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INTERVIEW

Japanese

Brian the Sun

2019年03月号掲載

Brian the Sun

Brian the Sun

Member:森 良太(Vo/Gt) 白山 治輝(Ba/Cho) 小川 真司(Gt/Cho) 田中 駿汰(Dr/Cho)

Interviewer:沖 さやこ

Brian the Sunのメジャー3rdフル・アルバム『MEME(ミーム)』は、過去最高にバンドの本質的作品とも言える仕上がりである。今年1月に発表されたシングル曲「Lonely Go!」でタッグを組んだ江口 亮氏をサウンド・プロデューサーに招き、よりサウンドの表現を追求したとメンバーは話す。よく知っているBrian the Sunでありながら新しさを感じるということは、バンドにとって作品の理想形のひとつと言えるのではないだろうか。危機を乗り越えた結束は強い。本能的な要素を緻密に構築した意欲作について、メンバー全員に訊く。

-『MEME』は森さんによると"(M)まじで(E)エモくて(M)めっちゃ(E)いい感じ"なニュー・アルバム......でしたっけ?

小川:あははは! 2月のLINE LIVEで良太が言うてたやつ(笑)。

-まさにそういうアルバムだと思います。2019年1月にリリースされたシングル『Lonely Go!』のインタビュー(※2019年1月号掲載)を行った12月半ばは、今作のプリプロ真っ最中でしたよね。その際"今すごく自然体だ"とおっしゃっていましたが、『MEME』の制作はそのモードが反映されていますか?

森:より余計なことを考えず、やりたいことだけをやってる感じですね。「Lonely Go!」に続きサウンド・プロデューサーとして江口(亮)さんが入ってくれて。江口さんと関わるようになってから"結局演奏やねんな"というのをより強く思うようになったんです。レコーディングの前に"こういう音で録りたい"という明確なイメージが頭の中にあるって、めっちゃ大事なことやと思ってて。それを曲単位ではなく、一音一音で考える大事さがわかってきて、精密になることで楽器を弾くということの捉え方が変わってきた。"なんでここのギターの音が立って聴こえへんかというと、ピックが寝てるからやで"みたいな具体的な話を江口さんは実際に演奏して示してくれて、今までわかったつもりでいたことを"お前らわかってないで"と教えてくれた。『MEME』の音作りは、それがもろに生きてますね。

-レコーディング現場で急遽楽器の音鳴りを変えるなど、準備したことと違うことをすることは多いですよね。今回はそれがなく決め打ちだったと。

森:2日間でベーシックを全部(10曲)レコーディングせなあかんかったから、そういう時間が取れへんってことで、前もって全部決めていくしか方法がなかったんです。だから俺らが録音したプリプロ――それこそ『Lonely Go!』のインタビューで沖さん(※筆者)たちが来てくださったスタジオでやってたのがそれですね。でもあのときは、タイトなスケジュールでのレコーディングということもあったし、"どういうものになるんかな"、"うまくいくんかな"という不安もあった。でも江口さんもしっかりプリプロ音源を聴き込んで音を確認してくれたし、"(Brian the Sunが)しっかり準備してきたからできたんだよ"と言ってくれて、自分たちもそれを実感してますね。そんな状況で録音した10曲に、みんなしっかり納得できたことがすごいことやと思ってるんですよ。

小川:メンバー全員ばちばちに集中して制作とレコーディングをしてましたね。

森:江口さんと関わるようになってから"結局演奏やねんな"というのをより強く思うようになったんです。レコーディングの前に"こういう音で録りたい"という明確なイメージが頭の中にあるって、めっちゃ大事なことやと思ってて。それを曲単位ではなく、一音一音で考える大事さがわかってきて、精密になることで楽器を弾くということの捉え方が変わってきた。"なんでここのギターの音が立って聴こえへんかというと、ピックが寝てるからやで"みたいな具体的な話を江口さんは実際に演奏して示してくれて、今までわかったつもりでいたことを"お前らわかってないで"と教えてくれた。『MEME』の音作りは、それがもろに生きてますね。

-Brian the Sunがしっかり成し遂げたいイメージがあったからこそ、江口さんもドラム・テックのターキー(la la larks/Dr)さんも具体的なアドバイスができたのでしょうね。そんなにひとつひとつ丁寧に教えてもらえることなんて、なかなかないことだから。

田中:"現役バンドマンの先輩のアドバイスやべぇ!"って思ったよなぁ(笑)。

森:うん。めっちゃ効いたなぁ~。教えてくれること、ほんまそのとおりなんですよ。演奏面だけでなくバンド・メンバーとの関係性とかも......江口さんも自分のバンドの話をいろいろとしてくれて、その行間から"あぁ、江口さんはこういうことが伝えたいんやろな"というのがわかる。いい先輩っすね。俺らにとっても大事な出会いでした。

-ギターの音色のバリエーションがものすごく増えてますよね。Brian the Sunには珍しくファズを使ったものとか、もろグランジなアプローチの楽曲もありますし。

小川:自分たちになかった選択肢を効果的に取り入れるのは、自分だけでやると限定的になっていっちゃって。めちゃくちゃ歪んだ音とかそんなに好きやと思ってなかったから"それってどうなん?"と思うこともあったんですけど、実際に今までにないくらい歪んだ音を試してみたら曲が生きることも実感したりして、"これをいい音って言うねんな"という気づきもあって。いろいろ新しい知識を仕入れた感覚はありますね。

