだけニュアンスを変えて作りました。ベースとの相乗効果で絶妙なものになっていたらいいなと思います。

森:最初はあと30秒くらい長かったんですよ。転調してアウトロがあって、夏やしコール&レスポンス的なことをしたいなと思ってたんですけど、やっていくうちに"違うな......。いらんわ"と思って(笑)。

田中:バッサリ切ったよな~(笑)。

小川:おまけにそれもレコーディング直前にな(笑)。気がつけば2分半くらいの曲になりました。この曲はデモの段階からメロが強いというか、サビメロも耳に残るなと思ったからリード曲になってよかったなと。

森:真司もおもろいフレーズつけてきたなぁと思って。

小川:いままでテンポが200くらいの曲が多かったんですけど、「隼」は250なんですよ。

-250! 軽やかさが勝っているからか、そこまで速いとは思いませんでした。

森:休符を作って音を跳ねさせてるからそこまで聴こえへんのやと思います。ダウン・ビートでダダダダダーッて弾いたらめちゃ速い。

小川:スーパー速いしタイトル"隼"やし、これはもうギターも駆け抜けるしかないなと。曲が短いのもあって、ギター・ソロもサビの延長線上のような流れる、サラッといけるものにはしたかったんです。だから自然と弾けるフレーズではありますね。

森:ライヴのことは考えたね。