森:音楽において、楽器が上手かどうかより、表現をできるかどうかの方が大事やと思うんです。表現をするうえで高度なテクニックが必要なら、それも大事やと思うんですけど。細かいフレーズを上手に弾けることが必要な曲もあるし、それが必要じゃない曲もある。今回のレコーディングでそれにも気づけたし、楽器って単体で美しいなとすごく思った。俺のバッキングも、音を弾いて曲がかっこ良くなるならそっちの方がいい。今までそれは手癖でやっていた部分が多かったので、次から曲を書くときは、曲全体の捉え方がちょっとずつ変わっていくやろうなーと思ってますね。めっちゃ普通のことなんですけど、それをもう1回"なるほど"と思えることが多かった。

-さっきおっしゃっていたような、わかっていたつもりになっていたけどわかっていなかったことをおさらいした、ということですね。

森:そういうのって、冷静じゃないと見えないですよね。ただ楽しいだけでやっていると、楽しいだけで過ぎていってしまう。でも1個1個詰めていったらめちゃくちゃ全体が良くなっていくんやな、というか。楽器のバランス、楽器を鳴らす場所......根本的に見直さなあかん問題はいろいろあるな、もっと考えられるなと思いましたね。どんなにいいレコーディング・スタジオでも、それをどういい音で聴かすかという脳みそがないと、そんなに良くならない。......そういうマニアックな話をずーっとしてました(笑)。

-音楽ですから、音の細かいところをひとつひとつ突き詰めて考えるのはすごく大事なことだと思います。どの楽器の音も聴こえるし、艶がある。もともと音作りにポリシーを持っているバンドではありますが、話してくださったことがしっかりと裏づけられていると思います。

森:おまけにミックスが「Lonely Go!」に続き南石(聡巳)さんですからね。作品やライヴはバンドだけの力じゃなくて、チームのひとりひとりがまじでプロなんです。『MEME』も江口さんがおって、南石さんがおって、テックにターキーさんやスズさんとかがいて、録りのエンジニアの渡辺さんもおって。南石さんも"録りが良かったからミックスもうまくいったんだよ"と言ってたし、"南石さんがミックスしてくれるならこの音で録りたいよな"という話もしていたし――いろんな人間関係の1個1個、辻褄が合って作品ができあがった。誰かひとりでも欠けてたら違うものになってたんです。できあがったものを聴いたときにチーム全員の顔が浮かぶし、聴かせたいお客さんの顔も浮かぶ。それがすごく気持ち良かったですね。いい経験をさせてもらいました。

-冷静になったから、いろんなものが見えるようになって、気づきも多かった。

森:うん。ほんまそうやと思います。こういうインタビューもそうですけど、1個1個後悔のないように、ちゃんとやりたい。何かひとつのためにみんなが頑張ってるっていうのは......いいですね。一番健康的ですよね。

-あら。大人になりましたね。

森:(笑)いろいろ気づいたっすね。

-白山さんから見た今作のレコーディングはいかがでしたか?

白山:江口さんの作ってくれる空気感がすごく良くて。パーティーを開いてくれたり、俺にも"お前がベーシストってことがよくわかったよ"と言ってくださったりして、緩急をつけてしっかり見せてくれる。これまでバンドマンという意識はあったんですけど、ベーシストという意識はあんまり持っていなくて。

森:そういう意識持つの、大事やんな。

白山:うん。大事なんやなーってめっちゃ思いました。自分がベーシストであることを自覚しながらレコーディングできたので、すごく良かったですね。やる気がでました。

-「MILK」などは、ベーシストの力量を発揮する最たるものでは?

白山:ベースもそうですけど、これはギターもすごいですよね。

森:ややこしいですよねぇ。弾くの難しい。デモの段階からギターの絡みだけは作ってて、これはかっこいいけど、どうしようかなぁ......とずっと思ってました(笑)。

小川:デモの段階ではスクラッチ音が入ってたりして、ヒップホップ色が強かったから、ドラムを打ち込みにする案もあったんです。

森:でも録れ音がめちゃくちゃ良かったので、生音でヒップホップに寄せた音色づくりができた。ライヴでは実際に鳴っている音以上にカラフルに聴こえると思いますね。それはどの曲に関しても言えるかな。シンセを入れたりしているわけでもないし、「Re:mon(レモン)」の宇宙船みたいな音もギターなんで、ライヴで再現できることしかやってない。

-そうですよね。これまでで最もバンド力を感じる音源だと思います。前回のインタビューのとき、つまりプリプロ中に森さんは"アルバムは『シュレディンガーの猫』(2015年リリースのミニ・アルバム)みたいな作風になりそう"と話してくださったんですけど。

森:うん、言いましたね。

-最初に聴いたときは"『シュレディンガーの猫』ではないな"と思って。でも3、4回聴いたあたりで納得する部分もありつつ、やはり全然違うなと思ったんです。『シュレディンガーの猫』も『MEME』もバンドの本質的な作品ではあるけれど、『シュレディンガーの猫』は深く深く探っていく最中の作品で、出口が見えない。

森:うんうん。

-でも『MEME』は本質に辿り着いて表現へと昇華させたうえで、先を見ている作品だと思いました。いいアルバムができましたね。

森:うん。ほんま、いいアルバムができたと思います。作為的なものじゃないものを書きたかった。"みんなにこういうことをしてほしい"と思って曲を書いているわけではないから、めちゃくちゃ語弊があるけど伝えたいことなんてなんもないんですよね。そういう曲を書いてみたら、やっぱり気持ち良かった。『MEME』ができたから次も安心して曲を書けるし、大丈夫やなーって感じですね。

-そこに辿り着くまでに、時間かかりましたね。

森:時間かかるもんでしょ(笑)! バンド始めて2~3年でわかってたら、それこそほんまもんちゃいますわ。